第10話会いたい(side 司)

 入学式当日、運命の番である伊織にすぐ会いに行くという計画を練っていた俺は、既に計画を狂わせる想定外のことが起きていた。

「会長! この案件はどうしますか? 早く確認してください!」

「獅子堂! 早くこの書類に目を通してくれ! 急ぎなんだ!」

 この学園の生徒会長である俺に対して、無遠慮に迫ってくるのは生徒会のメンバーである副会長と会計係だ。

「おいおい、そんなに騒ぐなよ。後で確認しておくからさ」

「何言ってるんですか? この案件は今日の入学式で必要なものなんですよ!」

「そうだぞ! 俺の書類も関わってるんだから、早く見てくれ!」

「そう……、だったか?」

「「そうですよ!(だよ!)」」

「二人してそんなに怒鳴るなよ。今すぐ見るから貸してくれ」

 俺はめんどくさいと思いながらも、それらを受け取って目を通していく。なぜなら今日は伊織に会える記念日なのだから。

 だが実際、今日は入学式。学園全体に関わる行事の1つであり、新入生にとっても大切な行事であるため、生徒会長である俺は真っ先にその役割を発揮しなければならないのだ。

 それに、普段は入学式当日になってこんなに切羽詰まった状況になることはめったにない。それは俺が伊織に会えるのを楽しみにしすぎて、仕事に身が入らなかったからだ。生徒手帳に仕舞っていた伊織の隠し撮り写真を何度も確認しては浮かれていたからだ。その結果、こういうやばい状況に陥っているわけだ。

 今日ほど、生徒会長であることが煩わしいと思ったことはない。結局、入学式が始まる三十分前まで仕事が終わらず、真新しい制服を身に着けた可愛らしい伊織に会いに行くことは叶わなくなってしまった。でも、入学式の会場で見ることができるのだから、この仕事のご褒美としよう。そういうプラス思考で考えることにして、俺は入学式に挑むことにした。

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