このラブコメは禁断の恋ですか?

MiYu

このラブコメは禁断の恋ですか?

キーンコーンカーンコーン


「はーい。今日の授業はこれで終わり。続きは次回ね」


ザワザワ・・・。


「あっ。香威君、ちょっと来なさい」

「はーい」


香威真琴かいまこと

白夜高校に通う高校2年生。


「それで何でしょうか。麦野先生」


麦野有栖むぎのありす

白夜高校に勤める教師。

担当教科は、世界史。


「この地図を準備室に運んでくれないかな」

「はぁ・・・。それなら係の奴に頼めば良いんじゃないんですかね?」

「はいはい。もうそういうの良いから運びなさい」

「はーい」


香威は、先ほどの授業で使った地図を準備室へと運ぶ。


「報酬はちゃんとあげるよ」

「点数水増しですか?」

「逆に引いてあげましょうか?」

「これは失礼いたしました」


ガララ・・・。


準備室のドアを開ける。


「それでどこに置けば良いんですかね」

「そこの棚に同じような地図があるでしょ。そこに置いておいて」

「はーい」


香威は、麦野先生の言う通りに地図を棚に置く。


「お疲れ真琴」


麦野は、片づけを終えた香威に後ろから抱きしめる。


「まさかこの為に俺に手伝わせたんですか。有栖」

「当たり前でしょ。どいつもこいつもイチャイチャしやがってガキが」

「口が悪いですよ」

「それに、こうでもしないと学校でイチャつけないじゃない」

「それはお互いの立場ってものがあるからでしょ。俺は別にダメージはないですけど、有栖の方はそうはいかないんですから」

「まあそうだけど・・・」


香威真琴と麦野有栖は、恋人関係にある。

だが、生徒と教師の恋愛は基本的にタブーとされている。


「ねぇキスして」

「帰ってからでは駄目なんですか」

「駄目」

「そうですか」


この2人はただの恋人関係ではなく、同棲もしている。

2人の出会いは、去年の春にまで遡る。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

1年前 春。

ざわざわざわ・・・。

『黒崎ぃ!!』

『どうした藤川?』

『聞いて!!今日来る途中に電車の中で可愛い子が居た!!』

『いや、興味ない!!』




「ウチのクラスは騒がしいなぁ・・・」


香威真琴は一人つぶやく。

1年2組に在籍している。


「あっ。そういえば呼び出されてるんだった」


香威は、担任に呼び出されているのを思い出し、職員室へと向かう。

職員室に向かう途中の階段にて、事件が起きる。


「きゃっ!!」

「ふぇ?」


香威の先に階段を上っていた先生であろう人が足を踏み外し、そのまま落ちてきた。


「(やべっ!!このままじゃ・・・)」


香威は、なんとか手すりに摑まろうとするも、手が滑り、そのまま落下した。


『キャー!!』


ざわざわざわ・・・。


「(意識が・・・)」

『しっかりして!!ねぇ!!』


誰かが香威を呼ぶも、その声は届かず意識を失った。




「んっ・・・。ここは・・・」


香威が目を覚ますとベッドに横たわっていた。


「起きた?どこか痛むところはない?」

「えーっと。とりあえず背中が痛みますね」

「そうだよね・・・」

「まあ頭は咄嗟に守ったので、そこは大丈夫ですね。記憶もちゃんとありますよ」


香威は、冗談交じりに目の前にいる先生に言う。


「ごめんね。私が足を踏み外しちゃったせいで」

「謝らないでください。流石にあの状態じゃどうしようもないですから」

「そう言ってもらえるとありがたいけど、他には痛いところとか気になるところはない?」

「気になる事ですか・・・?あっ・・・」

「何かあるの・・・?」


先生は、不安そうに香威を見つめる。


「そうですね。先生の名前をお聞きしても良いですか?」

「あっ!そうだよね。名前言っていなかったね。私は、麦野有栖。担当教科は世界史だよ」

「麦野先生ですね。俺の名前は、香威真琴です」

「香威真琴君ね分かった」

「はい」

「「・・・」」


お互いの自己紹介を終え、沈黙が続く。


「というか俺はどのくらい意識を失ってたんですか?」

「えっ。ああそうね・・・。大体1時間くらいかな」

「そんなにですか。じゃあどうしたもんかなぁ」

「どうしたものかって?」

「いや、この状態で教室には入りずらいなって」

「ごめんなさい」

「えっ?ああ先生を責めているわけでは無いんです。単純に途中から教室に入るのは注目が集まって嫌なんですよね」

「そっか」

「このままサボるか。今は、4限か。となると授業は・・・書道か」

「香威君は、書道選択なのね」

「まあそうですね」

「字は綺麗な方なの?」

「んー。そうでもないですね」

「ふふっ。そうなの?」

「そうですよ」


それからは、お互いの事を質問し合った。


「あっごめん!!引き止めちゃったね」

「大丈夫ですよ。おかげでサボれました」

「全くそういうのは良くないんだからね。でも今回は、私に非があるから何も言えないけど・・・」

「そうですよ。それに何言われても体が痛むから休んでます」

「ずるいわね」

「もともとこういう人間なんです」

「そうなのね。恋人とかは居るの?」

「また急ですね。居ないですよ」

「そっか」

「はい」

「・・・」

「・・・」


再び沈黙が続く。


「先生は彼氏さんとか居ないんすか?」

「あら。踏み込んでくるわね。もちろん居ないよ」

「そうなんすね。意外です」

「というか生まれてこの方彼氏居たことないよ」

「それはまた意外っすね。お綺麗なのに」

「ふふっ。お世辞でもありがとう。でもねこれはかなり深刻な悩みなのよ」

「そうなんですか?」

「ええ。何せ、学生時代の友人はみんな結婚していくんだ・・・。その度にご祝儀で散財していくんだ。辛いだろ?」

「まあ確かに。私が結婚した時には、ぶんどってやる」

「せめてそのお金は幸せな家庭を築く為に使ってくださいよ」


香威が呆れるように麦野言う。


「というか最近のガキはなんだ?教室でもいちゃつきやがって。大半は別れるんだぞ」

「急に口悪くなりましたね」

「今日も授業で教室に行ったら膝枕してたんだぞ?ガキが粋がりやがって」

「生徒の事をガキって言わないでくださいよ。俺もそのガキに分類されるんですから」

「あっ!そうだよね。ごめん」


麦野は素直に謝罪をする。


「先生って二重人格かなんかすか・・・」

「はぁ・・・。結婚したい」

「好きな人とかタイプとかは無いんですか?」

「好きな人か・・・。居ないなぁ」

「じゃあタイプは?」

「そうだなぁ。私を愛してくれる人かな」

「なるほど」

「香威君が貰ってくれるの?」

「貰っていいなら」

「えっ!?」

「ん?(今、何かおかしい事言ったか・・・?)」

「じゃあ私と結婚を前提に付き合ってください!!」

「んんん?(俺は今、告白されているのか?)」

「年上は駄目だよね・・・」

「いや、そこは大して気にしませんけど。本気すか?」


香威は確認のため、麦野に問いただす。


「私は本気だよ。香威真琴君、私と付き合ってください」

「答えを言う前に、一つだけ聞かせてください」

「なに・・・?」

「俺のことが好きという認識で良いんですか?」

「そうだね。出会ってまだ大して時間は経ってないけど、私は香威真琴君が好きだ。怪我をさせてしまったのを関係なく、あなたの側に居させてください」

「・・・」

「どう・・・かな・・・」


麦野は、真っすぐと香威を見つめる。


「麦野有栖さん」

「はいっ!」

「俺と付き合ってください」

「って事は・・・」

「麦野有栖さんとお付き合いしたいです」

「やった!でも・・・。本当に良いの?」

「俺は構いませんよ」

「でも私、年上だよ?」

「おいくつ何ですか?」

「26」

「10歳差か。まあ良いでしょう」

「何か含みのある言い方ね」

「これは失礼いたしました」

「私は怒りました」

「えぇ・・・。まさかの破局の危機ですか」

「キスして」

「はい?」

「キスしてくれたら許す」

「ちょっとそれは恥ずかしいというか心の準備が・・・」

「んっ!」


麦野は、目を瞑る。


「うぅ・・・。分かりましたよ。やりますよ」


香威は、麦野に顔を近づける。


「じゃあ行きますよ」

「うん」


ちゅっ・・・。


こうして2人は不思議な恋人関係となった。


「ねぇ2人っきりの時は名前で呼んで欲しいな」

「有栖さん」

「呼び捨て」

「・・・有栖」

「うん!真琴!」

「・・・ちょっと照れますね」

「ふふっ。そうだね」


2人とも恋愛経験が無いため、一つ一つが照れくさいのだ。


「真琴って寮生?」

「違いますよ」

「じゃあ家から通っているんだ」

「はい。でもどうしたんですか?」

「寮生だったら、私の家に住めば良いんじゃないかなって思って」

「なるほど。でもまあ俺、一人暮らしですよ」

「そうなの?高校で?」

「はい。両親は海外で働いているので」

「そうなんだ。じゃあさ、私が真琴の家に行っていい?」

「行っていいと言いますと?」

「同棲」

「かなり積極的ですね」

「うん。引いちゃうよね」

「別に気にしませんけど。じゃあ一緒に住みますか?」

「うん!!」


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


そして現在。


「ねぇキスして」

「帰ってからでは駄目なんですか」

「駄目」

「そうですか」

「んっ」

「はいはい」


ちゅっ・・・。


「ふふっ。今日もまだ頑張れそうだよ」

「それは良かったです」

「というかご褒美って何なんすか?」

「それは、家に帰ってからのお楽しみね」

「平常点の水増しかな?」

「そんなに欲しいなら宿題を出してあげましょうか」

「これは失礼いたしました」

「ふふっ」

「ははっ」

「ねぇ真琴」

「ん?」

「好きだよ」

「俺も有栖の事好きですよ」


2人は、互いの愛情を確認し合う。


「旅行とかしたいね」

「国内ですか?」

「真琴?今あなたは、何の教科担当の先生と話しているつもりなの?」

「という事はまさか・・・」

「海外に決まってるじゃない」

「そうなんですね。英語は話せるんですか?」

「日常会話程度なら」

「他の言語は?」

「・・・」

「えぇ・・・」

「真琴はどうなの!?」

「俺は、英語はまあ高1レベルですね。フランス語は昔、趣味で勉強してましたので、それこそ日常会話程度なら」

「じゃあフランスも良いわね」

「でもまあ、ヨーロッパは行ってみたいっすね」

「じゃあ夏休みに行こうよ」

「夏休みって来月っすよ」

「うん!だからこそよ。ちゃんとパスポートも取っておいてね」

「面倒だなぁ」

「はいはい。そういうのは良いから」

「はーい」


2人は、夏休みの予定を決める。


「あっ。ごめんね引き止めて。もう次の授業が始まっちゃうね」

「ですね」


休み時間も残り3分となった。


「本当にありがとうね。色々と」

「俺の方こそ」

「じゃあ真琴も頑張ってね」

「有栖の方こそ」

「うん」


香威は、準備室を後にしようとする。


「あっ」

「真琴?」

「有栖」


ちゅっ・・・。


「すみません。急にしたくなったので」

「・・・えっ!良いよ良いよ!!私はいつでもして欲しいくらいなんだから」

「それはもう少し自重してください」

「ふふっ」

「愛していますよ有栖」

「愛しているよ真琴」


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