【短編872文字】彼女の目論見『3分で星新一のようなショートを読んでみませんか?』
ツネワタ
第1話
あるコメディ俳優が大富豪の質問に答えた。
コメディ俳優は恋の多い男として知られており、富豪は自身の浮気癖に悩んでいた。
その時のやりとりが以下の会話である。
《この悪癖を治したいのですが、どうすればいいですか?》
俳優「そうだな…… ある詩人が昔こういった――」
「《真に愛情深い男性は彼女の誕生日を覚えている人というよりは、》」
「《むしろ彼女の年齢を忘れない人のことだ》と」
「君はこれまで関係を持った女性の歳を言えるかい?」
俳優「ならば。誇りなさい。あなたの心は浮ついてなどいない」
「ただ見境なく本気になってしまうだけだ」
俳優「そのとおり。君のそれは癖ではなくて、性質だ。ルックスや人格も含めて」
「私が言うのだから間違いない。なぜなら私もそちら側の人間だ」
《妻とはその頃に出会い、弱った私を慰め、抱かせてもくれました》
《母親を早くに失くした私は女性からの愛に飢えていたんです》
《私の周りが金の亡者で溢れても、彼女だけは金ではなく私を見てくれました》
《これまで何度も浮気が発覚し、慰謝料を払う度に妻は笑って許してくれました》
《しかし、もう辛いのです。病院に行っても掛け合ってくれませんでした》
《だけど私は病気なのです。何かアドバイスを下さい。妻のために》
俳優「君は妻を心底愛しているのか?」
俳優「ハハハハッ! ならやっぱり心配いらないよ」
俳優「私も酒を心の底から愛してる」
「だけど時々はグラスから口を離す時もあるよ」
俳優「いや酒だ。安酒さ。なぜなら君から金を吸うために酔わせているからだ」
「分かった事は二つ。君が病気だという事。おめでとう、立派なアルコール依存症さ」
「あともう一つ。おそらく君の両親を殺したのは君の妻だろう」
【短編872文字】彼女の目論見『3分で星新一のようなショートを読んでみませんか?』 ツネワタ @tsunewata0816
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