第2話 色々といっぱいいっぱいなので、勘弁してください
ちょいちょい! えっと終わったんだよね? いや、終わったって実感したじゃんよ俺。
皆でうわあーって喜んだ……あれ? 悲鳴だったかな? いやいやクリアーしたじゃんよ、んん? うーん??
記憶が面白いようにくるくる回る。だけどミッションを成功させたか失敗させたのか、その部分だけスッパリサッパリと消えていた。
モヤモヤしたはっきりしない頭の中を整理しようと立ち上がろうとして、少し曇ったモニターに映る自分の姿が見えて……
「なんじゃこりゃあぁっ?!」
ミッションの事がぶっ飛んだ。
「ナズェデスカァ」
思わず片言になってしまう。
そこに居たのは四十後半の日下部 達郎ではなく、SIOで用意されたプリセット、あーゲームで最初から用意されているサンプルだね、それを適当にいじったモブの中のモブと言わしめた俺のアバターであるタツローでもなく……俺をクランへと誘った男、SIOの台風男、トップオブトップ、戦友の姿がそこにおった。
誰もが知ってる二つ名、『大迷惑』を冠する男デミウス。最終クラス、ゲームで遊ぶ上で重要な職業だけど、大提督。戦闘系職業の中で彼以外到達不可能だったクラスで、俺と同じく廃人プレイヤー。ほぼ四六時中一緒に馬鹿やって遊んでいた記憶しかない。
いやまぁ……アレと四六時中一緒にいられてしまった人間が俺以外存在しない、という説が超有力な気がしないでもないような。
「どうなって……ん?」
黙って立っていればとんでもない美青年の外見。だがちょっとでも動けば全部が全部絶妙なバランスで歪み、こうじっとりとした残念さ加減がにじみ出す。そこに奇抜な言動も合わさると完全なピエロと化すのがデミウスという男であった。
よくよく映っているモニターを確認すれば、瞳の色が黒い。デミウスの瞳はルビーみたいに真っ赤な瞳をしていたから、もしかしてここが俺の要素って事かもしれない。黒髪黒目だったからね俺のアバター。
「本当にどうなってるんだにぃ? ちょいとにーにーに教えてちょ、教えてくれYO」
思わず彼の、デミウス語と呼ばれるものが口から出てしまい、わりと似ていて少し笑えた。
ほぼ全ての人間をおちょくる事に特化したデミウス語であるのだが、親しい間柄だとおどけて元気づけているように聞こえるのだから不思議。そしてもう一つ今さら気付いた。
「あー、あーあー、まあー……よくよく聞けば、これって俺の中高ぐらいの声か? アバターのキャラボイスじゃないんだな。いや、デミウスのキャラボイスだとそれはそれでキツいけどな」
デミウスの事を思い出すと何故か不思議と笑える。どうやら相当緊張していたようで、凄いストンと脱力してしまい、再び駄目人間製造装置へダイブしてしまった。ああ、これ凄くいいっす。お陰でなかなか行動する気になれずウダウダしていた。
これからどうする? どうしたいんだろう? ぼんやり埋まり続けていると、凄く遠くから何かが破裂するような爆発するような不思議な音と、低く腹へと響く重たい振動が……ってこれヤバいっ! チャンネルⅣのハイパードライブからのドライブアウトの音だ!
SIOでは船の速度を調節する機器がそのままひねるまわすチャンネルタイプで、そこからチャンネル・シフト・ドライブと呼ばれるようになった。
チャンネルは0からⅤまでのチャンネルがあって、チャンネルⅣは超空間に入って航行する事を指し、ワープとまでは行かないまでも光速以上で移動する事が可能となる。
恒星内を移動する上で最重要な航法であるが大きなデメリットが存在する。それは航行を停止した時に、先程のようなドライブアウト現象を引き起こす。つまり、とんでもなくうるさい。
まあ、うるさいのはいいのだが、どうして俺が慌てているのか? さぁ、全周囲ライブモニターを見れば一目瞭然。ここにはなあんにもないのである。そうなあんにもない、あるとすればスペースデブリ、ゴミくらいしかない。
ここにはコロニーもなければステーションも存在しない空白地帯、ブランクスペースとか呼ばれる場所だ。そんな場所へドライブアウトするなんて……嫌な予感しかしない。
観光地でも景勝地でもない場所へ、わざわざお高い移動料金を支払ってやってくる観光客がおるだろうか? いや、いるわけがない。
「やばいやばいやばい!」
俺は戦闘なんてからっきしの運動がミジンコぐらい……あれ? ミジンコ泳げるな……失礼、ミジンコ以下の生産しか出来ない人間だ。工作船とか採掘船なら動かしたりするが、純戦闘艦なんて作れるだけで試運転とかも依頼主に投げてたから動かした事もない。
「えっと、ここをこうして、ええと、ここをこうしてこうかっ?!」
あわあわしながらなんとかメインとサブ、サブサブのジェネレーターを動かし、作ったは作ったけれど実際に使うのは初の立体コンソールをいじって船体制御、操船をアシストサポートするAIを起動させて小さい達成感を覚えた瞬間、耳をつんざくアラート音と目に痛い赤色ライトが危険を知らせてきた。
「所属不明艦、兵装展開」
「警告も無しかよっ?!」
必死で操縦桿を握り締め……はたと思ってしまった。
何やってんの? お前、何もないじゃん?
何もないのに生きるの?
頑張って生きようとしてどうするの?
何がどうなってこうなったのか、俺の小さい脳みそでは理解及ばない領域だろう。
神か悪魔か知らないが、いきなりの宇宙、突然襲撃してきた敵性的不明艦……これを俺にどうしろと?
「ミサイルアラート。ブレイクブレイク。ミサイルアラート――」
一瞬呆けたのがいけなかったのか、ぐちゃぐちゃのごちゃごちゃの頭で何も出来ないうちに、不明艦全艦がミサイル掃射してきた。
「あっ」
シートベルトをしてなかった事を思い出したけど既に遅く、ミサイルの爆発自体は船のシールドが完全に受け止めたが衝撃は殺しきれず、俺はフワリと浮き上がりそのままの勢いでモニターへ突っ込んだ。
「がっ、ぐあ」
頭を強く打ち付け、抵抗するまでもなく、あっさり意識を手放していた。
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