第7話〜ドスケベ戦隊〜
「四つん這い……こ……こう?」
「違う! もっと頭を低くだ!」
「こ……、こう?」
シャロールは四つん這いになったが、ボクがイメージしている姿と全然違う。こうしてる間にも、炎は街を焼き焦がしていく。
「あーもう違う‼︎ 頭を低くして、両腕は床と平行になるように伸ばすんだ! それから膝を立てて、尻尾も立てて、腰を可能な限り上方向に上げるッ! 天井に向けるつもりでだ‼︎」
「こ、こう……?」
シャロールは尻尾をおっ立て尻を突き出したまま、顔を赤らめつつこっちを見てじっとしている。スライムたちも顔を赤らめながらキョトンとしている。
「そ、そうだ! やれば出来るじゃねえか! ずっとその姿勢のままでいろよ! ブフッ」
床にポトっと、赤い液体が落ちる。ボクの鼻から出ているみてえだが、気にしている場合じゃねえ。
だがその赤い液体は、ボクのだけじゃなかった。
「うへへ、なぁるほどな!」
ソアラの両鼻からも赤い液体がタラタラと流れていた。
「見えたぜ。白だな、ゴマ」
「そういうことだ、ソアラ。白だ!」
シャロールのスカートの中に再び見えた、純白なる桃源郷。
次の瞬間、ボクとソアラの周りに凄まじきエネルギーが巻き起こる!
「「きたぁー! きたきたきたきたきたぁーーーー‼︎」」
それは例えるなら、920ヘクトパスカルの台風が上陸する際、防波堤に発生する、30メートルは超えるであろう高潮の如きエネルギー……! あるいは突然の、滝のようなゲリラ豪雨と同時に襲い来る雷鳴、そののちの落雷により、木々が粉々に吹き飛ばされマイナスイオンが大気中に放たれるような衝動!
全身に力が
かつてのニャンバラの奴らに教えてやりたいぜ。伝説の
「さあ行くぜ、ソアラ!」
「おうよ、
パワーアップしたボクとソアラはシャロールの家の壁をブチ破り、クリスと〝ギガサラマンダー〟の元へと全力疾走した。
「な……何だぁコイツらぁ……⁉︎」
クリスがそう言う間に、ソアラは空高くジャンプ!
右腕を後ろに引いて渾身の力を込め、叫んだ。
「〝100万馬力・ネコパァーーンチ〟‼︎」
猛スピードで放たれたソアラの右ストレートが、クリスの左頬にクリーンヒット! バキバキッと頬骨の折れる音がしたと思うと、クリスは後方に吹っ飛ばされ、土煙を上げて地面に倒れた。
次はボクの番だ。口から炎を噴く巨大な〝ギガサラマンダー〟の胴体に、ボクは狙いを定める。
地面を蹴り、空中で魔剣ニャインライヴに闇のエネルギーを込め、ボクは叫んだ。
「〝ギガ・ダークブラストォォォ〟‼︎」
ギガトロニウムとかいう超硬化金属で出来た〝ギガサラマンダー〟の胴体が、紫色の閃光、爆風と共に真っ二つに裂ける。直後、二つに切り裂かれた〝ギガサラマンダー〟の上部と下部が勢いよくクリスにぶつかった。
「……ふんぎょおおおおーーーーッ‼︎」
轟音、閃光、黒煙、そしてクリスの断末魔と共に、〝ギガサラマンダー〟は爆発四散した。
「よし、後は街の火を消さなきゃな!」
ソアラが言うと、ボクはすかさず剣を構えた。火を消すならこの技だ。
「ああ。〝メイルシュトローム〟!」
空から滝のように大量の水が降り注ぎ、燃え盛る炎をかき消していく。が、同時に現れた大渦が、建物を次々と飲み込み、破壊していく……。
「ハッハハ、
ソアラは笑っていたが、ボクは後のことを考えて背筋が寒くなった。
戦うのが久しぶりすぎて、魔力が制御出来ねえ……。これじゃあボクがケスカロールの街を潰した犯人になっちまうじゃねえか……。
♢
魔力が切れて水が消えたあとには、街の入り口付近が完全に更地になってしまっていた。
街のゲートのあった場所をふと見ると、1人の若い男の姿があった。
「何だこれは……。一体何があったんだ?」
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