第2話〜ケスカロールの街へ〜


「助けてくれて、ありがとうございます!」


 謎の女の子に抱かれたまま、ルナが言う。

 頭にネコのような耳、それに下をみりゃあ尻尾まで生えてやがる。こんなニンゲン、見たことねえぞ。

 謎の女の子は目を丸くして、腕の中のボクをジッと見た。


「え? ネコさんなのに、言葉が話せるの〜?」


「何だよ、ネコが喋っちゃ悪りいか? それよりお前、一体何しやがったんだ? お前がオオカミのモノマネをしたと思ったら、オオカミどもが一瞬で大人しくなりやがったじゃねえか。何者なんだよお前は」


「喋れるネコさん、可愛い〜。私は、シャロール。今のは、する〝スキル〟……っていうのかな」


 シャロールという名のネコ耳少女は、ほっぺたを赤らめながら答えた。


「ボクはゴマだ。背中に乗ってるチビはルナだ。……魔物と会話だと? 一体何喋ったんだよ?」


「弱い者いじめはダメだよ、やめてねって……」


「弱い者だと⁉︎ フン、ボクは弱くなんかねえ。これでもボクは、前に暁闇の勇者……」


「兄ちゃん、助けてもらったんだからちゃんとお礼言いなよ」


 ルナがボクの言葉を遮る。畜生、あの時ちゃんと転身出来てればあんなオオカミども、一瞬で蹴散らしてやれたのに。

 だがよく見りゃこのシャロールって女、結構可愛いじゃねえかよ。サラサラの青髪、クリクリとした。微笑んだ時に見せるエクボ。そんな女の子に抱っこされるってのは悪くねえな。


「ああ……ありがとよ、シャロール」

「どういたしまして。ここは危ないから、ひとまず私の家に向かいましょ」


 やはり微笑むとエクボが出来る。ボクはシャロールの顔をまじまじと見つめた。ピンク色に染まる空と、ボクの体全体を包む柔らかな感覚。不思議と鼓動が早くなっちまう。


 道がいつの間にか、石畳に変わった。ボクらが住むニホンとは全く違う建物が立ち並ぶ、街の風景が見える。城のような建物すらある。ボクらはシャロールに抱かれたまま、街の門をくぐった。街では、これまたニホンのニンゲンとは違った格好した住民がうろついてやがる。


 2分ほど経ったろうか。〝ギルド:ヴォルドガ→冒険者登録は受付まで〟とか書かれた看板のあるひときわデカい建物を過ぎると、こぢんまりとした、これまたニホンのものとは違った趣向の家が見えてきた。


「ふう、ここが私の家。部屋に上がる前に、足を拭きましょうね」


 シャロールの家に到着だ。

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