再会

5年後ー


高校が、バラバラだったのに二十歳でまさかの偶然の再会をはたした。


「坂口君、赤池さん、久しぶり」


卒業式で、少しだけ話した小花さんは、あの時よりも綺麗になっていた。


「元気だった?小花さん」


「うん。紫音、こっちこっち」


小花さんに向かって、花村君が走ってやってきた。


「坂口、赤池。久しぶりだな。」


「ああ、元気そうだな」


「まあな。右足は引きずったままだけどさ。」


「今、何してんの?」


「兄貴が、会社継いだから。俺は、蘭と一緒に暮らしてる。カフェで、働いてるんだ。もうすぐ、結婚する。そっちは?」


「僕は、両親から離れて里子と、一緒に住んでる。大学も辞めて、今は美容師になる為に学校に通ってる。」


「へぇー。何か凄いな。」


「凄くなんかないよ。」


「何か、あん時は色々ごめんな。俺、自分の気持ちが全部グチャグチャだったから…。」


「別に、気にしてないよ」


私と小花さんは、二人の会話を聞いていた。


「羨ましかったんだ。ちゃんと自分の気持ちに素直に生きてる坂口の事が…。俺、中学で仲良くやってた奴等に何て言われてたか知ってるから」


「何て言われてたんだ?」


「坂口、知らなかったのか?」


「ああ、僕は、小花さんと勉強以外に興味がなかったから…。」


「ハハハ、すげーな。金づる、女寄せアイテムだってさ。友達なんか、一人もいなかったわ。事故った瞬間、価値無しだってさ。ほら、高校一年は車椅子だったからさ。」


「酷いな。そいつ達」


「俺も、同じだったんだろ。だから、あいつ等と一緒にいたんだよ。だけど、蘭だけは違ったから…。それに、俺。坂口とめちゃくちゃ仲良くなりたかった。だから、会えてよかったよ。また、飯でも食わない?」


「いいよ」


斗真は、花村君と番号を交換した。


「赤池さん、凄く可愛くなったね。」


「そうかな?」


「そうだよ。卒業式の日より、凄く可愛くなった。友達にならない?私と赤池さんも」


「うん、いいよ」


私と小花さんも、番号を交換した。


「いけない、紫音、早く行かなきゃ。」


「これから、映画見に行くんだ。じゃあな。またな」


「うん、バイバイ」


「気をつけてね」


駅前で、偶然会った二人は、急いでいなくなってしまった。


「小花さん、綺麗になってたなー。」


「斗真!!!!」


「いやっ、違うよ。本当に花村が好きだったんだなって思っただけだよ。今は、何とも思ってないから」


「本当に?」


「本当だよ。好きだった人の幸せな姿見れて、凄い嬉しかったよ。」


「そんなもん?」


「そりゃそうだよ。凄く、好きだったからあんなに幸せですって雰囲気出されたら、こっちまで嬉しくなっちゃったよ。やっぱり、好きだった人にはずっと笑っていて欲しいから…。傍にいれなくてもさ…。」


斗真は、私の手を握ってくれた。


「僕は、今、幸せだよ。誰かの代わりをずっと歩いて行くって思ってたから…。そうじゃない人生を手に入れられて幸せだよ。」


「両親と縁切る事になっちゃったよね。斗真は…。」


「全然気にしてないよ。むしろ、縛られていたくなかった。あの人達と居たら、僕はずっと兄貴の代わりだったから。管野先生、覚えてる?」


「うん、覚えてるよ」


「去年、学校に行ったらまだ居たんだよ。先生、小野田先生と結婚したって」


「えー。それって、二組の担任だった先生じゃん」


「お互い、43歳になってやっと籍いれたらしいよ。実は、ずっと付き合ってたって。僕達が、中3の時から」


「そうだったの?知らなかった。」


斗真は、私の手をさらに強く握った。


「だよな。僕、先生に話したんだよ。そしたら、管野先生も僕と同じだったって。本当は、お兄さんの代わりに弁護士になれって言われてたんだって。だけど、保健室の先生になったんだって。」


「へぇー。だから、先生。みんなに寄り添ってたんだね」


「うん。先生が代わりになるのをやめたら生きやすくなるって言ってくれたんだ。だから、僕もやっと決心がついたんだ。里子の髪の毛を切ったあの日、凄く楽しいって思ったんだ。僕は、この仕事がしたいって…。」


「そうだったの?」


「うん、そうだよ。だから、大学を卒業したらなろうって思ったんだけど…。先生に言われて、すぐにでもなろうって思ったんだ。今だって、里子の髪の毛切ってるの楽しいし。そして、何より里子と一緒にいるのが楽しいよ。」


気づくと人の少ない場所に来ていた。


「やっと、作れたんだ。」


「作れた?」


「まだ、指輪は買えないけど…。結婚してくれないかな?」


そう言って、斗真はポケットから何かを取り出した。


「これ、一番初めに縫って直してくれたぬいぐるみ?」


「そう、写真があったから、それ見ながら指輪サイズにして見た。指輪になってるんだよ」


そう言って、笑った。


「つけて」


斗真は、指にそれをはめた。


「返事は?」


「いいに決まってる。斗真のかわりなんていないんだから」


「僕もだよ」


そう言って斗真は、私に優しくて暖かいキスをしてくれた。

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