彼女に勝つには…

「赤池、何してんの?」


「管野先生」


「泣いてんのか?」


「大丈夫です。」


「辛いなら、話聞くよ」


私は、管野先生に全部話した。


「そうか。見守るしかないね」


管野先生は、頭を撫でてくれた。


「小花と赤池は、先生仲良くなれると思うんだけどな。でも、いじめられたくないって気持ちもわかるよ。だけど、いつか話せるなら話しかけてみな。」


「先生は、鬼って言われてる程、酷くないですね」


「それは、ありがとう。今のご時世、教師が頭撫でたらいけないんだけどな。セクハラだろ?」


「私は、嬉しかったですよ。父親がいないから、先生に優しくされて嬉しかったです。」


「それなら、よかった。じゃあ、気をつけて帰れよ」


そう言われて、私は帰った。


祖父母の家に帰ろうとした。


「里子ー。お婆ちゃんにお金借りてきてくれない?」


母親が、待っていた。


「無理です。」


「無理じゃないんだよ」


ビリッ、ブチッ。


胸ぐらを掴まれて、カッターシャツのボタンが弾けて、少しだけ破れた。


「突然、何なんですか?」


「他人行儀するわけ?あんたを育てたん誰だと思ってんだよ。」


髪の毛を掴まれた。


「金、借りれないなら。体で稼いでもらうから」


「痛い、離して」


母親の腕を振り払った。


「何だよ、その目は、殺されたいのか?」


脅しにつかうために持っていた裁ち鋏を私に向ける。


「殺したいなら、殺せよ」


ジョキン…。


二つ結びの髪の毛を、切られた。


この人は、マジで私を殺す。


「何してんの。沙織」


お婆ちゃんが、帰ってきた。


「さっこを迎えに来たのよ。」


私は、首をブンブンと横にふった。


「金やろが」


お婆ちゃんは、お母さんに10万を投げつけた。


「また、来るからね。さっこ」


そう言って、笑って帰っていった。


「今日、里ちゃんの自転車買いに行こう思っておろしてきたお金やったのに、ごめんね」


私は、首を横にふった。


「これで、髪の毛切りに行ってきて」


お婆ちゃんは、五千円札を私に握りしめさせた。


「怖かったね。次からは、もっと、お婆ちゃん早く帰ってくるからね」


「大丈夫」


ポロポロ涙を流して立ち上がった。


「髪の毛、切ってくる」


「うん、鞄持って帰っとくね」


「うん」


お婆ちゃんは、鞄を持っていってくれた。


制服を整えて歩く。


胸が見えそうだから、掴みながら歩く。


「斗真は、女の子の髪型どんなのが好き?」


「うーん、二つにくくってるの。何て言うんだっけ?」


「ツインテール?」


「それかな、耳下ぐらいで二つに結んでて、鎖骨ぐらいまで髪の毛ある人がいいかなー。」


「へぇー。」


それって、小花さんじゃん。


小花さんは、低めの位置で二つぐくりをしていた。


「さっちゃん、どうしたの?」


ボッーとしていて、斗真の家の前に来てしまっていた。


「あっ、間違った。ごめん」


ちょうど、斗真が出ていく所だった。


「その髪の毛、どうしたの?」


「あっ、間違って切っちゃっただけだから、気にしないで」


「はいって」


「えっ」


「今日は、二人とも遅いから」


そう言って、斗真は家にいれてくれた。


「そこ何で、持ってるの?」


わざと、離した。


「さっちゃん、女の子がそんなの見せたら勘違いされるよ」


斗真は、顔を真っ赤にしてる。


私が、小花さんに勝てる武器ってこれしかないよね?


「別に、斗真なら見ていいよ。見せてあげようか?」


私は、カッターシャツのボタンをさらにはずそうとする。


「ダ、ダ、ダメだよ。もっと、もっと、自分を大事にしないと」


斗真は、私の手を掴んだ。


「何で?別にいいよ。私、斗真ならいいよ」


「ダメだよ。それは、好きな人にとっておかなきゃ」


「好きな人なんていない。だから、斗真ならいい。」


嘘をついた。



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る