1

 別に、自分が特別だなんて考えた事は生まれてこの方一度だって無い。

 世間によく言う「厨二病」だって自分とは無縁だったし、かと言ってクラスで人気者のイケメンという事もなく、テストで常に上位なんて秀才でもなく、極々凡庸な人生だと自分でも思う。


 目立つイケメンの友達の友達。これまでずっとそんなポジションだった俺は、きっと高校でも極普通なポジションに収まるんだろうな…でもちょっとくらい、女の子といい感じになれたらな、なんて思いながら、学校までの最後の坂道を登る。


 ーーー今日は初登校日。


 4月の薄ぼんやりとした、寒くも暑くもない空気が漂う。折角の初登校日なのに、今日はあいにくの曇りだ。それでもちょっと気分を盛り上げたくて、春休みの間に買った真新しいワックスで整えた髪をいじる。

 よし、イケてる、まではいかなくても、ダサくないハズ!頑張れ俺!プチ高校デビューだ!

 既に校門近くには登校者がまばらに歩いている。同級生なのか上級生なのか見分けがつかないので、気は抜けない。


 俺こと、守木樹琳(もりぎきりん)は、少しつま先に力を込めて、高校生初日の校門をくぐった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る