いつかの記憶〜姉妹のキズナ〜

鈴本栞

第1話 いつもの帰り道

 今日も何気ない日常が終わり、帰宅路につく。いつものカップルが、「和くん待ってよ〜。」「舞華が遅いんだよ。早く行くぞ~」と追いかけっ子をするように通り過ぎた。


これが私の下校時のルーティーン。このカップルがいないと、一日の終わりを感じないほどに、下校時間が合うカップルなのだ。

そうしているうちに後ろから、

「翠。一緒に帰ろ〜!」

と声がかけられる。この子は、クラスメイトで幼馴染の美玖。表情の変化、態度などが分かりにくい私の通訳的役割を担ってくれている。

「美玖。今日も平和で、面白みもないね。」

私は頷きながらいつものように返すと、

「それがいいんでしょ!あんたは、日常にどんな刺激を求めてるのよ?」

美玖はやや呆れている様子。

「だって最近は依頼もないし、暇なのよ。少しぐらい非日常を味わいたい。」

そんな私の様子に、また始まったというように、ジト目の美玖がいる。

「それはさておき、探偵社のウェブサイト作るんじゃないの?デザインは決まった?」

「決まったよ。明日から運営予定。一応、色んなところにビラ貼りしたよ。」

「それなら、あんたの言う非日常が近づいてるね~」

のんびりとした返事が返ってくる。

幼馴染なだけあって、近況も事情も把握済み。そして、度々調査にも付き合ってくれるいい子なんだよね。


私は、谷口翠。亡き両親の探偵事務所の後を継ぎ、探偵として活動している。高校生というのもあり、依頼は選んでいる。調査できる範囲も限られてくるし、本業は学生だからね。

美玖には、「推理力を高めるんじゃなくて、表情筋を鍛えなさい!」とよく怒られてしまうぐらいに、依頼のこと以外は基本的に頭にはない。


そんな下校道を美玖とともに、過ごした。



それから一週間が経ったとき、ウェブサイトに

『謎の死の真実について調べてほしい。そして、真犯人を見つけてほしい』

といった依頼が入った。

情報はそれだけ。

そのため、会ってみないと状況もわからなければ、依頼人を知ることもできない。

一度会い、依頼を受け取ることにした。


『ご依頼、承りました。

一度打ち合わせをしたいので、明日の夕方5時に事務所でお待ちしております。』


そう返事をしたが、どっちつかずの依頼に、悪戯なのではないかと思ってしまう。よく分からない不信感を持ちながら、明日を待った。


この依頼により、私は味気ない日常が恋しくなるほどの非日常な毎日を過ごすことになった。

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