死にたい子ちゃんと悪い子ちゃん
皀龍胆
死にたい子ちゃん
自殺することにした。
最後のひと押しになったのは、さっき教室でお弁当を床に落としたことだ。
そんなことで?と思うだろうか。
床に散らばったおかずやご飯を拾い集めている時の惨めさと、周囲の同級生の突き刺すような視線。
下手くその積み上げたジェンガが小さな衝撃で崩れ落ちるように、私の心は冷凍食品を詰め込んだお弁当と共に崩壊した。
昼休憩の残り時間が残り10分程になるまでの間をトイレの個室でやり過ごしてから、私は行動を開始した。
5限の授業に間に合うように小走りに教室に向かう他の生徒たちとすれ違いながら、屋上に続く階段を目指す。
4階建ての校舎の屋上から飛び降りればまず確実に助からないだろう。
それに道具も要らないし、他の手段よりも苦痛が少なそうな気がする。
手段は飛び降り一択だ。
階段を昇る私の足取りは不思議ととても軽やかだった。
一気に残りの階段を駆け上がると、屋上の扉の前についた。
私は目を見張り、そしてがくりと肩を落とした。
『生徒は屋上立入禁止!危険につき施錠中』
赤いマーカーででかでかと注意書きをされた張り紙が丁度私の顔前の高さにあった。
「そんな……、知らなかった……。私、どうしてこうなんだろ」
「死ぬことすらできないんだ……」
急に体の力が抜けて、膝をついてしまった。
どれくらいの間だろう。
しばらくその姿勢でぼんやりとしていた。
キーンコーンカーンコーン…と5限の授業の始まりを告げる鐘が鳴り響き、ようやく私は我に返った。
「帰ろう……」
教室に?家に?私は一体どこに帰るつもりなんだろうか。
自殺すら遂行できないこんな情けない自分にはきっと帰るべき場所なんて何処にもない。
ぐったりとして力の入らない体を引き起こそうと、ドアノブに掴まり体重をかける。
ガチャ
ドアノブが回り、キィと小さな音を立ててドアが開いた。
「えっ、鍵……、開いてるじゃん……」
施錠中とは何のことやら、どうやらはなからドアは開いていたようだった。
まるでゾンビのようにノロノロとした足取りで私は屋上を歩いた。
絶望したり、失望したり、自分の感情に振り回されてなんだか疲れてしまった。
とにかく、自殺ができる。
死ななければ。
その気持ちだけが原動力となって私の足を前に動かしていた。
屋上はぐるりとフェンスに囲まれている。
私は体を動かすのが得意じゃない。
小学校の頃から体育の評価はいつも2以下だ。
いざとなれば、どうにかしてこのフェンスを乗り越えるつもりだが、極力そうしたくはなかった。
まずはどこか飛び降りるのに丁度いい場所がないか探して回ることにした。
「
突然名前を呼ばれて私は飛び上がった。
声がしたほうに恐る恐る目をやる。
給水タンクの裏に座ってこちらを見つめるその人に私は見覚えがあった。
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