じゃ、また次のシフトで
裕理
第一話 二杯のコーヒー
一
七月も終わりに差し掛かった頃の話だ。高校一年の一学期が終わり、夏休みが始まった。俺は夏休みが始まる前、ダラダラと寝て過ごしてやろう、と考えていた。高校生活に不満があるわけではないが、とにかく毎日が眠い。きっと新しい環境での生活に知らず知らずのうちに疲れを感じていたのだろう。そういうわけで、この夏休みはしっかりと眠ることで英気を養うのだ。それにこの成長期はしっかりと眠ることが成長につながる。そうすることで来るべき二学期を健康に愉快に過ごすことができる。しかし母はそんな息子の思いを知ってか知らずか、突然知り合いが店長をしているカフェにアルバイトを申し込んだこと、もう面接日は決まっていることを伝えてきた。俺は勿論反論したが、母の「寝てばっかりの生活をするよりあなたのためになる」という正論の前には無意味だった。こうして俺の夏休み睡眠計画は夢に消えて、アルバイトを始めることになった。
「えっと、砂川悟くんだよね。お母さんから色々聞いてるよ。大変だね。しかし君、背が高いね。身長どれくらいあるの? 百八十センチくらい?」
初めてのアルバイトの面接は想定したものとはまるで違った。母の知り合いの店だからだろうか。店長だという男性――三田村茂というらしい――とは学校のことや近所の野良猫のことなど他愛もない話を三十分程していた。そして彼と俺の母親との関係について話をしていた。その後、シフトについて軽く話をして面接は終わった。あまりにも腑抜けたものだった為、拍子抜けしたことを覚えている。そうして夏休みが始まると同時にアルバイト生活が始まったのだ。
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