第二話 腹が減っては良い話は出来ぬ
衝撃の事実が発覚してからおそらく数分、答えのない迷宮に入るのはやめることにした。それに、自分の世界に入り過ぎるのは、何か言ってしまったかと慌てているこの娘に
「すまない、ちょっと体調が優れないみたいなんだ。早めに村に行こう」
考えをまとめるためにも、まずは落ち着けるところに行く必要がある。何より、もしもここが俺の小説の中なら、あいつがいるはずだから……。
森の中を歩きながら、この世界についての情報を貰った。ほとんどは知っている情報だったが、魔物の
とはいえ、魔物学はまだ
他にも、この娘のように、ストーリーに登場していないモブキャラにも名前や過去が作られているのもポイントだ。主要人物並の力を持った者が、自然発生していないとは言い切れない。すでに物語は、作者の手を離れて、
「ここがセイラ村です! 村長を呼んできますから、待っていてください」
外からの侵入者を防ぐために作られた、
俺が小説で
「ようこそ、あなたがお客人ですかな?」
きょろきょろと村を見回していると、老人から声を掛けられた。
「すみません、最近の事情は
「大丈夫です、もしそうだとしても、困っている人は放っておけません。村長として、あなたを喜んで
なんて温かい村なんだ……。優しい村長としてキャラ作りをしておいたのが、こんな形で返ってくるとは。探している人がいることは一旦隠して、この
村長の家に案内され、用意してもらった服に着替える。全く自分の姿を気にしていなかったが、異世界に転生する前と何一つ変わらない見た目だった。
俺が着替えている間に、ご飯を準備してくれていたらしい。こちらの世界に来てどのくらい時間が経ったのか分からないが、ちょうどお腹が空いてきたところだ。ありがたくご
しばらく後で、俺は絶望のどん底にいた。過去を
緑色のどろどろした液体、謎の生肉、石にしか見えない物体。これを『料理』だと描写した、
それでも、その場から離れられないのは、きっと料理を作ってくれたであろう、案内してくれた娘が満面の笑みでこちらを見てくるからだ。
俺が日本人でなければNOと言えたかもしれない、俺がもう少し悪人ならば
目を
きっと、最初が見間違いだったかもしれない。異世界転生なんて体験して、疲れから幻覚を見ていたんだ。自分を無理やり納得させるようにご飯を
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