氷結乙女と紅茶の魔女
黒百合猫
プロローグ
読者諸君は、アリサ・ルビーと呼ばれる女性を知っているだろうか。
名前は知らずとも、氷結乙女という字名は聞いた事があるかもしれない。
彼女は100年に1度の才女と呼ばれ、国のためにその力を振るった。
在任期間は15年と短い期間であった、しかし我が国のあり方を変えるきっかけを作った女性である。
彼女はその字名の通り、一切の慈悲もなく不正、横領を行なった者を断罪し続け、国内の富の動きを正常化した。
そして、そのための証拠を掴むためならありとあらゆる方法を行なったことでも有名である。
屋敷に侵入し裏帳簿を盗んだ、裏取引の現場に騎士を引き連れ突撃した、娘を人質に取り恐喝したりなど、枚挙に暇がない。
彼女が氷結乙女と初めて呼ばれるようになったのも、標的の貴族の娘に近づき、友人関係を築き、その関係を利用し、証拠を奪い取ったのが理由である。
そして驚くことにそれを行なったのは彼女が8歳の時であった。
それと同時に彼女は心優しい人物であったことでも有名だ。
領主としての経営がうまくいかないものには、自分のもつノウハウを全て惜しげもなく伝え。財政破綻しかけの街を守った。
庶民にも優しく、公共施設の劣化や新設などなど、庶民からの意見だろうと蔑ろにせず、きちんと吟味し必要のあるものは行なった。
教会への寄付も行い、特に運営が難しくなっている教会を優先的に支援し、孤児達から家を守った。
彼女は氷結乙女として厳しくもあり、自分が守りたいもののためには何を投げ打ってでも守る暖かみのある人間であった。
その氷結乙女も最初から暖かみを持つ人間ではなかった。
筆者も聞いた話になってしまうのだが、子供の頃の彼女は笑うことすら珍しい、感情の起伏の薄い人間であったらしい。
しかし、その凍った心を溶かした人物がいる。
それがいつも彼女の隣にいた赤毛で長身のメイド、通称紅茶の魔女である。
紅茶の魔女はアリサが10歳の時専属メイドとなり、彼女がその使命を全うするその時まで隣で支え続けた。
彼女の淹れる紅茶を飲んだ者は、何か優しい気持ちを受け取り、緊張がほぐれアリサとの会談が有意義なものになる。
そして会談の終わりにこういうのだ、『彼女の淹れる紅茶には魔法がかかっている』と。
その為紅茶の魔女と呼ばれるようになった。というのが1番有力な説だ。
(自分で言い始めたという説もある。)
そしてこれも有名な話であるが、氷結乙女と紅茶の魔女は互いに愛し合う関係であった。
彼女達がいかにして愛を育んだのか。
それはアリサが10歳の時、紅茶の魔女が専属メイドになったその時から始まる。
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