共犯者

椿原

1


 「こんなことって……ある?」


 ずるり、と肩の荷が落ちる感覚。それと伴う満たされたというような高揚感。いつも打っている矢が的のど真ん中を射抜くように、私の心を貫いた。

 ――それが私のってやつなのだ。


 ずっと前から好きな人がいた。中学の入学式に出会って、一目惚れした人。クラスはお隣で、部活は一緒でもっと彼を知ることが出来た。高校生になっても同じクラスになることもなかったし、途中で彼は部活に来なくなったけど、それでも好きだった。


 「まだ、好きなん?」

 「うん。好き……なんだと思う」

 「ひびきが言うなら、応援するけど」

 「……ありがとう」


 友人は呆れたように、それでも愛に満ちた母親のように話す。


 こんな友人にも彼氏がいた。毎日連絡は取っているらしいし、頻繁に登下校しているのを目撃している。目が合えば必ず手を振ってくれる。彼氏は五年間同じようにこちらを睨んでくるが、それももう慣れたものだ。

 ……正直羨ましい。わざわざ彼氏が電車を合わせてくれて、尚且つ迎えにまで来てくれているそうなのだから。

 この理由はまあ、建前に過ぎない。こんなに純粋な羨ましいという感情は持ち合わせていない。もっと歪で、ドロドロでな憎しみとも言えるこの感情を表す言葉は、きっと見つからない。

 何故か? 理由は簡単だ。


 そんな彼女がいる彼に、恋をしていたからだ。


 有り得ないだろう。付き合っていることを知っていながら、好きでたまらなくて。優しい友人に偽りの恋を語っている。彼の親友が好きだなんて、全く思っていないのに、彼女にはそう話している。鈍感な彼女の事だから気づいていないとは思う。たまに見せる鋭い目付きに、全てを吐き出したくなることもあるが、まだ耐えている。

 罪の告白はいつすればいいのだろうか、分からない。


 私は今日もまた、思ってもいない好きを吐いている。

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