第5話 R2.05/04(月) 17時頃
昨日は日記を書かなかった。昨日時点の明日――つまりは今日に迫った引越しのため、最後の荷物の整理に忙しかった――わけではない。
『あー作業しなきゃー。でも今したくないーでもしなきゃーでも気分じゃないー』とうだうだする間に時間が経ち、いつの間にか眠ってしまったのだ。
……昨晩はお楽しみだったもんで。へへっ。
まぁそんな高いテンションになるほど、良いものでもなかったのだけれど。
一旦置いておいて、準備不足で引越し業者を迎えたせいで大荷物を持参してこの高速バスに乗ることになった。愛車は、新居には持っていかないことにした。実家に置き捨ててきた。
我がこの楽しいところが何も無い、陰湿で卑劣で低俗な出身県には、格安で乗れる路面電車があるのだが、旧住居から一番近い乗り場まで十五分ほどの距離なのだ。
リュックを背負い、パンパンに入れたスポーツバッグ(高校生が遠征に使うようなもの)を右肩に架け、ドンキの一番大きな袋を左手に持ち歩行するのは、往生した。チッチキチー。
というか普通に恥ずかしい出で立ちである。このこの楽しいところが何も無い、陰湿で卑劣で低俗な出身県を僕はついに離れるので、そこまで気にはしないのだけれど。
新住居ではさすがに恥ずかしいので、タクシーを使うことにしよう。正直都会には、引け目がある。田舎者なんでね、へへっ。
それにしても、すっかり暖かくなってきた。
今、バス内でこれを書いているのだが、スーツは無理矢理詰め込んで型を崩したくなかったので、着て出たのだ。上着はすでに脱いでいるが、それでも汗が気持ち悪い。カッターシャツと下着が肌に張り付いている。
不快だが、不審な歩き姿の僕が通報されなかったのも、スーツのお陰かもしれない。
引越し業者は良い人たちだった。テキパキとしかし汗だくになって作業してくれて、気持ちのいい仕事振りだった。昨晩の疲れが残ってダルい体ではモチベーションの高さまで持っていけなかったので、コンビニにソルティライチを人数分買いに行った。……まさか嫌いではあるまい。もし嫌いなら、戦争だ。
バスに揺られながら書いていると、酔ってくる。ノートの文字ものたうち回っている。僕の三半規管は子どもの頃から虚弱である。
……一昨日の夜。二ラウンド目のあとに、この前の日記の疑問を聞いてみた。実際に聞くと、気まずいったらない。
『何で俺と会ってくれるの?』なんて、無粋極まりないのだ。
マナーとして、子細には書かない。そもそも書いたところでドラマチックでも劇的でもない。面白味さえないと言える。
結論。僕達は互いにとって鶏肋であり、それぞれが鶏肋を捨てきれない♂と♀というだけだった。
なんとまぁ、つまらないし締まらない話である。
前の戯れを含めてサービスは頑張ったからか、カカオには『昨日はありがとう』と♡をつけて送られてきたが、これで終わりだろう。
しかし、これから僕は性的な友達をどうしようか? 田舎者なので都会人には気後れするところがあり、都会の友達の作り方を僕は知らない。
……まぁ、今考えることじゃないよね。
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