第4話 R2.05/02(土)20時頃




 話題に乗り遅れた感丸見えだが、昨日5月1日は恋の日だったらしい。


 Oh……,f××k!


 彼女のいない僕には関係ないと思ったが、考えてみると、無くもない。前の彼女が音信不通になったのは、去年のGWだった。つまり、彼女いない歴がちょうど一年ということだ。


 あの子今何してんだろ?


 今日、朝から荷物を置いていない部分の掃除をしていたところ、電話が架かってきた。依頼していた引越し業者だった。


「お引越しの予定、明後日でしたよね? 午前十時でいいです?」


 ――いや、三日後の五日だったはずだけど。


 しかし、暇を持て余していた僕には渡りに船だった。この楽しいところが何も無い、陰湿で卑劣で低俗な出身県にいる理由は、最早荷物があること以外になかったからだ。


 新居に移ればWifiが使える。すでにネットを止めている旧住居に来て、データを節約すべく『Creepy Nutsのオールナイトニッポン0』を聞けていないのだ。


 で。


 昼からは、旧住居からさえ一時間半かかる実家へ寄った。実家に置きたい荷物を置き、夕飯を頂戴するためだったが、実はそれもついでだった。


 本音の目的は、実家に近いところに住む、今回唯一会う約束が取れた友人と会うことだ。友人といっても、ぶっちゃけセフレだ。Iがあった直後にHがある、というわけではないので、もちろん恋の日とセフレには何の関係も無い。


 しかし考えてみて、ちょっと驚いた。


 彼女と初めて会ったのは二年前。彼女が十九歳の頃だった。


 僕は恋人がいる時はセフレとの関係を切るので、二年間ずっと関係があったわけではなく、肉体関係を持ったのも三十回程度だ。その上、彼女は少し特殊だった。


 僕には複数そういう友人がいるが、他の子にある手応えや盛り上がりが、彼女とはほとんどないのだ。会話にしても、コトにしても。


 職業柄、冗談も言える方だと思うし、ホメ言葉はもっとだ。でも彼女には、僕の冗談はウケていないし、ホメ言葉も刺さっていない。デートもどきも最初に行ったカラオケだけで、二回目以降はホテル直行だった。


 そのくせ忘れない頃に、カカオには連絡が入る。予定を聞くだけの文章が。


 だから僕も、他のセフレが空いていない時には声をかけた。今回だって、予定が空いていればこんなコロナ禍でも会ってくれる。介護職のはずなのに。


 何故会ってくれるのか。


 恋愛感情? それはない。


 あっちの友人とのカラオケを理由に、待ち合せに二十分遅れてくることもあったし、ピロートークを無視して男とLINEしている画面を見たことがある。そもそも俺との話より、基本Tiktokを優先する女だ。


 今、彼女を待つ車内でこれを書いている。TSUTAYAがレンタル休止していてDVDを借りられなかったせいで、こんなことを考えながら運転してきた。


 何故俺と会うのか。


 僕は来週から、この楽しいところが何も無い、陰湿で卑劣で低俗な出身県から本当に離れることになる。だから今日、僕はそれを彼女に聞いてみるつもりだ。



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