僕の私小説モドキ

松明ノ音

第1話 R2.05/01(金)23時頃




 日記を書こうと思ったのである。

 こう考えたのは、人生で何度かあった。

 それは、珍しい経験をしたと思い。忘れてその価値をなくしてしまいたくないと思った時。

 それは、同じ失敗をしてしまい、もう同じ失敗はしたくないと思った時。

 それは、一日一日を漫然と過ごしてしまっていると、自覚した時。

 はたまた、一日一日を漫然と過ごすという失敗を繰り返している時なんかに。

 私は、日記を書こうと何度も思った。

 そして、何度も飽きて投げた。



 今、また思い立ち日記を書いている。

『思い立ったが吉日』を座右の銘にしている俺としては信条通りの行動なので褒められるべきであろう。誰か褒めよ。

 さて、何故このタイミング――GWを半ばにして思い立ったのか。

 簡単だ。暇だったのである。

 私は今年の4月に異動になり、生まれた某田舎の何も無い、陰湿で卑劣で低俗な出身県から出ることになった。

 立派なしてぃぼーいとなるべく、異動先で二か月勤めたが、なにぶん引越しが全く進んでいなかった。それが、GW二日目でほとんど終わってしまった。後はこの某田舎から新らな住居に荷物を持って帰るだけだ。そう、帰るのだ。地元に寄ったので、帰って来たわけではない。

 どこかに遊びにいこうかと思うのだが、世はコロナが席巻している。今へらへらと出歩こうものなら、非国民の誹りを免れまい……とまでは思っていないのだけれど、俺の友人はそうは思っていないらしく、都会に行っていた私を病原菌のように扱う――とまではいかないが、やめておこうとなった。

 そもそも『僕は友達が少ない』。



 というわけで、暇なのであった。

 そこで、日記を書こうと思い立ったのである。もっともらしく理由に名前をつけるなら《停滞せし現状の打破》である。

 ……うむ、恰好良い。



 しかし、過去いくども『日記を書き続ける行為』に失敗し続けている俺である。何らかのK.U.F.U――工夫なくしては、同じ轍を踏むことは明らかだ。万物の霊長人間ナメんな! 秘訣教えようみなぷちゃへんざっ!

 思いついた工夫は、半分小説にすることだ。それならば、飽きることはあるまい。私を知っている人で、傷つけてしまう人もいるかもしれない。私は、酒癖が悪く二十代後半まで半分病気だったんじゃないかと思うくらい精神的に不安定だったので、いるだけで人も傷つけてきた自覚もある。

 ごめんなさい。

 懺悔はあるし、それでも幸せになりたいと思っているし、豊かに生きたいとも思っている。

 ともあれ半分小説であれば、身バレも防げる。曝すという前提であれば、嘘前提で嘘があった方が都合が良い。『ひょっとしたら僕は、女だったりするかもしれない』パンダだったりもするかもしれない。

 さらに一つ。

 半分小説であれば、毎日書かなくてもいいということだ。どうせ無理なのである。



 最後に工夫ではないが、一人称は『僕』にすることにした。日記である前提だが、フィクションにも寄るべきなので、俺が普段使わない一人称の『僕』でいこう。

 プロットなんかないから(そもそも普段から作ってないが)、無軌道であり、無意味な話が多く、推敲なんてしないから(そもそも普段からしてないが)、無駄な文字ばかりになるかもしれない。

 とはいえ僕は、書き続けなければならない。十万時間の法則を目指して。



 タイトルはどうしよう。半分小説、半分日記というところから――、

『僕の私小説モドキ』

これでどうよ?



 こんな続かない可能性が高いものを書くよりも、待ってくれている人がいる可能性がある現行のモノを書くべきとも思っている。

 そもそも、この日記を書いたのも二年前だ。カクヨムには一回も書いていない、同じようなことをしようとした雑記まである。

 それでも、これを書いたノートを掃除中に見つけてしまった。ノートが僕の心を責めた。

 だから、書いていく。コピペになることも多そうだけれど。



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