とんでもガール・鯖井晴ちゃんの無人島失恋生活 with 愛猫=豪華客船が沈没して漂流した無人島の生態系がジュラってました=

ゅべ

失恋生活初日

「モテル君のばかやろーーーーーーーーーー!!」



 私の名前は鯖井晴さばい はる



 東京都・宇宙市うちゅうしに家族四人で暮らす至って普通の16歳、女子高生だ。私は海に向かって心の痛みを叫んでいた。


 つい先日、私は失恋した。


 クラスの男子に告白して盛大に失恋して心に大きな傷を負った、だから私は高校入学初日で失恋旅行に出かける決意をした。


 いい女と言えば旅行だと思う。


 だからちょっとだけ豪華客船に乗って世界旅行に出かけようと思います。そして旅の途中でモテル君以上にいい男と出会って、青春を謳歌するの。


 たまたま商店街の福引で当たった世界旅行のチケットを存分に活用して心の傷を癒やしまくってやる。パワーアップしてスーパー晴ちゃんになってフった男を見返してやるんだから。



 君の逃した獲物はデカかったって。



 凄井すごいモテル、私のクラスメイトにして宇宙市一番のイケメン。



 私は高校生活初日、偶然だけど彼と隣の席になって高校初日、ホームルームの自己紹介の時に挨拶ついでに告ってフラれた。



 今思い返してもその理由はヒドイと思う。あ、思い出してムカムカしてきた。



「浮気したら殺されそうじゃねってどう言う理由よーーーーーーーーーーー!!」



 モテル君が言うには私が物理的に強すぎるのが問題だそうで、私は大体のアマチュア格闘技が十段、プロ格闘技のほとんどでプロライセンスを所持するスーパー女子高生。


 そして漫画上の空想格闘技もおおよそマスターしている。


 テレビでも三年前にクマを殺せる女子中学生として取り上げられもした。その結果、私の中学時代のあだ名は『クマ殺しのハル』だった。


 彼が言うにはビンタ喰らっただけで宇宙世紀みたいな悲鳴を上げそうで怖いのだそうだ。



 だけどそれは血筋よ!!



 パパがサラリーマン兼世界最高の殺し屋でママが専業主婦兼世界の格闘王ってだけの話!! まあ、格闘王って時点でママが専業の主婦かどうかはこの際どうでも良い。


 だけどそんな家庭で育ったら誰だって手刀で海を引き裂いたりパンチ一発で地面を割れたりできるようになってしまう。




 そんなことは当たり前!!




 私は不幸だ、世界一不幸な女子高生。




 そんな理由でこれから高校生活三年間、ずっとフラれ続けるのかな?


 そんなモヤモヤした気持ちを抱きながら私は客船の甲板でボンヤリと思いに耽っていた。


「はあーーーーーーーーー、高校生になってハイになり過ぎたかな? 調子に乗って自己紹介の時にエネルギー弾なんて披露するんじゃなかった……」


 私は自分の高校生活初日を振り返って大きくため息を吐いていた。ため息が潮風にさらわれていく。



 それにしてもうるさいな。



 どう言うわけか船の乗客員が騒然となっている。「ギャー」とか「助けてー」なんて悲鳴をあげて私のセンチメンタルな時間を邪魔するの。


 何よ、ちょっとくらい船が揺れるからって。海が大時化おおしけで豪華客船が沈没しかかってるだけじゃない。



 皆んな、あ・わ・て・す・ぎ。

 東京オリンピックはお・も・て・な・し。



 いざって時は適当に泳いで逃げれば良いじゃん。私なんて女子高生なのに遠泳のギネス記録保持者よ。他の乗客員なんて全員が大人だからもっとイケるでしょ。



 私は慌てない、いい女は決して慌てない。

 


 何しろ私は女子高生だ。女子高生と言えばセーラー服、そして機関銃。



 どう言うわけかパパが高校入学祝いにと制服と一緒に機関銃をくれたのだ。パパが言うには「パパの世代は女子高生と言えば機関銃だ」だそうです。



 パパの言い分がよく分からなかった。だけどとにかくパパは殺し屋専用の通販サイトで機関銃を購入して私にくれたのだ。



 まあ、その辺りのエピソードはこの際どうでもいいか。しかし本当にうるさいわね。とうとう船が傾き出して乗客の皆んなが必死になって救命ボートに乗り移ってるじゃない。


 私は他の乗客員があまりにもうるさいので仕方なくセンチメンタルを諦めて単独で海の中に飛び込むました。


 家を出発する時に適当に持ち物を詰め込んだ背負い鞄を背負って荒れ狂う海の中に飛び込んだ。そして失恋の涙を海水で誤魔化してひたすら泳いだ。


 どれくらい泳いだかは覚えていない。


 私はとにかく静かな場所で失恋の涙を流したかっただけだから。


 まずはどこか陸を目指してみよう。島でもいい、どこだっていい。とにかく私は一人になりたいのだ。




 私はこれから三日間、不眠不休で泳いで無人島に辿り着くことになる。


 その途中で人食いザメに襲われるも得意の空手で倒してことなきを得たけど大したことではない。



「通信教育でグリーンベレー戦闘術十段になってて良かった。後は漫画で遠泳をマスターしといたのも救いね」



 私は海に飛び込んで約100キロの大海原を走破した、途中で個人メドレーを楽しんだりして春の季節に海水浴を満喫できたと密かにニヤけるのだった。


「にゃー」

「え? 猫の声? 気のせいか」


 私はついに無人島へと上陸を果たすことになる。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る