底辺ハンターが【リターン】スキルで現代最強【WEB版】
萩鵜アキ
第1話 プロローグ1
新作投稿。
宜しくお願いいたします。
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「くそ……」
結希明日斗は、地面に這いつくばりながら空を見上げた。
「くそッ!」
空にはおびただしい数の魔物――。
天使のような純白の翼を広げたそれが、地面を睥睨している。
空に浮かぶ人型に向けて、武装した人間が飛びかかっていく。
一人一人が日本屈指の一流のハンターだ。
にも拘わらず、指一本触れることも出来ずに撃墜されていく。
日本の最高の武力ですら、ここまで歯が立たないとは、誰が想像しただろう。
あっという間に、人型に立ち向かうハンターがいなくなった。
一時間もしないうちに、首都防衛に立ち上がったハンターすべてが死んでしまったのだ。
とはいえ日本には、名のあるハンターがまだたくさんいる。しかしそのほとんどは、この天の魔物の前に姿を現さない。
「くそっ!!」
明日斗は己の力のなさを嘆いた。
――もし自分に少しでも力があれば……。
十五年前から、突如新たな力を手に入れる人間――覚醒者が現われた。
覚醒した際には、必ずスキルが一つは芽生える。
――天賦のスキルだ。
明日斗が覚醒して手に入れたものは、使い方がわからないゴミスキルだけ。
使えないスキルしかないハンターに、人権なんてなかった。
どこへ行ってもパーティに入れず、決まってガラクタのように遠ざけられた。
だからといって、一人で活動するのも早々に限界が来る。
戦闘に使えるスキルが皆無な明日斗では、まともな戦闘など出来ないのだ。
どれほど頑張っても、中堅パーティの荷物持ち以下の経験しか入らない。
まともにレベルが上げられず、新しいスキルだって得られなかった。
そもそも日銭を稼ぐことで精一杯で、ハンターとしてまともに活動する余裕がなかった。
――もっと力があれば、今、指をくわえて見ているだけの屈辱に、奥歯を噛むこともなかった。
天の魔物が、歪な笑いを浮かべた。
それはまるで、自分への嘲笑に感じられた。
――弱者には、生きる権利すらない。
魔物が片手を上げた。
その手のひらに、恐ろしい力が収束する。
力は光の弾になり、みるみる膨張していった。
弾が太陽のような光を放ち、プラズマを迸らせた時だった。
天の魔物は、破滅の力を地上に落とした。
――ただただ、力が欲しかった。
次の瞬間、大地を蒸発させる光とともに、明日斗の意識がかき消えたのだった。
○
「――ッ!?」
意識が覚醒した瞬間、明日斗は息をのんだ。
少し前までは新宿の路地にいたはずだが、現在はビルの屋上に佇んでいた。
景色があまりに変化しすぎて、うっかり手すりの向こう側へ落下しそうになる。
バランスを持ち直して、明日斗は視線を上げた。
目の前には、何一つ変わらない東京があった。
「東京……滅んだ、んじゃ……」
天には魔物の姿がない。地上もこれまで通り、破壊された形跡がない。
自分の体に触れる。
体は、無事だ。
どこにもおかしなところがない。
「何が……起こったんだ……?」
首をかしげたその時だった。
目の前に、見慣れたウインドウが出現した。
○名前:結希 明日斗
レベル:1 天性:アサシン
戦力:10 SP:5
所持G:1000
○身体能力
筋力:2 体力:2 魔力:1
精神:1 敏捷:2 感覚:1
○スキル
・リターンLv1(0%)
「これは……」
システムボードのステータス画面。
ハンターとして覚醒した者が扱える力の一つだ。
現在の数値は、いまでもよく覚えている。覚醒した当初のものだ。
このステータスを見て、当時の明日斗は歓喜に沸いたものだ。
『これで俺も、ハンターだ!』
夢が叶ったと思った。
その夢が悪夢であると気づくのは、もう少し先のことだったが……。
「なんだ、これ……どういうことだ!?」
東京が滅ぼされる瞬間、明日斗の能力はレベル9だった。
レベルは一度上がれば、よほどのこと――たとえば怪我をして一ヶ月安静にしていた場合などだ――がない限り下がらない。
明日斗はレベルが下がるような行動は起こしていない。
にも拘わらず、覚醒時のステータスに逆戻りしていた。
しかし、明日斗が驚いたポイントはそこではない。
ステータスウインドウの前に出現した、ポップアップウインドウに驚いたのだ。
>>条件:スキル主の死亡を確認
>>スキル:〈リターン〉が発動
>>メモリポイントにて復帰します
>>メモリポイントとの距離がありすぎたため
>>ステータス情報がロストしました
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