勇者になった彼と伯爵家の少女・Ⅱ
意を決して俺が打ち明けたその内容に、2人はポカンとしている。
(ハァ、お主何故そんなにも話が下手なんじゃ?もう少しこう…ハァ)
(なんだよ、そんな溜め息吐かなくても良いだろ)
「マコト殿、もしや何処かに頭をぶつけたりしたのですか?」
「急に失礼だな、カルミアさん!そうじゃなくてですね」
「迷い人、ですか」
アリシアさんがそうぽつりと呟いた。
「アリシア様?」
「世界の歪みに巻き込まれ、この世界とは異なる世界から迷い混んできた人のことです。何か特別な力を持っていることが多いとか。カルミア昔あなたが教えてくれたんですよ、覚えてませんか?」
「…?」
「全くあなたは本当に。マコトさんはその迷い人で、盗賊達を倒したのも迷い人の特別な力によるものということですか?」
「いやなんというか、少し違うんですが「まどろっこしいのう、さっさと言えば良かろうに」
上手く説明が出来ない俺に我慢ならなくなったのか、ふわりとラーヴァが姿を現した。突然現れたラーヴァにカルミアさんが剣を構え警戒体勢を取る。
「アリシア様、お下がり下さい。貴様何者だ!」
「2人とも大丈夫ですよ。こいつはラーヴァ。えーっと、何て言えば良いんだろうな」
「儂は神剣ラーヴァテイン。こやつの腰の剣そのものじゃ。こやつの強さも儂の主が故の力じゃな。それからこやつはただの迷い人とは少し違う。神によってこの世界に送られた勇者らしいぞ」
それからも言葉に詰まった俺に変わり、ラーヴァが今まであったや俺の身の上などを説明する。
アリシアさんは話の内容は分かるが信じられないといった様子で、カルミアさんに至っては途中から話に着いていけず呆然としていた。ただラーヴァが敵ではない、ということだけは分かったらしく、警戒は解いていた。
「つ、つまりマコト様は人族と敵対している厄災を討つためにこの世界に送られた勇者様で、ラーヴァテイン様は神剣の意志ということで合っているでしょうか?」
「その通りじゃな」
「はい、そういうことです。でも、そんなに固くならないで下さい。俺自身あまり勇者だなんて自覚はないんです。さん付けされるのも慣れてないというか」
「もしやお主、ずっと緊張して口下手になっているのではあるまいな」
「仕方ないだろ、貴族の人と話すのなんて初めてなんだから」
俺とラ―ヴァのそのやり取りに、アリシアさんはクスリと笑う。
「ふふっ、分かりました。ではこれからはマコトと呼ばせて貰います。なのでマコトも、私のことはリアと呼んで下さい。口調も崩して構いませんよ、そもそも貴族よりも勇者の方が尊ばれる存在なのですから。あと、これはカルミアもです」
「ア、アリシア様…それは」
「どちらにしろ、これから先ストラストが帰ってくるまでずっと、ここにこもってる訳にはいきません。街に出る時に、私の居場所がお父様や吸血魔族にバレるリスクを減らすためです」
「分かった、じゃあよろしくリア。正直丁寧な言葉遣いは慣れてなかったから助かる」
「で、では私はせめてリア様と……」
カルミアさんは葛藤の末、様だけは外せなかったようだ。
「マコト、リア様がこう言うのであれば、私も呼び捨てで構いません。と言うよりそうしてください」
主であるリアが呼び捨てで呼ばれるのに、騎士である彼女が敬称を付けられていては面目が立たないという事だろう。
「うん、分かった。カルミアもよろしく」
「それより、マコトは良いのですか?なし崩しで巻き込んでしまいましたが、本来街までの同行だったのでしょう。今の私では何かお返しすることも出来ないのに」
「あぁ、気にしないで。今更困ってるリアやカルミアを放っておくつもりは元々なかったんだ。それに俺がこの世界に呼ばれたのは、その厄災をどうにかするためなんだし、ほらちょうど良いだろ?」
リアは少しポカンとした後、安心したように微笑んだ。
「ありがとうございます。あなたは、とても優しいのですね」
「まぁ、こやつは救いようのないほどのお人好しじゃからな」
「ラーヴァテイン様もよろしくお願いしますね」
「儂のことはラーヴァ様で良いぞ」
「分かりましたラーヴァ様。さて今日はもう休んで、明日ギルドに行ってギルド長に話をしましょう。私とカルミアは隣の部屋を使いますので……」
そう言って荷物を纏めようとするリアを、俺は慌てて止める。
「いや、リアもカルミアも怪我してるんだ、俺達が隣の部屋を使うよ」
そもそもこの部屋が一番広いのに、1人の俺が使う訳にはいかない。
「そうですか?ありがとうございます、マコト。鍵は受付に置いてあるはずですので」
「あぁ、また明日」
「はい、おやすみなさい」
そう言って、俺は2人を残して隣の部屋に移った。
「おー、フカフカじゃのう。よく手入れされておる」
何よりも先に、早速ベットにダイブしたラーヴァに思わず苦笑が零れる。
「なぁ、ラーヴァ。少し聞きたい事があるんだけど」
「ん、なんじゃ?」
「吸血魔族って何?」
「お主、そこからか……」
ラーヴァはヒクリと表情を強張らせ、またハァとため息を吐いた。
「仕方ないだろう、ろくに説明もされずあの森に飛ばされたんだから」
つまりあの自称神が全部悪い!
「良いか、まず儂が作られるよりはるか昔、聖神側の神々と邪心側の神々による戦いがあった。その時、前者に従属していた種族を人族、後者に従属していた種族を魔族と呼ぶ。故、人族と魔族は仲が悪く度々大きな戦いを起しておった。人族には
ラーヴァの有り難い授業は、夜が更けるまで続いた。
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