第四章 アマテラス銀河連合国立管理官学校
第46話 フェンラールとシロ
中央次元中央星系首都星ミネアリア・テラス・第十二級管理官学校。
フェンラールはふっと息をはいた。
「これで十二級は全員卒業かな。あっさりしたものだったけど・・。」
「お嬢様、よかったですね。」
「問題はどこまで進学を続けるか・・・。最後の八段目管理官学校まではさすがに厳しそうだけど・・・せめて・・。」
「いえ、お嬢様、この際です。八段めざしちゃいましょう。」
「え~~~ピーリン、本気でいってる?」
「はい。実は先ほどイサさんから連絡が入って、しばらくソル太陽系の件は塩漬けにしてよい状態になったそうです。お嬢様のコネをつかう期間までに八段目を取るようにとのことです。」
「・・・・・・相変わらず普段は優しいのに、こういう事にはスパルタだよね・・・イサさん。」
横にいたシロ少年もうへぇという顔をしている。
「まあ、よい方に考えましょう。それより卒業式を終えたら、すぐに第十一級管理官学校への受験申込ですね。」
「ここの学校一週間ごとに受験やってるのってすさまじすぎると思う。まあ、余計な待ち時間とらないですむけど・・。」
「競争試験ではなく、点数での定点試験だからというのもあるでしょう。」
「卒業試験もね。卒業試験はかなりきつかったけど・・・。」
「シミュレーション試験がやはり厳しかったですね。現場での判断をどう下すか、人間関係の構築についてとか、他の国では試験を実現すること自体が不可能な項目が特に・・・。」
「これを一発合格したイサさんて、やっぱりすごいのね。」
「段になってから何度も落とされたとはおっしゃってましたけど・・・。」
「そのへんて惑星管理官レベルでしょ・・・惑星を統括するシステムの管理とか、星の経済の管理とか、外部との交渉事、治安の安定化作業とか・・・・考えただけで頭痛がする。」
「惑星の移動は私たちの船でよいみたいです。」
「あ、そういうのありなんだ。」
「むこうでの停泊料もそれほどかさまないみたいですね。試験に合格すれば無料になるみたいですし。」
卒業式場に入るとフェンラール達は口を閉じた。席順に従って座っていく。
それから一週間後、管理官学校惑星ライネリア・テラスの第十一級管理官学校でランニングで汗を流しているフェンラールの姿があった。
この第十一級からは、卒業試験に合格すればすぐに上の階級に受験することができる仕組みになっており、学生によるクラブ活動あるいはサークル活動などは段階に関係なく横断組織的に運営されている。
フェンラール達が入ったのは陸上競技部だった。それというのもほかの運動競技はフェンラールにはなじみのないものが多く、また、集団競技であるものが多かったためだ。
文化部も考えたが、シリウス王国にいた時に軍にいたことから、どうにも性にあわない。腹心のピーリンから、それだから出会いを得られないのだと嘆かれた。
いまは長距離競技の為のランニング中だ。フェンラールから少し離れた場所で息を乱しているシロ少年の姿もあった。
所定のコースをはしり、競技場にはいると先輩方が先についており、フェンラール達がそれなりのタイムでランニングを終えたことに驚いた様子だった。
「アルドネスさんだったかな?けっこう走り慣れてるんだね?」
「まあ、元軍人でしたから。」
「え?連合宇宙軍の?」
「いや・・・・・・今はない国のですね。」
「あ~すまない、悪いことを聞いた。」
「大丈夫ですよ。もうふっきれてますから。お!シロ君がんばったな!!」
「フェンラールさん達、早すぎです・・・・。俺っちにはキツかったですよ・・・・・・。」
「・・・まあ、男ならがんばれ。おねぇさんは頑張る男の子はすきだぞ?」
シロ少年は若干呆れた様子だ。
「おねぇさんのことは好きですけど、そういう露骨なのってどうなんですか?」
フェンラールが頭をかく。
「そういうのは散々前の学校でわかってますけど・・。もうちょっとなにかあってもいいとはおもうんですよ?」
後ろでピーリンが苦笑している。
男性の先輩はほほえましいものをみた感じでその場を離れていった。
フェンラールはシロ少年が自分と付き合いたがっているのは知っているが、いまいち年下と付き合うというのが想像できないでいた。ピーリン曰く、なったらなったらでそれはそれでよろしいのではということだった。
フェンラールとしては取引先から預かってる大事な向こうの後継者だけに、うかつに手を出していいものか迷っていたのが実際のところだ。
もちろん、昔の立場であるシリウス王国の王女であれば、婚前交渉はもってのほかだ。結婚どころか、婚約するまでもいくつもの段階がある。だがいまはそれらの束縛はない。
一般市民としては婚前交渉はむしろ普通の事だし、むしろ性に対してかなり緩いと思われるアマテラス銀河連合にいまいるわけだ。子供ができても万民に生活保証がある制度だし、この際、自分の初めてをシロ少年と思わなくもない。
「シロ君、このあと時間とってもらるかな?」
フェンラールのその言葉にシロ少年は首を傾げた。
「もちろんいいですけど・・・。」
フェンラールはそっとシロ少年の耳元に口を近づけてささやく。
シロ少年はずいぶんフェンラールのささやきに驚いた様子だった。
翌日、ホテルの一室でフェンラールは目を覚ました。幸い昨日の情事でそんなに出血はしなかった。
ただ、避妊具をつかわなかったので、あとはお察しの通りだ。
汚れたベッドの上でシロ少年はまだ眠っている。その寝顔は満足そうだ。
フェンラールとしては底なしのシロ少年の性に翻弄された気がしないでもない。若さの違いかなといまさらながら思う。
空間情報システムで呼び出しがあったのででるとやはりピーリンだった。
『昨晩はお楽しみでしたね?』
「ピーリンさぁ、それ言いたかっただけでしょ?テンプレート発言とかいうライトノベルの・・。」
くすりとピーリンは笑った。
『それはそうと情事の後しまつは私どもがしますので、シロ君をおこしてください。シャワー浴びて着替えてホテルのレストランでおちあいましょう。』
「わかった。」
フェンラールがシロ少年を起こすと、シロ少年が驚いて起きた。
「あ・・俺・・昨日・・・」
「ほらおきたおきた。シャワー浴びてレストランにいくよ!」
「えんりょないなぁ・・・。」
「いまさらでしょ?」
「そりゃそうだけど・・。」
そう言いながらシャワールームにシロ少年は向かう。
フェンラールはなんとなく胸のつかえが一つ取れた気がした。
数日後、イサはピーリンから報告をうけて、少し考えた後口を開いた。
「念のためというかさまさらな対策だけどシロ君の名字なかったから・・・・アマナギ姓にして、フェンラールさんをそこに入籍させるってのはどうかな?」
『お嬢様を結婚させると?』
「そうだね。そすれば不法賞金稼ぎの目をそらすのに都合がいいかと。船の名前も改名しちゃっていいかな?外装もかえてさ。」
『そうですね・・・・確かに・・。お嬢様に相談してみますね。』
「たのむよ。」
それからまた数日後、フェンラールとシロ少年改め、シロ・アマナギは入籍し、フェンラール・アマナギとシロ・アマナギという夫婦に戸籍上なっていた。本籍地はミネアリア・テラスとなっている。式は、第八段目管理官学校卒業後に行うことを二人は決めていた。
完全に姉さん女房で、シロにあまり選択権がない夫婦となったが。もっともフェンラールの性格上、あまり相方は縛らないだろうとはピーリンの見立てだ。
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