天の川銀河戦記

イサ

プロローグ

第1話 歴史の変遷

 我々の住む恒星系である太陽系、そして第三惑星である地球。

 それを取り巻く星々の集団を天の川銀河と呼ぶことを諸君は知っていると思う。

 しかし、ながら地球の外を取り巻く政治状況は地球の人類のほとんどはご存じないであろう。


 天の川銀河にはいくつかの有力恒星系間国家が存在する。

 第一に挙げられるのが我々が所属しながら、天の川銀河では過去の巨大文明と思われることが多い『アマテラス銀河連合』。これは過去の地球文明を発祥させた国家でもある。

 政治形態は中央集権型の民主国家であるが、被選挙権を得ることについては、万民が入学試験を経て入学できる管理官学校の課程をいくつか修了する必要がある形態の共和制国家だ。経済はエネルギー通貨経済を採用しており、このことにより高い出生率を保持する福祉の充実した国家でもある。

 基本的に成人年齢は満12歳とされているが、育児にかかる費用のすべては国庫負担で賄われており、また、成人とともに、男女とも一戸建て住宅が一人に一戸給付される。

 エネルギー通貨の発行権を国家が完全に掌握しており、このことが潤沢な国家予算を生み出している仕組みである。

 技術的にはほかの国家の追随を許さないほどの技術力を持つ。

 また、自動機械化されたAIによる無人艦隊を保有しており、ときどき未開宇宙でこの艦隊に滅ぼされる敵性文明があるのも事実だが、実際のところ、アマテラス銀河連合の法律に反してなければそのようなことは発生しない。無人艦隊自体は司法省管轄下の宇宙警察に属する。


 宇宙軍も配備しており、こちらのある程度以上の指揮権をえるのも管理官学校の卒業資格が必要になる。

 


 第二に挙げられるのが、資本主義があるいみ弱者淘汰ですすんだ先にあると言われる通商連合共和国である。彼らはアルファベットの元になる言葉を使用している。

 そのためか、ファウンデーション オブ ビジネスユニオンという名称をたびたび地球で使う。

 通商連合共和国は、共和国を名乗ってはいるが、共和制とはいいがたい。理由としては十三の財閥家の代表者による寡頭独裁政治だからだ。十三家のナンバリングは国家への一宇宙標準年の納税額であり、当然そこに共和国議員の出入りがある。

 商売になるものはいかなるものものも扱うが彼らのモットーであり、宇宙における違法薬物から人身売買、臓器売買、はては人型生物兵器の売買まで手掛けている。

 アマテラス銀河連合の植民惑星だった地球を実質的にシリウス王国に攻略させたのも通商連合共和国であり、彼らが地球に目を付けた理由は対アマテラス銀河連合用の人型生物兵器であるジョカの適正化にアマテラス銀河連合の標準型人類との交配をさせるためだった。

 技術的には遅れているが、それはアマテラス銀河連合に対してであり、ほかの天の川銀河の国家に対しては優位な状況を維持している。

 社会保障費は一切予算にない。


 天の川銀河で第三にあげられるとすれば、ラクール王国だろう。ここは貴族主義による封建国家である。貴族による地方分権で集まっている連合構成王国である。

 ノブレスオブレジュを標榜する、天の川銀河の中ではわりとまともな部類にはいる国家ではあるが、通商連合共和国と長年にわたって戦争状態にある。そのため長年の蓄積で、貴族は軍人になることを強制される仕組みとなっている。

 内政官すら軍を退役した貴族がなることが多い。脳筋国家と揶揄されることもある。


 天の川銀河では弱小勢力だが、我々の太陽系をアマテラス銀河連合の内紛を利用して奪ったシリウス王国またはシリウス宙賊団も我々を取り巻く環境においては説明しなければならないだろう。シリウス星団を領有するが、もとは通商連合共和国に雇われた私掠宙賊団が始まりである。

 彼らは天狼シリウスを国旗として用いているが、過去の太陽系においては恐怖の代名詞だった時代すらあった。

 占領時に大量虐殺を行ったのだからさもありなんだが、当時の地球のアマテラス銀河連合国民の七割は働かず、給付で生活しており、あとの三割が公共事業に従事している状況だった。労働のほとんどをAIにより自動化され、人が働く必要がなくなっていたからだ。

 食物生産も自動化効率化されておりながら多種多様な料理を楽しむことが可能となっていた。


 現状のアマテラス銀河連合においても就職率はにたような値だ。人間は知的な活動や芸術的な活動に邁進するべきという意見が大半だ。

 しかし、侵略者であるシリウス王国にしてみれば働きもしない地球の人類はたいそうな怠け者にみえたらしい。


 働かせるためだと称して、食物生産プラント破壊をシリウス王国の占領軍は行った。結果的に飢えるものが大量に出た上に、レジスタンス活動が激化、地上からの撤退を余儀なくされた。そして衛星軌道上からの砲撃により地表面の八割が焼き尽くされることとなった。この事件をナロンギデアの虐殺としてアマテラス銀河連合では記録されている。


 シリウス王国による太陽系侵略は天の川銀河中央であるアマテラス銀河連合天の川支部内部における腐敗が原因なのだが、宇宙軍がなぜ救出に向かわなかったかシリウス王国側が全く理解していなかった。

 腐敗さえなければ、負けていたのはシリウス王国軍だったのにである。

 何度か反乱騒ぎ、独立運動をへて、シリウス王国はアマテラス銀河連合標準人類因子の壊滅を図るべく、人類にその壊滅かを行わせる遺伝プログラム遺伝子を組み込んだ人型生物兵器人類の制作を進めていく。

 この開発には通商連合共和国の上十家という十三議員常連のうち三家が関与し、資金や遺伝マップの提供を行った。

 そしてその過程で見た目を優先した愛玩人類や戦闘力を強化した戦闘人類などを開発し、人間牧場として地球上で繁殖をすすめていったのである。


 話はシリウス王国本国に戻す。シリウス王国は弱肉強食を旨とし、強者が弱者を導く先にこそ人類の繁栄があると考えている。そのためありとあらゆる場所で闘争をよしとしている。

 その関係上、貴族同士の決闘なども盛んにおこなわれているが、問答無用のものが多く、卑怯な手を用いても勝ったもん勝ちの風潮が強い。

 また、技術的は生物工学技術に長けている一方、過去の偉人の遺伝子の再現した人類を再誕させる目的とする王立偉人研究所などもある。


 以上が、天の川銀河やわれらの太陽系を取り巻く事情だが、すでに通商連合共和国とシリウス王国による天の川銀河中央での内乱さわぎは終結している。

 次はこの話からはじめるとしよう。

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