娼年 / 石田衣良
映画化もされ、直木賞候補作にもなった石田衣良さんの代表作ともいえる一冊で気になっていたので図書館で借りて読みました。
娼夫という職業の話というだけで、もしかしたらなんだか暗い雰囲気だったり、闇のような雰囲気を感じてしまう方がいるかもしれません。少なからず夜職や風俗業というのは偏見があると思いますし、それはきっと中学生のいじめ問題のように消えることはないのかなと思っています。
しかし、この作品は暗いどころか温かいのです。大好きな人に優しく抱きしめられているような、春の太陽に照らされているような読後感に浸っています。偏見のある方にも、この作品は是非読んでいただきたい一冊だと私は思います。
それから、御堂静香さんの口調が私はとても気に入りました。色っぽいけれど、冷たく、しかし慣れてくると温かいんです。
例えばP23の「こんにちは。電話をもらえなかったから、きてしまった」という言葉です。「きてしまいました」とか「きてしまったわ」ではなく、「きてしまった」。突き放すような言い方が、静香さんの魅力を引き出しているように思いました。
そして最後にP114の「そうね、バスタブに青いインクを一滴落としたくらい、うんと淡いのでもそう呼んでいいなら恋していたのかもしれない。」という表現がとってもきれいだと思いました。
頭のなかで白いバスタブに水がたっぷり張られていて、そこに青いインクが一滴だけ落ちるのが映像で流れませんか? すごくお洒落な比喩だなと思いました。なんだか横浜や自由が丘みたいなお洒落さです。この感覚を言葉にするって難しいですね!
この小説を読んで学んだことは「正直に生きているほうがいい」ということと「普通に生きるということは意外と難しい」ということです。アズマくんとのやり取りのシーンは村田沙耶香さんの「コンビニ人間」を思い出しました。
……とある大学生のひと夏がこんなにも濃いなんて、誰にも想像出来ないですね。
2019.7.17.
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