第24話 対抗心
「うわぁーん、りっちゃんと離れたくないよぉ!!」
翌朝。玄関にて。マネージャーさんにグイグイ引っ張られる白川さんが俺から離れまいと必死に抱きついているというカオスな状況が生み出されていた。
「アイドルの撮影に一般の方は関わることは言語道断です。あと、いくら相手が大切な幼なじみだとしても、国民的アイドルがそんなにくっつかないでください。誰かに見られたらどうするんですか」
「見られないもん見られないもんだからもう少し一緒にいたいよっ!」
まるで幼児のような発言をする大のアイドル。マネージャーさんも流石に引いている。
「仕事は大切だと思う。だから、律から離れて」
「確かに、正論だけど~!それでも嫌ぁ!」
この人本当にアイドルか?本当に言動とかアイドルのそれじゃないんだが。あと服をそんなに引っ張らないで。せっかくこの間叶が選んでくれた服なのに伸びちゃう、伸びちゃうから。
「撮影始まりますからっ……!行きますよっ!」
グイー!と結構強めに引っ張るマネージャーさん。あ、待って。この人が1番服伸ばしちゃってない?力加減考えて欲しいなぁ!?(キャラ崩壊)
しばらく抵抗をしていた白川さんだったが、急に何か思いついたように「あ!」と言う。その拍子に手を話してしまったためマネージャーさんと白川さんがバタァンと倒れてしまった。結構痛々しい音がしたけど、大丈夫かな?
「ちょ、ちょっと急に離さないでください!?」
マネージャーさんはそれはもうお怒りの顔だった。だが、白川さんはそんなのは知らんぷりで話し続ける。
「そうだよ、りっちゃんも一緒に撮影現場に連れていけばいいんだよ!」
「いや話聞いてました!?一般の方が立ち入るのは普通にまずいことです、色々と!」
本当にその通りでございます。もしこれがいろはにバレたら絶交ものだよ……(2度目)。
「じゃあミリオンヒット達成したご褒美ってことで!ね、いいでしょお願い!」
「いやもっと他に使い道あるだろ!?」
思わず俺もツッコんでしまった。いや、だってほら、記念CDとかそういうのに使った方がいいと思うよ?その方がファン達も喜ぶし。
「りっちゃんのために意外なんて使い道ないもんっ」
「『ないもんっ』じゃないから!あと叶の前でそんなこと言わないでくれるかな!?」
「(ムスー)」
ああほら、ムスッと顔になっちゃったじゃん。
「律の彼女として……今の言葉見過ごせない」
そしてさりげなーく腕を絡めてくる叶。それを見た白川さんもムッとした表情になり、俺の腕をグイー、と引っ張る。引っ張るの好きですね君。
「じゃあ良いよ?そんなにやる気なら今夜から勝負始めちゃおうよ」
「いや勝手に始めないでよ」
「望むところ」
2人の視線が交錯して、俺の前でバチバチと火花をあげている。もう俺の意見聞いてくれそうにないんだが。
「行きますよ、もう!」
「今夜から勝負だからねっ!泣いても知らないよ!」
結局ずりずりと引きずられていった白川さん。ようやく車に乗って(正確には押し込まれて)行ったのを見届けたあと、俺は深いため息をつく。果たしてこれからどうなってしまうんだろうか。まぁ、それでも明後日に帰るわけだし気にする必要もない……。
「(メラメラ)」
隣で対抗心に火がついた叶。これは、嫌な予感しかしないけども。
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