エイプリルフールだったので「記憶喪失になった」と言う義妹に自分達は恋人だと冗談を言ったら信じちゃった件について

香屋ユウリ

叶編

第1話 やらかしてしまいました

「うん、いい朝だ」


 青い空、白い雲。気分は上々。


 ピコン


「ん……?」


 伸びをしていると、スマホに通知が届く。

 

 なんだろう、と確認してみると友人から一件の通知が来ていた。


『俺、彼女と別れたわ』


 ………まじかよ。


『まじ?』


『嘘』


『は?』


『今日エイプリルフールだよ、信じてて草』


『お前、学校で会ったら覚えてろ』


『ふええ……怖いよぉ……www』


 こいつ……、朝からからかってきやがって……。


 俺はベッドの上にスマホを放り出すと、高校の制服に袖を通す。今日から俺も晴れて高校2年生だ。まぁ、ラノベの主人公みたく女友達が沢山いて絶賛ハーレム中!とかそういうのがないのが残念だが。


 自分の部屋から出て、リビングに降りる。すると既にそこには朝食が用意されていた。

 

義母からの置き手紙が置いてあり、そこには仕事で遅くなる旨が書かれていた。いつもの事なので、俺は気にせず席に着く。


「いただきます」


 しばらくニュースを見ながら朝食を食べていると、リビングのドアがガチャりと開く。


 そこには寝巻きが乱れ、雪のような肌をまぁまぁ露出している義妹──高山叶たかやま かなが立っていた。


 銀色のロングの髪は少し寝癖がついており、ところどころクルン、と丸みを帯びている。高校生として成長しているところは成長しているので、少しだけ下着が見えるという事故が発生していた。


 まぁ、いつもの事なので慣れてはいるが。


「叶、おはよう」


「………」


 しばらく叶は、ぼーっと俺の方を見つめる。


「何か顔についてるか?」


 そう聞くと、叶からいきなり衝撃の一言が発せられた。


「あなたは、誰?」


「……へ?」


 寝ぼけて思考が回っていないのだろうか。


「何寝ぼけてるんだ。ほら、さっさと顔洗って目を覚ませ」


 そう言ったものの「誰なの?」と言って譲らない。3回くらいそのやり取りが続き、さすがに違和感を覚えたので、渋々名前を言った。


「高山律だ」


「律」


 その名前をまるで確認するかのように反復する。


「ねえ、律」


「なんだ?」


「私……記憶がない。教えて、私と貴方は一体、どういう関係?」


 一瞬何を言っているのか分からなかったが、しばらく考えてみると、とある結論に思い至る。


(あ、なるほどな。さてはエイプリルフールだから、記憶喪失のフリをしているな?)


 いつもはそういうことをするキャラでは無いのだが……たまにはそういうことをしたくなったのだろう。どれ、ひとつからかって赤面させてみよう。


 なぜそう思ったかは分からないが、何となく普段は無表情の義妹の違う表情を見てみたかったのかもしれない。こんなふうに話しかけてくれたのは年単位であるかないかだから。


「俺と叶の関係……。義理の兄妹で、恋人だけど?」


 言った!言ってやった!さあ、赤面するんだ!そして普段なクールな表情を崩したまえ!ふははははげほっ、ごほっごほっ!


「恋人……?」


「そうだ、恋人だ。それはもうイチャイチャ甘々、周囲のみんなの視線を集めてしまうくらいの……恋人だ」


 何だろう、自分で言っててすっごく恥ずかしくなってきた。


 ストン


「ん?」


 俺の膝の上にチョコン、と叶が座っていた。


「……叶さん?どうしました?」


「イチャイチャな恋人なら、これくらいは当然だと思う」


 スン、とした表情で、俺の顔を超至近距離で見上げてくる。


「////っ……!?」


 俺は口をパクパクさせる。


 今日の義妹……何でこんなに積極的なんだっ!!??


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