第9話/その女から離れて!!
「写真はあの一枚だけで、携帯に入ってる写真を消したら全部無くなるよ!」
「な、なら、今消してくれ」
「うん! 分かった!」
鳴海は素直に俺に見せながら写真を消してくれたが‥‥‥。
「えっ‥‥‥」
「見ちゃった?♡ 写真フォルダ、全部輝矢くんの写真なの♡」
「全部盗撮じゃん!」
「盗撮じゃないの! 愛の証!」
「そ、そうか、ありがとう。それじゃー‥‥‥」
「今から私の家に遊びに来る? 来たいでしょ?」
「う、うん。その前にちょっとトイレ行ってくる」
「それじゃ、トイレの前までついて行くね!」
「教室で待ってていいよ!」
「桜羽さんはトイレの前で待ってたのに、私はダメなの?」
「ダ、ダメじゃない‥‥‥」
逃げるタイミングを作れない。鳴海はもう、俺の知ってる優しい鳴海じゃないし、普通に怖すぎる!姿を見せなかった探偵が逃げ出したほどだもんな。
そして結局、鳴海が後ろをついて来ながらトイレへ向かい、中に入ろうとした時、鳴海は俺の腕を掴んでニッコリと笑みを浮かべた。
「山ってなに?」
それ今!?!?!?!?なんで答える!?答えを間違ったら逃げられないどころの騒ぎじゃないぞ!!
「やぁ、まぁって言いたかったんだ」
我ながら神解答!!
「本当?」
「本当だ! それより漏れそうだから離してくれないか?」
「いいよ? 私が掃除してあげる! みんなにバカにされても、私だけは味方でいてあげる!」
「どうしてそうなるんだ!? トイレ済ませて、すぐ戻ってくるから!」
「だって、なにか隠してる顔してる」
「俺が鳴海に隠し事するわけないだろ!?」
「うーん、そうだよね。ごめんなさい、輝矢くんを疑うなんて最低。これも全部、あの害虫のせいだよね。あの女がいなければ、私達は最初から幸せだったのに‥‥‥消さなきゃ‥‥‥消さなきゃ消さなきゃ消さなきゃ消さなきゃ消さなきゃ消さなきゃ消さなきゃ」
「そ、それじゃ! トイレ‥‥‥行くね」
「うん! 待ってるね!」
よし、まずは個室に入り、詩音に『俺のカバンと靴を持って、自転車の横に立ってろ』とメッセージを送った。
そして、トイレの外から丸見えの、トイレについてる窓から脱出する!鳴海もさすがにトイレの中を覗いて待っていたりはしないだろうし、音を立てなければいけるはずだ。
「輝矢くん?」
バレたー!!!!
「さよなら!!」
窓を開けた瞬間バレてしまったが、窓から外に出て、自転車小屋に走った。
だが、詩音はまだ来ていなく、俺が自転車に跨ったタイミングで、自分と俺の分のカバンを抱えた詩音が昇降口から走って来た。鳴海もセットで。
「桐嶋さん!」
「早く!!」
「パンツが食い込んで走りにくいです!」
「知るか!!」
詩音はすぐに自転車の後ろに座り、ギリギリで鳴海に捕まることなく学校を飛び出した。
「鳴海さん、ずっとニコニコしてます」
「マジで怖かった‥‥‥てか、山って合言葉に気付いてくれてありがとう」
「輝矢様は私だけのご主人様ですから、ご主人様の考えていることを読み取るのもメイドの仕事です」
「そういう時は気が引き締まってて助かる」
「締まりの良さで私を選ぶだなんて♡」
「振り落とすぞ」
「ダメです。ずっと鳴海さんが追いかけてきてるので」
「はぁ!?」
「輝矢くーん♡ どうして逃げるのかな?♡ 早くその女から離れて! 私達両想いなんでしょ?」
「へーい、ここまでおいでー」
「挑発するなよ!!」
「いざとなれば、私が足止めします」
「どうやってだよ!」
「ボッコボコにしてやりますよ」
「それは可哀想!」
「輝矢様? まさか、まだ鳴海さんに恋心が? 本性を知っても、まだ鳴海さんとワンチャンエッチなことをできると思っているんですか?」
「それは思ってない!」
「それはよかったです。まぁでも、鳴海さんと付き合っているのに私を求めてハァハァしちゃうご主人様も可愛いかもです♡」
「寝取りの癖あるのかよ! 最低だな!」
「大抵の性癖は熟知しているつもりです♡ 」
「輝矢くーん?♡ ねぇ止まってよー♡」
「腰動かしすぎぃー♡」
詩音は鳴海の声に寄せて、なにかを始めた。ウザい。
「私、もう疲れてきちゃったよ? 聞こえてるんでしょ?」
「でも、まだやめないで♡」
「私のお家に行くんじゃないの?」
「ホテルはダメだよぉ♡」
「早く行きたいでしょ? 私なら、輝矢くんの望みは全部叶えてあげるよ?」
「あぁ、このまま‥‥‥いいんだな?」
「うるせぇー!!!! 全部下ネタに変換すんな!! んで、なに俺役も演じてんだ!!」
「演技派女優なので♡ でも、輝矢様との夜は演技なんてしませんよ♡」
「桜羽さん!! 早く輝矢くんから離れて!!」
あぁ、もう!!なんなんだよこの二人!!
※
二人から、止まらない一種の言葉責めを受けながら自転車を漕ぎ続けて、やっと家に着いたが、鳴海も諦めずにずっと走ってついてきてしまった。
このまま家に入るわけにもいかず、俺達は家の前で話を始めた。
「もう、疲れたよー」
「ここは輝矢様と私のラブホテル兼、家です。帰ってください」
「ただの家だ」
「輝矢くん大丈夫?」
「んっ!?」
鳴海は詩音を無視して、心配そうに俺に身を寄せ、ガッツリ胸を押し付けてきた。
「桜羽さんに脅されて私から逃げたんでしょ? 大丈夫。私が桜羽さんを消してあげるから」
「ちょっと待ってください。私が輝矢様に遠隔操作のオモチャを仕込んで脅しているみたいなこと言わないでください」
「お前の脳内変換壊れすぎだろ!!」
「むしろ私が仕込まれて、日々お仕置きされる側です」
「なら、私がお仕置きしてあげる。輝矢くんを汚した罰」
「私にお仕置きできるのはご主人様だけです」
「残念だけど、輝矢くんは今日から私のご主人様なの。ね?♡」
「いやぁ‥‥‥」
「ご主人様大好き♡」
ヤベェ‥‥‥悪くない‥‥‥。
「ふっ」
「なに笑ってるの?」
「私、ご主人様の裸を見たことがあります」
「言うなよ!!!!」
「鳴海さんは見たことないですよね」
「本当なの? 本当に見られたの?」
「あれは事故というか‥‥‥風呂でリラックスしてたら、急にトラックが突っ込んできたみたいな‥‥‥」
「許せない‥‥‥私だけの輝矢くんなのに‥‥‥私以外が見ちゃいけないのに‥‥‥」
「私の方が上です。帰ってください」
「ねぇ輝矢くん。こんな失礼で汚らわしい貧乳メイドなんかいらないでしょ? 必要なのは私。ね? 輝矢くんが思ってることならなんでも分かるの。輝矢くんが私を目で追ってくれていたように、私はずっと輝矢くんを見てきたんだから」
「うん、とりあえず詩音は持ち上げた自転車を降ろせ」
詩音は貧乳メイドと言われ、鬼の形相で自転車を持ち上げている。
「凄い馬鹿力だね。もしかして桜羽さんってゴリラ? ゴリラだから胸叩きすぎて小さくなっちゃったの?」
「輝矢様、許可を」
「な、なんの?」
「この女を気絶させる許可を」
「ダメだ」
「嬉しい♡ 輝矢くんが私を守っ‥‥‥」
「あっ‥‥‥」
詩音は我慢出来ず、鳴海の後ろ首をチョップして、一撃で気絶させてしまった。
「すみません。つい」
「なにやってんの!? 生きてる!? これ生きてる!?」
「脈があるか確認します」
そう言って、鳴海のエロ可愛いピンクのパンツを脱がせ始めた。
「どこで脈確認しようとしてる?」
「御察しの通りです」
「首にしろ。あと、ありがとう」
鳴海のパンツを見せてくれたことだけは感謝してやる。
「パンツはどうしましょう。履きますか?」
「うん、普通履かないよね」
「それじゃ、鳴海さんの頭に被せておきます」
「起きたら殺されるぞ」
「一度室内に運びます」
「最終的にどうするんだ!? って、本当に被せるな!!」
「私に預からせてください。なんとかします」
「わ、分かった」
詩音は時間をかけて二階の自分の部屋に鳴海を運び、部屋から出てこなくなった。
中でノーパンの鳴海はなにをされているのか、ものすごく気になるけど、ここは詩音に任せよう。
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