第3話/お詫びのおっ◯い!
ギャル作戦を失敗して、結局普通にしてもらうことにしたが、そもそも、周りの生徒にどう思われても、今の俺は特に気にしない。
とにかく、詩音と鳴海が仲良くなれさえすれば、誤解も解けるんだ。詩音には責任という意味でも頑張ってもらわなくちゃいけない。
そう考えているうちに昼休みが始まったが、いつも声をかけてくる鳴海が声をかけてこず、すぐに教室を出ていってしまった。
「
「あ、うん。ありがとう」
詩音から弁当を受け取ってすぐ、詩音は女子生徒に囲まれてしまい、肩やら腕が女子生徒のお尻に当たりそうになり、俺は席を立つ他無くなってしまった。
「
「もっと詩音ちゃんと話してみたい!」
「みんなで食べようよ!」
「は、はい」
昨日は俺についてきちゃったからな。顔がいい転校生ってだけで大人気だし、詩音も友達は作っておいた方がいいだろう。
俺は‥‥‥大河のとこ行ってみるか。
「あ、輝矢」
教室を出てすぐ、大河が心配そうにA組の前まで来ていた。
「お、おう、今そっち行こうとしたとこだった」
「鳴海さんと喧嘩した?」
「喧嘩というか、振られた」
「えっ、告白したの?」
「いや? する前に振られた。あの転校生のせいで」
「そっか。屋上で友達と食べてるみたいだけど、行く?」
「やめとく」
「もう諦めたの?」
「嫌われてる以上、今はなにを言ってもダメそうだからさ」
「それもそうかもね。それよりなんか、人集まってるね。外で食べる?」
「だな、行こうぜ」
※
今日は大河と二人でお昼を過ごして気分転換したが、午後の授業、休憩時間、放課後も鳴海とは目すら合わず、少し元気を貰おうと、大河が居るクッキング部へ顔を出した。
「あれ? 大河一人じゃん」
「なんか、みんな昨日作ったやつ配って帰るって。輝矢はどうしたの?」
「テンション下がりっぱなしじゃダメだと思って、なにか甘いもの食べたいなって」
「
「アイツ?」
「私は
「居たの!?」
「はい」
いつの間にか俺の背後に立っていた詩音に驚いていると、大河は笑いながら冷蔵庫に向かって歩き出した。
「それじゃ、三人でプリンでも作ろうか! 一時間あればできるよ!」
「おぉ! プリンいいね!」
「私も作ってみたいです」
そう聞くと、詩音も普通の女子高生だな。
「うん! 一応エプロンとバンダナしてね! クッキング部のルールだから!」
「んじゃ、先輩の借りまーす!」
「私もお借りします」
調理室に置いてあった先輩のエプロンとバンダナを身につけて、さっそくプリン作りを始めた。
「作り方は携帯で調べるので、私は奥の調理台で一人で作っていいですか?」
「いいよ!」
「
「おう、いけいけ」
その方がストレス無くていいわ。
「イけイけだなんて♡」
「おい!!」
「失礼しました」
「だ、大丈夫?」
「大丈夫だ。気にしないでくれ」
「わ、分かった」
本当、気の抜けない奴だな。
※
料理とかあまり好きじゃなかったけど、友達と作るのは普通に楽しくて、あっという間に残り冷やすだけになり、冷やし始めて二十分が経った。
「携帯いじってるのも暇だー」
「話でもして時間潰そうか!」
「それしかないよなー」
「
「輝矢は一週間で辞めたんだよ」
「おい、言うなよ! なんかカッコ悪いだろ!」
「吹奏楽部ですか?」
「お前はなんで分かった」
「鳴海さんが吹奏楽部だからです。近づきたくて入ったけれど、向いてなくてやめたのかと」
「正解!」
「わーい」
「二人で盛り上がるな!!」
「ちなみに、プリンを作っている間、鳴海さんが覗きに来ましたよ」
「え」
「悲しそうに去っていきました」
「もっと早く言えよ!! ちょっと行ってくる!!」
「あ、待ってください」
詩音は俺の腕を掴み、耳元に口を近づけてきて囁いた。
「お詫びはします。後でおっぱい見せまであげます」
「マ、マジ?」
「はい。約束します」
見れるものなら見ておいても‥‥‥いいよね!!
「よし! 行ってくる!」
俺は調理室を飛び出して、音楽室の前までやってきた。
吹奏楽部の迫力ある演奏を聴きながら扉についたガラスから顔を覗かせると、ばっちり鳴海と目が合い、鳴海が演奏をやめて廊下に出てきてくれた。
「なに?」
「ちょっと、誤解を解いておきたくて」
「私も、あんな急に‥‥‥謝りたいから、校舎裏行かない?」
「う、うん! 行こう!」
二人で会話もなく校舎にやってきて、古い木のベンチに座った。
「そ、それじゃ俺から」
「うん」
もう、正直に話して、正直困ってると打ち明けよう。
「詩音との関係なんだけど」
俺は、ずっと隠していこうと思っていたことを、一番知られたくない相手に、素直に全て打ち明けた。
「って、感じなんだ」
「そうだと知らずに、私も一方的にごめんなさい」
「全然いいんだ! 俺がちゃんと言わなかったのが悪いんだし!」
「それじゃ、今日から」
「うん!」
お付き合い開始の流れキタ!?いやー、人生分かりませんな!!
「いい友達でいようね!」
「へ? お、俺達って両想いだったんじゃ」
「あんな可愛い転校生と一緒に住んでるんだもん。お付き合いしても、不安が募っちゃう。それに私、結構嫉妬深いからさ。友達でいよう!」
「追い出す! すぐに追い出すよ!」
「ううん! 可哀想だからいいよ。それに安心した! もう一人じゃないんだね!」
「‥‥‥」
「ほら、来たよ?」
俺を探しに来たのか、詩音が皿を持って校舎裏にやって来た。
「
「約束?」
「どうぞ、好きなだけ吸い付いてください」
皿を渡されると、その皿にはプルンプルン揺れるおっぱいプリンが乗っていた。
「これ‥‥‥俺を騙したな!! なんでプリンがおっぱいで、おっぱいがプリンなんだ!!」
「て、輝矢くん?」
「あっ、これには深いわけがあって!」
「
「違うよね!? 見せてあげるって言ったの詩音だよね!?」
「でも輝矢くん、さっき騙したなって。期待してたんだよね」
「違う違う!! 信じてくれ!!」
期待はしたけど違うんだー!!!!
「やっぱり、絶対友達でいようね! 私部活に戻らなきゃだから! 気にしないないで吸って大丈夫だから! それじゃ!」
「違うんだー!!!!」
絶対ドン引きされた‥‥‥。
鳴海は走って俺の元を去っていき、何故か詩音はドヤ顔で俺を見つめた。
「私のおかげで仲直りできたみたいですね」
「うん。いろいろ終わったけど。諦めなきゃいけなくなったけどな」
「これで、次のステップに進めるじゃないですか」
「次のステップ?」
「鳴海さんに罪悪感を感じずに私を抱けます」
「抱かねぇよ」
「なるほど。使い捨てのアレみたいに雑に扱うの方がいいのなら、私は反応もせずに、ただ横になっていますが」
「アレってなんだよ。もう黙れよ」
「諦めがつきましたか?」
「そんなに早くつくか!! お前がいなきゃ付き合ってたはずなんだぞ!!」
「私がいなければ‥‥‥ですか‥‥‥」
「いやっ‥‥‥」
親に捨てられた詩音には辛すぎる言葉だったかもしれない。今のはちょっと言いすぎたかな。
「よし! 今日はチャーハンを作ってくれ!」
「同じ家に帰っていいのですか?」
「おう! 命令だ!」
「‥‥‥はい!」
この優しさは俺を苦しめるかもしれないけど、俺の恋は終わったんだ。ちょっとは詩音を受け入れて、前向きに今の環境を楽しんでみてもいいかもな。
※
そして、家に帰って来てすぐ。俺は大事なことを思い出した。
「あー!!!!」
「敵ですか!」
「プリン食べるの忘れた!」
「おっぱい食べたじゃないですか」
「俺が作ったやつだよ! あー、食べたかった」
「まだ二つあるので、是非カラメルを付けてお食べください」
「えー、小さいのはいらん」
「ご主人様‥‥‥」
「は、はい」
詩音の胸を煽ると、詩音は明らかに怒った表情をして、ネギを切っていた包丁を高く上げた。
「Cはありますがなにか問題ありますか?」
「丁度いいと思います‥‥‥」
「よかったです。本当はどっちがご主人様か、その体に教え込むしかないかと思いました」
「その感じでメイドしてたの!? こわっ!!」
「そういうプレイもあります」
「へー‥‥‥そういえばさ」
「はい」
「メイド服は着ないのか?」
「絶対似合わないので着ません」
「絶対似合うだろ。外見は良いし、ショートヘアーのクール系メイドとか、絶対売れるぞ」
「見たいんですか?」
「ちょっと見てみたい」
「分かりました。考えておきます」
「それと、メイド喫茶とか行ったことあるのか?」
「ありません」
「明日は土曜日だし、行ってみるか。行って、普通のメイドがどんなものなのか学べ」
「はい♡」
あ、この感じ、嫌な予感するな。
「メイドに磨きをかけて、ご主人様を満足させられるように頑張ります♡」
「ネギ握ってその手つきやめて!?」
詩音はネギを握って、笑顔で右手を上下に動かしている。
「薄皮を剥いているだけですよ♡」
「なんか全部下ネタに聞こえるわ!!」
「ご主人様のえっち♡」
「狙ってるよね!?」
「大変です、手が臭くなりました」
「急に我に返るなよ」
とにかく明日はメイド喫茶だ。詩音に普通の可愛いメイドというのを学ばせると同時に、俺も初のメイド喫茶で、失恋の傷を癒してもらおう。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます