エロ漫画でメイドの極意を学んだクール美少女が俺のメイドになってから、恋愛が上手くいかない!!

浜辺夜空

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メイドのせいで!!

第1話/お口にいっぱい♡

「起きてください。朝ですよ?」

「んっ、おはよう」

「おはようございます」


俺は今、人生最大のピンチに直面している。

 両親が他界した後、一年一人で暮らしている家に、見知らぬ女性が居るんだ。しかも頬に血がついてる!!

 普通に起こされたけど、怖すぎて自然に振る舞ってしまった。


「朝ごはんできてますよ」

「あ、ありがとう」


誰なの!?ねぇ、誰なの!?

 黒髪ショートで、目は大きいのにキリッとしてまつ毛も長くて美人でカッコいいし、スーツもスカートじゃなくてズボンか‥‥‥ってマジで誰!?


「早くリビングに行きますよ」

「う、うん」


昨日寝る時には誰も居なかったはずだし、いつ入ったんだ。そんなこと考えるより、隙を見て警察に電話した方がいいよな。そう思いつつ、流れで一階のリビングへ来てしまった‥‥‥部屋に携帯置いて来ちゃったー!!!!


「今日の朝ごはんは卵焼きと焼き魚とお味噌汁の、シンプルなメニューになります」


ちゃっかり自分の分も作ってるし。


「私もご一緒によろしいでしょうか」

「‥‥‥」


もう、単刀直入に聞くしかない。なにかあれば、力の差でなんとかなるだろうしな。


「ダメですか?」

「まず‥‥‥誰ですか?」

「私は輝矢てるや様に尽くすよう派遣されたメイドです。聞いていませんか?」

「メ、メイド?」

「はい。輝矢てるや様の身の回りのお世話、料理、掃除に洗濯、性処理まで全て私にお申し付けください」

「せせせっ、性処理!?」

「はい。ただ経験はありませんので、恐縮なのですが、最初だけは優しくお願いしたいです」

「待て待て! 全然意味が分からないって!」

「私は、幼い頃に親に捨てられ、輝矢てるや様のご両親に拾われました」

「そんな話聞いたことないけど」

「今からちゃんと説明します。拾われた私は国のしっかりとした手続きの元、会社内で大切に育てられたのです。それで、いや、やっぱり長くなるのでやめます」

「やめないで!?」

「とにかく、輝矢てるや様のご両親が亡くなられて約一年。私はお二人との約束を果たしに参りました」

「約束?」

「もし二人になにかあれば、私が輝矢てるや様のメイドとなり、生活を共にしてほしいと」

「なるほど! わっかんねぇ!」

「しっかり説明したつもりでしたが。とにかくお食事の時間です。冷めないうちにどうぞ」

「しっかり説明してないだろ! まず、そのほっぺに付いてる血はなんだよ!」

「血ですか? あぁ、ケチャップが付いていました。教えてくれてありがとうございます。血と聞いて、あの日が来たのかと思ってしまいました」


そんなクールな声で澄ました顔のまま、下ネタの冗談とか言っちゃうのかよ。

 でもあれだ、俺の名前は知ってるし、不審者ではなさそうだな。

 今日も学校があるし、とにかくご飯を食べてしまおうと箸を進めるが、メイドさんは姿勢良く立ったまま、俺が食事する姿を見つめているだけだ。


「た、食べないんですか?」

「まだ、許可を貰っていません」

「た、食べていいですよ」

「ありがとうございます」

「俺の親、そんな厳しい人じゃなかったと思うんだけど、なんでそんな真面目というか何というか」

「この一年、メイドについて自分で調べました。なので完璧なはずです。メイドはご主人様に従順で、ご主人様を守り、夜は全身を使ってご主人様を癒したり、時には痛めつけられても喜ばなければいけません」

「いったいなにで学んだんだよ!!」

「従順な淫乱メイドはご主人様のヌルヌル奴隷です♡」

「ブー!!!!」

「水を吹きかける。これもプレイですね♡」

「なんのタイトルだよ!! あと、急にキャピキャピした喋り方と表情やめてくれ!」


ちょっと可愛かったし‥‥‥。


「お父様のデスクの引き出しに入っていた薄い本で学びました」

「知りたくなかった‥‥‥」

「上中下巻、さらには総集編も持っていました」

「マジかよ‥‥‥」

「わざわざ日本のイベントに足を運んだのか、作者のサイン付きでしたよ」

「もういい‥‥‥なにも言うな」

「分かりました」


いまだに状況が理解し難い。これからどうなるんだよ。





ひとまず食事を終えて歯磨きをしていると、メイドも真横にやって来て歯磨きを始めた。


「大変でしゅご主人様ぁ♡ 口の中がいっぱいに♡」

「ブー!!!!」

「ご主人様に白い物をかけらてしまいました」

「歯磨き粉な!!!! もう本当に意味わかんねぇ! 俺は学校に行くから、お前は会社かどっかに帰れ! いいな!」


そう言い残して家を飛び出し、全力で自転車を漕いで学校の教室にやって来た。


「おはよう!」

「お、おはよう!」


爽やかな笑みを浮かべながら挨拶をしてくれたのは、同じA組の、毎日挨拶をしてくれる鳴海瀬奈なるみせなだ。

 綺麗で長い黒髪で、顔も可愛いくて、とにかく清楚で、俺の初恋の相手でもある。

 挨拶を交わして、特にそれ以上の会話もないまま適当に携帯をいじって時間を潰していると、いつもより早めに担任の女教師、木月きづき先生が教室にやってきた。


「みんな座れー」


木月きづき先生もスーツはズボンで、腰まである長い黒髪が綺麗で美人な先生だけど、怒るとめちゃくちゃ怖い。


「入っていいぞー」


はい、嫌な予感キター!!!!

 木月きづき先生の一言で、一気に嫌な予感が押し寄せる。俺は今『なんだろ、転校生かな?』とか考えられる状況じゃないんだよ。あのメイドならここまでする可能性は‥‥‥はい、メイドキター!!!!

 制服はスカートだし!脚綺麗だな!!ってそうじゃねぇ!!というか同い年かよ!!


「はじめまして、桜羽詩音さくらばしおんといいます。今日から桐嶋輝矢きりしまてるやさっ」

「おぉーい!! なに言おうとした!?」


なにか良からぬことを言おうとしたと瞬時に察知した俺は、勢いよく立ち上がってしまった。


「なんだ、桐嶋きりしまの知り合いか。なら桐嶋きりしまの隣で決定な」

「マジっすか‥‥‥」

「マジ。あ、ちなみに転校生だ」

「うぉー!!」

「美人!!」

輝矢てるやのなんなんだ!? 羨ましい!!」


やめてくれ!!こんな変な女相手にテンション上げるな!!


「私はメイドです」

「‥‥‥」


まさかの不意の発言に、静まり返る教室。

 ちなみに、俺の心臓も静かに停止しそう。


輝矢てるや様のメイドです。朝も顔にぶっかけられました」

「なんだとー!?!?!?!?」

輝矢てるやてめぇ!!」

「さ、桜羽さくらばとは昔からの知り合いで、冗談が好きな奴なんだよ!」

「なーんだ」

「そりゃそうだよなー。安心安心」


なんとかこのピンチは乗り切ったか?

 問題はこれからのことだ。このバカメイドをなんとかしないと。

 そして、隣の席に座った桜羽さくらばは、俺の手を握って言った。


「なにか、ご迷惑をお掛けしてしまいましたか?」

「話しかけるな」

「ご命令とあらば」


ダメだ‥‥‥誤解を解いたのに、みんなの視線が俺に集まってる‥‥‥。でも、従順なのは間違いない。後で、学校で俺に関わるなって言おう‥‥‥。そうしないと、コイツに俺の学校生活がメチャクチャにされる!!!!





現実を受け止められないまま昼休みになり、一人で売店へやってくると、いつの間にか桜羽さくらばが俺の隣に立っていた。


輝矢てるや様」

「‥‥‥」

輝矢てるや様」

「買ったら屋上行くからついてこい」


その時、鳴海なるみが女友達と横を通りかかったが、なんだか機嫌が悪そうだった。

 なんか一瞬、雰囲気がいつもと違ったような。気のせいか?


「お弁当を持って来ていますので、お金は使わなくてよろしいかと」

「もう買っちゃったよ。お前の弁当はあるのか?」

「ありません」

「んじゃ、メロンパンとコーヒー牛乳で我慢しろ」

輝矢てるや様からのお恵み感謝します」

「とにかく来い」

「はい」


ダメだ。コイツと話してるだけで注目の的だ。

 とにかく早歩きで屋上にやって来て、ひとまず食事を始めた。


「あのさ」

「なんでしょう」

「様とかご主人様とかやめてくれ」

「何故でしょう。私は輝矢てるや様のメイドです」

「悪目立ちするんだよ!!」

「でしたら、どう呼べばいいのでしょうか」

桐嶋きりしまでいい」

「それは命令ですか?」

「命令だ」

「分かりました。お弁当は美味しいですか? 桐嶋きりしま

「美味いよ!!」


なんなんだ、なんかちょっとイラッとした。


「さようでございますか。料理には自信があるので、なんでもリクエストしてください」

「いやいや、お前が帰る場所は俺の家じゃないからな? 自炊するからいい」

「なら私は、どこに帰ればよろしいのでしょうか」

「親が残した会社に帰れよ」

「海外まで帰れと」


そうだった‥‥‥会社があるのロサンゼルスだった‥‥‥。


「って、ロサンゼルスから来たのか?」

「はい。捨てられたのもロサンゼルス。会社の前です」

「行動力ヤバすぎだろ」

「英語もペラペラですよ。マイネームイズシオンサクラバ。トゥーメェイトゥー」

「いや、トマトはマジで意味分からん」

「バーナーナー」

「タコは?」

「ターコー」

「オクトパスだよ!! さては英語できないだろ!!」

「日本人の社員さんが多かったので」

「見栄張るなよ」

「んっ!」

「ど、どうした?」


桜羽さくらばは急に胸を押さえて苦しみ出し、俺の制服を掴んで顔を伏せた。


「詰まったのか!? コーヒー牛乳飲め!」


心配してそう言うと、いやらしい表情をして俺を見上げた。


「ご主人様が口移ししてくれないと死んじゃいますぅ♡」

「おう、そうか」

「殺す気ですか?」

「平気そうじゃんかよ。あと、もう命令忘れたのか?」

「失礼しました、桐嶋きりしま


ダメメイド‥‥‥ダメイドだ‥‥‥。


「ところで桐嶋きりしま

「なんだよ」

「あの、鳴海なるせさんという方に気があるんですか?」

「はっ!?」

「勘です。ちょこちょこ目で追っていたので」

「へっ、へー、そんなことないと思うけどな。別に好きじゃないし」

「私が全力サポートしますよ」

「本当か!? あっ、いやっ」

「私は輝矢てるやさっ、桐嶋きりしまに尽くすメイドですから。任せてください」

「それなら、た、頼む!」

「はい。デートやキスの練習、夜の営みの実践練習等、全てお受けいたします」

「うん、やっぱやめとく」

「ひとまず、お二人がお付き合いを始められるように、明日から動かせていただきます」

「上手くやれるなら文句はない」

「期待していてください」


不安でしかないよ!!!!とその時、教室にいるはずの鳴海から電話がかかってきた。


「もしもし?」

「もしもし、今トイレにいるんだけどね」

「え」

「誰にも聞かれたくなかったから」

「そ、そうか。どうした?」

「私、輝矢くんのご両親が亡くなってるって知って、支えになりたいって思ったの」


急になに!?まさか告白の流れキタ!?


「輝矢くんは優しいし、よく私のこと見てるよね」

「あ、いやっ、ごめん」

「酷いよ。あの視線も、私と話す時の嬉しそうな表情も、全部嘘だったんだね」

「え、ちょっと待って!」

「私、輝矢くんのこと好きだったのに‥‥‥私の気持ちで遊んでたんでしょ?」

「違うんだ!」

桜羽さくらばさんが朝に言ってたこと、本当最低‥‥‥もう話しかけないで。さよなら」

「‥‥‥嘘‥‥‥だろ?」

「どうなさいました? 電話が終わったのなら、明日からの作戦を説明したいのですが」

「お前のせいで嫌われた!! 鳴海が、もう話しかけないでって!!」

「あらまぁ」

「全部お前のせいだからな!! 責任取れよ!!」

「こ、こんな場所で‥‥‥♡ ご命令とあらば♡」

「脱ごうとすんな!!」


最悪だ‥‥‥もうなにもかも終わりだ!!しかも両想いだったのかよ‥‥‥。





お昼休みも終わり、午後の授業も何事もなく終わることができたが、あれから鳴海は、一切俺と目を合わせてくれなくなった。

 好きな人に嫌われた悲しみで今にも泣きそうになりながら学校を出ると、桜羽さくらばは当たり前のように、帰る俺の後ろをついてきた。


「おい」


振り向いて声をかけると、俺を無視して走り出し、なにがなんだか分からないまま一人で帰ってくると「お帰りなさいませ♡ ご主人様♡」と笑顔で俺を待ち構えていた。


「はい、ただいま。じゃねーよ!! なんでいるんだよ!!」

「口移しの食事になさいますか? 一緒にお風呂にしますか? それとも‥‥‥」

「部屋でのんびりする」

「でしたら、体のマッサージをいたします」

「出てけ」

「はにゃ?」

「うっざ!! そんなクールな顔してんのに、似合わないことしてんじゃねぇよ!!」

「お言葉ですがご主人様。ブサイクもオシャレをするように、見た目は関係ないのです」

「例えが辛辣」

「ご主人様も幸薄そうな顔してるのに、制服を着て青春しようとしているじゃないですか」

「おいこら!! ちなみに俺の青春は終わった!!」

「青春にお線香をあげましょう」

「黙れ」

「でもそうですね。青春はいいとして、まず、私が怪しくないこと、この家にメイドとしてやってきたことが、輝矢てるや様のご両親のお願いだということを証明させてください」

「それは大事だな。青春の方が大事だけど」

「こちらへ」


俺はリビングに連れていかれ、大量の日本語と英語の書類を見せられた。


「かなり手続き踏んでるんだな」

「大変でしたよ。ですが、これで納得していただけたかと」

「確かに生前の日付で親のサインもあるし、嘘ではないみたいだな」

「安心していただけたみたいでよかったです」

「危険人物じゃないことは分かった。ただ、厄介な奴だ」

「ヤッカイ?」

「都合悪いところだけ日本語忘れるな。英語できないくせに。そもそも、ロサンゼルスで捨てられたって、桜羽さくらばは日本人なのか?」

「はい、純日本人です。とにかくですね輝矢てるや様」

「なんだ」

「これが一番大事な書類になります」

「ん?」

「この家はご両親が亡くなって以降、輝矢てるや様のお爺様の物となっております」 

「そうだけど?」

「ここに私が住む許可を、お爺様に貰っていますので、失礼ですが、輝矢てるや様の『出て行け』というお言葉に従う必要はありません」


お爺ちゃーん!!!!なにしてくれちゃってるの!?


「まさかお前! ボケてるの利用したな!!」

「ボケてないじゃないですか。私がお伺いした時、茶の間でゴルフをしていましたし。壁に穴が空いていましたが」

「ボケボケじゃねぇかよ!!」

「ですが、この契約書は覆りません。今日から私が輝矢てるや様のメイドです」

「‥‥‥分かった。いや、全然分かんないんだけど、ひとまず分かった」

「嬉しいです。私をエッチな奴隷として受け入れてくださるのですね」

「話変わってない!?」

「はにゃにゃ?」

「‥‥‥」

「失礼しました」

桜羽さくらばは俺の部屋の目の前の部屋を使え。俺が通販で頼んだ段ボールだらけだけど、掃除もするように」

「はい。さっそく掃除して参ります」

「いや、まずは学校での立ち振る舞い。キャラ設定を完璧にする」

「秘密の特訓どっくんドッピュンですね」

「うん、ドッピュンとか言うのやめようね」

「失礼しました。では、どのようなキャラ設定にいたしましょう」


どうしたものか‥‥‥。基本的には大人しい性格っぽいけど。


「とにかく、学校では桐嶋きりしま呼び固定な」

「分かりました」

「それと‥‥‥寝るまでには考えとく」

「了解です。ひとまず部屋の掃除をして、その後すぐに体のマッサージを」

「いらない」

「では行ってきます」


なんかドッと疲れたな。





 しばらくリビングでグッタリしていると、桜羽さくらばは折りたたんだ段ボールを大量に運んできて、カッコよく髪をかきあげた。


「終わりました」

「んじゃ自由時間。俺には話しかけないこと」

「話さず、快楽に集中ということでよろしいでしょうか」

「どうしてそんなに脳内ピンクなんだよ!!」

輝矢てるや様は嬉しくないのですか? 私は可愛くないでしょうか」

「んー」


ショートヘアーが可愛い。顔は美人でクールでカッコいいも混ざってるし、青い瞳が綺麗。胸も程よい膨らみ。見た目だけなら普通にいいんだけど、突然のことだし、今は鬱陶しくて仕方ない。それに俺は、鳴海なるみのことが好きなんだ!!

 あんなこと言われても、まだ好きなんだよ!!桜羽さくらばの存在は邪魔でしかない!!


「と、とにかく読書でもしてろ! 命令だ!」

「かしこまりました」

「エロいの見るなよ?」 

「はい!」

「意味深な笑顔やめろ!」


絶対に責任は取らせる。それまでは海外に帰すわけにもいかないな。

 鳴海に嫌われたままで良いわけがないんだ!!!!

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