第8話 こんな日もあるんだよね

 こんな日が時たまある。

無性にあなたを恋しくなる日。

どうしようも無いの。


 ねぇ、あなた……知ってた?

あなたの心臓が止まったとき、

無我夢中で叩いたのよ。

だって、息子の顔見たかったでしよ? 怖かったよ。どんどん冷たくなるの。あっと言う間に白くなるの。怖かったよ。でもなんとかしなきゃって……必死だった。

耳元で叫びながら叩いたのよ。

そしたら、帰ってきてくれた!

息子も間に合ったね。

「親父! 親父!」

手を握りじっと見つめていたね。

それから……静かに止まった。

もう叩かなかった。

ただ、連れて行って欲しかった。手を離さないでって。簡単なことなのに。この手を握りしめてくれればいいだけだなのにね。


ねぇ、聞いてる? あなたが倒れてから泣いてばかりの私だった。

毎日仕事帰り病院に行かずにはいられなくて。ただ傍にいたいだけな情け無い母親を迎えに来てくれる息子。

「死んだ訳じゃ無いんだから、泣くな!」

何度言われたか……。

「判ってる」って言いながら泣く私。

毎日しっかりしようとしたけどね。震えるよ体が。脳もね震えるのよ。初めて知った感覚。

痺れるような。痛いような。

ズンズンするような。おかしかったのかな。おかしいに決まってるよね。

  

 仕事を辞めて家に連れて帰ってきた時の安堵感と言ったら無かった! たった四カ月だったけど家族で過ごせたからね。


 ああ泣くとことも……叫ぶ事も……ちゃんとしないと、後が辛くなる事も知った。

息子の心残りはね、孫が見せられなかったことが残念だって!

ねえ、聞いてる? 嬉しいね!


この手を空に伸ばしたら触れてよ! そしたら私頑張れるから。


 こんな日もあるんだ。

良いよね。阿呆って言ってる? そっかなら良かった。







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