第13話
私はメイナード先生に、丁寧にお礼を言った。
……本当に、助かったわ。九死に一生とは、まさにこのことね。
私を殺しそこなって、焦っているエミリーナの顔が目に浮かぶ。
そうだ、エミリーナ!
エミリーナ自身の口から語られた不正入学の詳細を、メイナード先生に伝えないと!
私は、安静にしてろと言われたことも忘れ、勢い良く体を起こし、叫ぶ。
「先生、私、分かったんです! エミリーナはやっぱり、不正な方法で、この王立高等貴族院に入ったんです! それも、チェスタスの手引きで! それで、それで、先生に言いつけようとした私を、エミリーナは屋上から……!」
改めて自分で言葉にすると、あと一歩で殺されるところだった実感がわいてきて、急激に恐ろしくなる。感情が高ぶった私は、ぽろぽろと涙をこぼしながら、知っているすべての情報をメイナード先生に告白した。
そして、話が全て終わると、メイナード先生は私の体をいたわるように、優しくベッドへと横たえてくれた。それから先生は、深いため息を漏らし、言葉を紡ぎ始める。
「そうですか……やはりチェスタスくん……というより、ディアルデン家が、今回の不正に大きくかかわっているようですね」
私は横になったまま、枕から顔だけをメイナード先生の方に向け、問う。
「先生、これだけの事実が分かっていれば、エミリーナとチェスタス、あと、不正にかかわっている先生たちも、処罰することができますよね……?」
メイナード先生は難しい顔で、首を左右に振る。
「残念ですが、それは難しいでしょう。昨日、アンジェラさんとお話をしてから、私は夜もずっと調査を続けていたのですが、恐ろしいことがわかりました。……どうやら、今回の不正を主導しているのは、王立高等貴族院のトップ――理事長のようなのです」
「そんな……!」
「理事長は、王室や司法関係者に対しても発言力のある、この国の圧倒的有力者です。アンジェラさんの証言は大変貴重なものですが、もっと決定的な物証がない限り、何を言っても握りつぶされてしまうでしょう。最悪の場合、証言した側の方が、濡れ衣を着せられて、罰せられてしまう可能性もあります」
「じゃ、じゃあせめて、私を屋上から突き落としたエミリーナだけは、えっと、その、殺人未遂の罪に問えますよね……?」
「正直言って、それも難しいと思います。誰も、エミリーナさんがアンジェラさんを突き落とした瞬間を見ていませんから。皆、あなたが屋上から足を滑らせて、たまたま柵の低かった部分から、落ちてしまったのだと思っています」
「ち、違います! 私は確かに、エミリーナに突き落とされて……! あ、いや、よく考えたら、魔法で落とされたんだから、突き落とされたのとは、ちょっと違うかな。でもとにかく、殺されかけたのは事実です! 信じてください!」
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