第21話 一旦故郷へ
起きたら昼だった。
「んぁーーーー!」
『ふぁぁ。おはよう』
「おはよ。予定の期間すぎてるから1回森丘町に帰るぞ」
『りょーかーい』
準備をして出る。
宿は引き払った。
「1度ギルドに顔出て行くぞ」
『その方が良いだろうね』
◇◆◇
「おはざっまーす!」
ギルドの中に入ると、地獄絵図であった。
酒場には潰れている解放者達で溢れていた。
「はははっ! 見事にみんな酔いつぶれてんな。楽しかったんだな」
カウンターに行くと風香さんのところに行く。
「おはようございます! ……昨日はすみませんでした。私……寝ちゃって」
「大丈夫ですよ! 蘇芳が美晴さんちまで運んでくれたし」
「うぅ。すみません。美晴ちゃんにも迷惑かけちゃった……」
すると、奥から美晴さんがやって来た。
「私は大丈夫だよ? 翔真くんが変な男達からも守ってくれたし!」
ん? それは、言わなくても良いのでは?
「何それ? 翔真くんどういう事?」
「えっ!? おれ? いや、美晴さんが変な輩に絡まれちゃって、助けたって言うか声掛けたら逃げただけっていうか……」
「カッコよかったのよ? ねっ?」
えっ!?
ちょっと美晴さん怖い。
「むぅーーー。何それ!? 翔真くん!?」
「いや、俺は何にも……」
声が結構大きかったのだ。
ヤバいと思い酒場を見ると。
寝転がったりテーブルに突っ伏したりしながらこちらを睨みつけている解放者達。
『翔真。なんかやばいね?』
「あっ! 俺、森丘町帰るんすよ! さよなら!」
振り返って逃走する。
「ちょっと! 翔真くん!?」
「あらっ? 私を置いていっちゃうの?」
風香さんの声を聞いたあと。
ごめん! っと思いながら走る。
美晴さんの声は。
聞かないふりをして走る。
その話を聞いていた解放者達は……。
「「「「「おい!」」」」」
「「「「「翔真!」」」」」
「「「「「待てやゴラァァァァァ!」」」」」
酔っ払いゾンビが襲いかかってくる。
「やべぇ! 逃げろ!」
『逃げろ! 逃げろー!』
2人で東にダッシュする。
人間離れしたスピードに付いてこれる人はいない。
2人の姿は見えなくなった。
その頃、ギルドでは。
「あーぁ。翔真くん。帰っちゃった…」
「風香。しょうがないわよ。元々隣の領の人何だから」
「っていうか、さっきのどういう事? 何があったわけ?」
「何にもないわよ」
「むむぅーーー。」
頬をふくらませて怒る風香。
それを見てフンっと気にしていない様子の美晴。
◇◆◇
草原を走る。
猛ダッシュしている2人。
「なぁ。これってどこを通るのが正しいか分かるか?」
『僕がわかると思う?』
「だよねー」
一直線に森丘町へ向かう。
さっきからちょくちょく魔物が出てきているが、一刀で倒している。
領境に着いた。
ポンッと手を叩く。
「この壁を南下していけば関所があるんじゃない?」
『あぁ! そうだね』
再び走り出す。
数キロ走ったところで、関所を見つけた。
「あっ! あった」
壁に付いている大きな扉の前に門番が立っていた。
「解放者かな?」
「そうです!」
「ギルドカード見せてもらっていいかな?」
「はい!」
少しの間カードを確認すると返してくれた。
「うん。問題ないね。一応ギルド証表示してもらえる?」
「はい! プルーフ」
「うん。問題なし。どうぞ」
門番が扉を開けて通してくれる。
「はーい」
「あっ! 待って! 後ろの魔物は一緒?」
「そうです! 俺のテイムした魔物でして」
「ほぉー。君はテイマーなのか。テイマーで活躍してるなんてすごいねぇ」
「いやー。コイツ強いんすよ」
蘇芳を指さしながら言うと。
ウンウン頷きながら納得したような顔をしている。
「たしかにすごい圧を感じるね。いい魔物をテイムしたね」
「はい! ありがとうございます!」
手を振って立ち去る。
「気を付けるんだぞぉ!」
「はーい」
良い人だったなぁ。
あっち行くときにサイレン鳴らしちゃって迷惑だったろうなぁ。
あの時、誰かを吹き飛ばしたような気もするし。
まぁいいか。
『翔真? 走る?』
「いやー。ゆっくり行こうか。景色でも見ながら」
『それもいいね』
のどかな山々を見ながらゆっくりと森を歩く。
開けた所に出た。
「昼飯にしよっか。何か残ってたっけ?」
『えぇーっと……サンドイッチと果物かな』
異空間から出してくれた物を受け取る。
「サンキュー」
食べ終わると準備運動を始める。
『走る感じ?』
「だねぇ。走って夕方くらいには着くだろうからギルドに挨拶に行こう」
『オッケー』
「うしっ! 行こう!」
『オォー!』
2人が走り出すと先程いた場所からは、一瞬で見えなくなった。
◇◆◇
「ただいま戻りましたぁ」
挨拶しながら中に入り、美麗さんの元へ行く。
「翔真くん!? 帰ってこないから心配してたのよ!?」
カウンターから身を乗り出してこちらを向いている美麗さん。
あんまり乗り出すとお山が見えちゃってますよ。
「すみません。あっちでゴタゴタがありまして……」
「怪我してない?」
「はい! ピンピンしてます!」
ホッとしたように椅子に腰かける。
「ならいいけど。大規模ダンジョン見に行くとか言ってたから心配したわよ」
「それなんですけど、大規模ダンジョンランクの制限あったんですけど!?」
ハッとした顔になり、舌をペロッと出してテヘペロ顔をしている。
「うちの領にないもんだからすっかり頭から抜けてたわ。じゃあ、大規模ダンジョンには挑まなかったのね。よかったわ」
「そうですね。それに限りなく近いダンジョンには潜りましたけど」
今度は怪訝な顔をする美麗さん。
そんな顔したら可愛い顔が台無しですよ?
ヘタレだからそんなこと言えないけど。
「いきなりそんな深いの潜ったらダメよぉ!」
注意されるが、笑ってごまかす。
「はははっ。あの時は仕方なかったんですよ。解放者達の怠惰のせいでダンジョンが増えすぎてしまってたんで。皆で攻略するので一杯一杯だったんですよ」
「そう。そんなことがあったのね。本当に無事に帰って来てくれてよかったわ」
「ありがとうございます。それで少しこの町にいたら南下して全国の領を回りたいなと思っているんです」
「えぇっ!? いなくなっちゃうの!?」
「いえ。いずれは戻ってくるつもりです。でもいつ戻ってこれるかはわかりません」
「どうして? この町が嫌になっちゃった?」
「そんなことないです! この町は好きです! でも……両親がもしかしたら何処かで生きてるんじゃないかって……そんな気がして」
「そう。確かに2年前の報告は納得のできるものではなかったものね……」
「はい。帰ってこないから死んだことにされたんです。帰ってこないだけで生きている可能性もある」
「うん。気を付けるのよ?」
「はい。全国を巡ったら戻ってきます」
「待ってるわよ?」
「はい。また出発する時は挨拶にきます」
ギルドを後にすると匂いにつられてラーメン屋に入る。
「うわーっ! 久々にあったかい食べ物食べれる!」
『そうだね! いただきまーす!』
ズズッとすすると口いっぱいにラーメンの旨みと温かみが広がる。
「はぁぁ。うめぇ」
夢中で食べ進め、汁まで綺麗に飲み干した。
「ご馳走様でした!」
『ご馳走様でした!』
両手を顔の前で合わせてご馳走様をする。
馴染みの宿に行きベッドに寝る。
「あぁーーーーー。気持ちぃー…………グゥゥゥ」
『あっ! また寝ちゃってる! まったく……』
微笑みながら翔真を見て眠るのであった。
あっ。
誰も僕の表情なんてわかんないや。
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