転生悪魔の最強勇者育成計画
たまごかけキャンディー
第一章 転生悪魔の最強勇者育成計画
【001】最恐の下級悪魔、吹っ飛ぶ
ある日の地獄界でのこと。
突然世界が揺れた。
これはアレだな、アレ。
神と悪魔の戦争ってやつだ。
「うっわ、また天界と戦争か。おちおちマンガも読めないよ」
でもまあ、地獄で生きていればそういう事もあるだろう。
だってウチの
いつも神様と喧嘩してるしね。
「じゃ、逃げるか」
なにせ俺はしょせんしがない下級悪魔。
たまたま前世の記憶持ちで、日本人だった頃の記憶を活かして短絡的な悪魔にしては珍しく計画的に修行を積み、今では悪魔公爵にすら匹敵する最恐の下級悪魔になったといっても、やはり神様とかを相手にしたら一瞬で消し炭だ。
あんな怪獣大決戦みたいな戦争に付き合いきれないし、なんならどんなに強くなっても下級悪魔という種族の壁が存在する。
いやね、俺だって頑張ったんだよ。
この血気盛んな弱肉強食の地獄界でビビリながらもコソコソと隠れ、自分より弱い野生動物──と言ってもキメラやケルベロスなど、人間基準では大災害のような化け物なわけだが──の魂を吸収し、いつか進化するかもって思って頑張った。
でも強いだけの平民がそうやすやすと貴族にはならないように、下級悪魔は強くなっても下級悪魔だったわ。
進化とか無かった、はい解散。
だがそんな地獄界の弱小種族も、二千年もコソコソ生きてれば強くなる。
俺は悪魔としての爵位も持たぬまま野生動物の魂を幾万、幾億と吸収し続け、最近では公爵級の悪魔とタメをはれるくらいの力を手に入れたのだ。
なにせ悪魔には寿命が無いし、基本的に死なない。
死にはするが、力が半減したくらいの代償で生き返ることができる。
だからこそこうして天界との戦争が絶えない訳だが。
だからこそこの二千年、周りが戦争でちょこちょこ死んでいる間、一度も死なずに力を蓄え続けたことで最恐の下級悪魔と呼ばれるくらいに強くなった訳だが、それでも神様と
次元が違い過ぎる。
たぶん俺などデコピンで消し飛ぶだろう。
いや、もしかしたら鼻息でも消滅するかもしれない。
そのくらい各世界のトップは強い。
まあ、そのくらいじゃないと神様は世界を守護できないし、そんな神様に悪魔王は喧嘩を売ったりしない訳だが。
そんな訳で、俺は百年に一回くらい起こる戦争の時期はどこぞへと雲隠れしていた。
「あ~。せっかく最近はスローライフしてたのになあ。だが、こんなところでは死ねない。あのマンガの暗黒大陸編が完結するまでは、絶対に死ねない。俺は生きる」
やる気があるのかないのか微妙な決意を固め、いそいそと魔法で創造した避難シェルターに駆け込む。
このシェルターを膨大な魔力で維持しつつ、彼らの喧嘩が終わるまで待っているのが俺の定石である。
はやく戦争なんて終わって欲しいものだ。
「おのれ悪魔王! 今度という今度は許さぬぞ! 貴様なんど人間界に手を出したら気が済むのだ! おかげで世界は混迷し、また振り出しだ!」
「うるせぇクソジジイ! 講釈垂れるんじゃねぇ! そういうのは俺様と決着をつけてからにしな!」
あまりにも精神レベルの低い戦いである。
いや、口論の内容は一見低レベルに見えるが、見えるだけである。
実際にこいつら程の力を持った存在のスケールでこの内容となると、人類滅亡の危機になったから神様がキレたとかそんなレベルでの口論だから、シャレにならない。
悪魔的に見解を述べるなら、この神様の怒りようを鑑みるに、今回はよほど腹に据えかねているらしい。
こりゃあ、今回の戦争は天界が勝つな。
じゃれ合っているレベルの
間違いない。
それくらいの見極めは俺にもできる。
「もはや許し難し! お前たち悪魔にはしばらく反省というものを叩き込んでやるぞ! ハァ──────ッ!!」
ほら、さっそく神様の必殺光線が飛んできた。
こりゃ辺り一帯は焼け野原だ────
────って、こんな攻撃受けたら俺のシェルターじゃ防ぎきれないが!?
「ぬわーーーーーーーー!?」
しかし、時既に遅し。
地獄界の辺り一面に放射されたゴッドパワーが俺たち悪魔を焼き殺し、一瞬で消し炭にしていく。
悪魔王とて、このパワーの前ではひとたまりもないだろう。
「やばいやばいやばい! 死ぬ死ぬ死ぬ!? 死ぬってーーーー!」
避難用シェルターがミシミシと軋み、いまにも押しつぶされそうになる。
神龍のブレスにすら十年は耐えられる、俺の知恵と技術の粋を集めた最強のシェルターが、神の怒りの前に儚くも散ろうとしていた。
というか、このレベルの攻撃を仮に防げたとして、この地獄界の空間そのものが圧力に耐えきれない。
うん、無理だな。
これは終わったわ。
「いや、諦めねぇーーー! お、俺は死にたくないーーー! うおおおおーーーー!」
と、こんな感じで二十分程格闘していたが、奮闘も虚しくシェルターは砕け散り、それと同時に高エネルギーに耐え切れなくなった地獄界の空間が歪み、唯一死んでいなかった俺は次元の狭間へと吸い込まれて行くのであった。
いや、ある意味これは助かったのかもしれない。
なにせ次元の彼方へと飛ばされた事で神の攻撃が直撃せず、実質避難することができたのだから。
ただし、二度と元の世界には戻れないという条件つきで。
ああ、次の世界ではもうちょっと神様とか悪魔王とかがおとなしい世界に漂着するといいなあ。
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