寝てみる夢
めがふく
第1話 子供向け番組
幼き頃、私はインドア派でいつもテレビを見て過ごしていた。
私はその日、父と共に家の和室でテレビを見ていた。テレビ画面には当時の私がよく見ていた子供向け番組が映されており、軽快な音楽と共になんの動物かもよく分からない着ぐるみが楽しそうに踊っていた。
「画面の前のみんなも! 」と、元気に誘うその着ぐるみが、その時の私には恐ろしく見えた。
着ぐるみにしては細い手足は白く、所々皮がとろけている。顔に生気がなく目も虚ろで笑っているように見えなくもない。踊っているように見えた動きも小刻みに揺れ、震えている。
まるでゾンビのようだったと今にしては思う。しかし当時の私はそのようなホラー表現も知らず、ただただ恐ろしい不気味なものとしか表現出来なかった。
そんな恐ろしい生き物が、声だけは優しく穏やかに誘う。気づけば音楽も不協和音が鳴り響く。音に合わせてまたぐねぐねと動く。ぼとりと肉片が落ちる。生気のない瞳でこちらを見つめ、いくつもの誘う声がする。
私は泣きながら父に番組を変えて欲しいと縋り着いた。父は振り向きもせず何も言わず番組を変えた。
音楽がなり止み、僅かに安堵した私はゆっくりと画面を見つめた。
別の番組の音声と映像が流れる中、あの着ぐるみだけは画面の中央で踊り続けていた。
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