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 ――とは言え。


「いくら『イメージ』が良くて呪文が合っていたとしても、自然の力を上手く変換とか『火魔法』の様に自分の魔素量の関係で発動出来るかどうかが決まる事もあるのよね」

「それは……元々の才能も関係しているという事か?」

「ああ、そうじゃなくてね。その為に『基礎』も疎かにしちゃダメって話よ」

「……そうか」


 しかも、こうした『基礎』は積み重ねが大事なのか、やらなければ徐々に発動をした時の魔法の威力が弱くなっていく傾向がある。


 ――まぁ、そこら辺は問題ないでしょうけど。


 それは言ってしまえば「何にでも当てはまる話」であって、特に驚く話でもない。


 ――ただ、最初こそ「ん? なんか、調子が悪い?」って思う程度なんだけど。


 正直、魔法にも「体調の善し悪し」が関係してくる事がある。ただ、これが一ヶ月もすると目に見えて分かる程になる。


「まぁ、あなたの『基礎』のレベルは結構なモノだったからそれを続けるといいわ」

「そうか。ちなみに質問だが」

「?」

「あんたはそういうの……やるのか?」


 ふいに聞かれた質問に、私は「え、やるに決まっているでしょ?」と答える。


「基礎なくして応用が出来るワケないじゃない。それに、基礎ってちゃんとやらないと結果として目に見えるから」


 ちなみにコレは前世の記憶を取り戻してすぐに経験済みである。


 ――あの時は、本当に甘かったなぁ。


 そうして思い出されるのは実戦試験前に行われた『事前演習』での事だ。


 決して自分の力を過信していたワケではない。しかし、基礎を疎かにしていた事がたたり、危うく負けそうになってしまったのだ。


 ――まぁ、本番ではちゃんと立て直したけど。


「そうか。あんたも……ちゃんとしてんだな」


 ――ん?


「あんたも?」


 私が思わず尋ねると、シリウスはバツの悪そうな顔で「悪い、忘れてくれ」と返す。


「わっ、分かった」


 その表情があまりにも悲しそうで寂しそうで……私はそれ以上深く聞く事が出来なかった。


 ――まぁ、誰にだって言いたくない事はあるでしょうし。


 しかし、そこでふと気になった事があった。


「……」


 それは「シリウスに婚約者はいないのか」という事だ。


 ――普通「侯爵」くらいの立場で私と年が近ければいてもおかしくないはず。


 もちろん、アンディさんやシリウス本人からそういった話を聞いたワケではない。しかし、だからと言って私から言うのは下世話だろう。


 ――でも、婚約者の家に「遠縁」とは言え、異性がいると知ったら気が気じゃないはず。


 私はここに来てまだ二日しか経っていないが、婚約破棄もろもろの話は既に広まっていてもおかしくない上に、そんな相手が来る事を知れば乗り込んで来ても何らおかしくない。


 ――まさか「言っていない」とか?


 その可能性も否定は出来なかったが、それと同時に思い出されたのは……昨日見せてもらったシリウスの『四大魔法』だ。


「……」


 ――あの時。


 確かに私はシリウスの横ではなく少し距離を取って前にいた。


 しかし、私は国立の魔法学校を卒業している事もあり、自分で自分の身を守るくらいの事は出来る。

 だが、シリウスはまるで「人に当てない様にワザと調整した」のではないか……と昨日の夜、私にはそう思えていた。

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