誰にも言えない私の恋バナ
蒼天
恋愛相談
私は幼い頃から恋愛というものに興味がなかった。
同年代の子達は皆、やれ隣のクラスに居る誰々君のことが気になるだとか、やれ一つ上の学年に居る何々先輩のことが好きだとか、思春期の女の子らしいキラキラした会話でいつも盛り上がっている。
それに比べて私はと言うと、女の子同士で恋の話に花を咲かすことよりも、クラスの男の子達に混ざって公園でボールを追いかけ回すことの方が性に合っているようなガサツな女だ。恋愛話になんて縁もゆかりも無い。
それでも一応は私も女なので、たまには女の子同士のキラキラした会話に身を投じてみたりするのだけれど、私なんかには全くついていける話ではなかった。
ただ、彼女達の話を聞くこと自体は割りと好きだった。
好きな人の話をしている彼女達は皆、ほんのりと頬を赤く染めて、うるうるとした瞳を大きく見開かせて、とても艶やかで眩い微笑みを浮かべるのだ。
恋する女の子の姿は、同じ女である私の目から見ても可愛く映る。愛らしいその姿に思わず胸をときめかせてしまうくらいに。
中学生になって既に一年と半年が経つというのに、未だ恋愛の一つもしたことがない私にとって、彼女達の話は恋をすることの素晴らしさを擬似的に体験させてくれているようで、とても新鮮だった。
私が誰かに恋心を抱く姿なんて想像もつかないし、相変わらず恋愛に対しての興味も湧かないけれど、いつか私も彼女達のように素敵な恋が出来たら良いなと、そんな漠然とした思いだけは抱くようになっていた。
そんなある日のこと。
私はクラスの女の子から恋愛相談を持ち掛けられた。
恋愛未経験の私に恋愛相談なんて荷が重すぎる。相談する相手を間違えていると指摘したが、彼女は『私にしか出来ないことだから』と言って引き下がろうとしなかった。
彼女の気迫に根負けしてやむなく話を聞いてみると、どうやら、彼女が気になっているのは隣のクラスに居る男の子で、その男の子は私がよく遊んでいる男の子グループの一人と仲が良いらしい。
「なんとか仲良くなりたいんだけれど、隣のクラスだから接点が無くて……力になってくれないかな?」
縋り付くような目つきで私を見つめる彼女に、私は二つ返事でそれを引き受けた。初めはどんな相談を持ち掛けられるのかとヒヤヒヤしたが、そういうことならば私でも力になれそうだ。
要は、私が仲良くしている男の子グループの一人に協力を頼み、その子を通じて彼女と彼女の想い人との仲を取り持てば良いのだ。むしろこれは、男の子達に混ざってボールを追いかけ回している私にしか出来ないことだった。
私はすぐさま彼女を連れて、彼女の気になっている男の子と仲の良い男の子に協力を頼み込んだ。彼自身もとても気の良い子で、唐突に押し掛けたにも関わらず、私達からの相談に快く応じてくれた。
それから三人で話し合うこと、一週間。入念な計画を打ち立てた私達は彼女の恋に進展を迎えさせるべく、動き出した。
入念な計画とは言っても内容はとてもシンプルで、放課後に最寄りの駅にあるファストフード店で私達と男の子達が偶然を装って落ち合うだけなのだが。
当日になって急に彼女が恥ずかしがって「やっぱり辞めよう」と計画破棄を申し出たり、協力を頼んだ男の子が「報酬は勿論あるんだよな?」と詰め寄ってきて、何故か私の貴重なお小遣いがハンバーガーのセットに変わってしまったりと軽い悶着はあったが、計画自体は見事に成功し、彼女は無事、想い人の連絡先を手に入れるにまで至った。
「二人共、本当にありがとう!」
翌日、教室で彼女からお礼の言葉を言われた。
よほど嬉しかったのか、瞳を潤ませて飛び跳ねながら言う彼女の姿に、私も協力をしてくれた男の子も、得も言えない達成感に満ちた晴々とした笑顔を浮かべたのだ。
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