第二十三話

「あー全然思い付かない。参った。」

どうしたんですか先生?まさかスランプなんじゃないでしょうね?

「スランプ?スランプな訳ないじゃないか。」

だったらなんで頭を抱えてるんですか?

「今回の『COSMIC☆COMEDY』の話のネタが思い付かないんだよ。」

それスランプって言いません?

「言いませんよ!言ってたまりますか!だって、第二十四話の話のネタは、もう決まってるんだもん。第二十三話だけが浮かばないだけだもん。」

そんな可愛らしく言われても・・・・・・・・・だったら第二十四話を第二十三話に持ってくれば済む話じゃないですか。

「君は、なんも分かっとらんね。」

急に年を取りましたね。分かってないとは?

「だからさぁ。全体の流れっつうもんがあるだろ?内容的にかぶっちゃう話がある訳だよ。」

ふむふむ。

「なっ?」

いやちょっと話が中途半端で、まったく分かりませんよ先生。

「いい?僕的にはさぁ。例えば食べ物を題材にした話の次に、また食べ物を題材にした話とか。じいさんが主人公の話の次に、またじいさんが主人公の話とか。連続して話の背景を似せたくないって事だよ。」

なるほど。何となく分かりました。と言うよりも、先生そう言う全体の流れとか気にしていたんですね。

「当たり前だろ!どんだけちゃらんぽらんに見えてるんだよ!短編書いてるんだから、そう言うとこ一番気にしちゃいますよ。季節の変わり目に着る洋服ぐらい気にしちゃいますよ。」

大変ですね。

「大変だよ。大変だからさぁ。第二十三話を飛ばして、いきなり第二十四話ってのはどう?」

どう?ってさっきまであんな事を言ってた人の発言ですか?

「二十一、二十二、二十四。てな感じでさぁ。」

駄目に決まってるじゃないですか!

「バレないだろ?」

間違いなくバレますよ!それに、そんな事をしたら貴重な時間を割いて『COSMIC☆COMEDY』を読んで下さっている。読み手の方々に大変失礼ですよ。

「たいした数じゃないだろ?」

確かにたいした数ではないですよ!たいした数ではないですけど!それは失礼な事ですよ!

「君、意外とサラっとグサっと失礼な事を言うね。たいした数とかそんなん言うな!一人だろうが読んでくれている人がいる限り!俺は、書き続けるんだよ!!」

なんか私が言ったみたいになってません?まあでも、その意気ですよ先生。

「こう言うのどう?」

アイディアですか?

「とりあえず第二十三話は、抜かしておいてさぁ。そのうち浮かんだら書くって言うのは?」

何ですかそれ?

「だからね。第二十三話を空白にしといて、思い付いた時に書くんだよ。」

夏休みの宿題じゃないんですから、後回しにしてどうするんです。そもそもそんな事が許されると思ってるんですか!

「そんな怒るなって。ちょーっと言ってみただけじゃないのさ。」

まったく!どんだけ自由なんですか!

「君ねぇ。僕から自由を取ったらなんも残らないんだよ?こんな言葉聞いた事ある?」

どんな言葉ですか?

「天才とは、99%の努力と1%のひらめきである。」

なんかそんなような言葉聞いた事ありますね。先生もそうなんですか?

「先生?先生は違いますよ。先生の場合は、99%の自由と約1%のひらめきだな。」

努力して下さいよ!

「あとほんのちょぴっとの努力。」

わがままな女ですか!

「わがままな男です!」

わがままの部分も否定して下さいよ。なに乗っかっちゃってるんですか。

「じゃあ決まりだね。」

何ですか?その満面の笑みと親指は?私の知らない所でいったい何が決定してしまったのですか?

「空白でいこう。」

却下ですよ!

「えー思い付かないもーん。お金無いもーん。」

誰も飲みに行こうなんて誘ってませんよ。お金なんか使いませんから安心して下さい。その代わりに頭を使って下さい。

「君さぁ。さっきっからあーだこーだ言ってるけどさぁ。だったら自分が書いてみろよ!」

キレるとこおかしくないですか?『COSMIC☆COMEDY』は、先生の作品なんですよ?何を寝ぼけた事を言ってるんですか!

「寝言は、寝てから言え・・・・・・・・・か。」

そうですよ先生。頑張ってアイディアを捻り出して下さいよ。

「寝る。」

どこフィーチャーしちゃってるんですか!何を恐ろしい事言っちゃってくれてるんですか!そうじゃなっくって!

「分かってるよ。第二十三話だろ?一生懸命考えてますよ。」

お願いしますよ。

「あっ!!」

アイディア出ましたか!

「出たよ!出た!」

どんなお話ですか?

「これ。」

これ?

「これだよ。」

これって?

「そうだよ。これだよ。この手があったよ!」

いやいや先生。私には、さっぱり理解が出来ないんですが。これとは、いったい何の事なんですか?

「君とのこの会話自体を作品にしちゃうんだよ。」

ご冗談を。

「冗談なんかじゃない!なかなか斬新なアイディアだろ?」

斬新なアイディアと言うか、もはや裏話じゃないですか!小説じゃなくて単なる会話じゃないですか!

「しょうがないだろ?これしか思い付かなかったんだからさ。前にもこんな風な作品があったんだからいいじゃないか。」

あれは、割合が半分半分だったからいいんですよ。しかも、あれはちゃんと作品として成り立っているじゃないですか。これって全部じゃないですか。ストーリー性なんかまったくありませんよ?ゼロですよ?ゼロ!

「そこが逆にいいんじゃないか。全編を通して大スペクタクルじゃないか。」

逆の意味も大スペクタクルの意味もまったく分かりませんが?

「だから、第二十三話が出来るまでをドキュメンタリータッチでお送りするんだよ。」

大スペクタクルはいったいどこ行っちゃったんですか?ドキュメンタリーもなにも企画会議にすらなってないですよ。

「第二十三話のタイトルは、REALでいこう!」

もう私が何を言っても、輝いた目の先生を止める事は、出来ないんですね。でも先生。なぜタイトルがREALなんですか?ドキュメンタリーやノンフィクションの方がいいじゃないですか。REALじゃちょっと伝わりにくくないですか?

「ドキュメンタリーやノンフィクションでも良かったんだけどさぁ。なんかアルファベットにしとけば、若者の支持も得られそうじゃない。若者の支持も欲しいじゃない。」

そんな取って付けたような事を言って、ただ単に先生が格好付けたいだけじゃないんですか?

「それもある。」

否定して下さいよ。まあとりあえず第二十三話は、こんな作品でいいんですね?

「こんなって何だよ!これでも一生懸命考えたんだよ!それをこんなの一言で片付けるな!」

なんか立派風な事を言ってますけど、考えなどなく流れだけで作った話じゃないですか!

「バレたか。バレちゃっちゃーしょうがない。そうだよ。ちゃんとした話が思い付かなかったから、苦し紛れに出来ちゃった作品だよ。棚ぼただよ。棚ぼた。」

まあ、多少表現は間違っていますし、けして自慢出来る事じゃありませんけどね。

「あれだよ?意外と第二十三話が好きだって人がいるかもしんないよ?」

絶対いませんよ!だいたいこう言った作品って言うのは、百話記念だとか一周年記念だとか、もしくは番外編クラスの作品ですよ?第二十三話なんて中途半端な時に誰もやりませんよ。

「まさに伝説だな!」

そんなたいそうなもんじゃないですよ!恥ですよ!恥!

「人間恥じる事によって成長していくんだよ!」

どんだけポジティブシンキングなんですか!先生は今!無謀で失礼な事をやろうとしているんですよ!読み手の方々に申し訳ないと思って下さい!

「私は、物書きだよ?物書きの端くれだよ?申し訳ないと口で言うのは簡単だよ。誰でも出来る!私は、言葉じゃなく文章で表すのだよ!」

謝罪文でもお書きになるんですか?

「だから、第二十四話に期待してもらいたい!」

捨て石ですか!もはや第二十三話は、先生の中では捨て石なんですか!

「うるさい!第二十三話も愛すべき作品だよ!立派な作品だよ!何が悪い!この作品のどこがいけない!もう書いちゃう!タイトル書いちゃう!この覚悟は、誰にも止められない!誰も止める事など出来やしない!!さっ、タイトル書いちゃおーっと。」

分かりましたよ先生のその覚悟。私が何を言おうが、やっぱり第二十三話は、これでいくのですね。『COSMIC☆COMEDY』をお読みになって下さっている皆様。第二十三話がこのような作品になってしまった事を心より深くお詫び申し上げます。そして、これからも『COSMIC☆COMEDY』を末永くご愛読して下さる事を、心よりお願い申し上げます。


第二十三話

「REAL」


「書けたぁ。」

ご満悦じゃないですか先生。

「・・・・・・・・・・・・・・・。」

どうしたんですか先生?

「いやー、この手は二度も使えんぞ!と思って。」

御尤もですよ。

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