第十四話

「ねぇ魔人。」

「あははは。」

「ねぇ!」

「あははは。」

「ねぇってば!」

「ん?」

「ちょっと!」

「ん?」

「聞いてんの?」

「あははは。」

「ま・じ・ん!!」

「お・ん・な!!」

「テレビ見るのやめてこっち向きなさいよ!」

「ん?」

「ん?じゃない!あんたここに来て、三日間ずっと通販のテレビ番組なんか見てるけど、何がそんなに面白いわけ?」

「あははは。」

「ちょっと!人の話を聞きなさいよ!」

「プチン。」

「あー。いいとこだったのにー。」

「あのさぁ。あなた魔人なんでしょ?」

「そう!まじん!」

「はいはい。そんな自信満々にアピールしなくていいから。毎日、毎日、朝から夜までずーっと通販番組なんか見てないで、何か出来ないの?」

「?」

「魔人なんだからさぁ。魔人らしい事いろいろ出来んでしょ?そうだ!変身!例えば何かに変身するとか出来ないの?」

「できる。まじんだもん。かんたんかんたん。」

「うっそー!ちょっとやってみせてよ。うーん。じゃー、猫に変身して!」

「にゃー。」

「ちょっと。」

「つぎいぬ。わん。」

「魔人!」

「つぎくるま。ぶーん!ぷっぷー!」

「ま・じ・ん!!」

「お・ん・な!!」

「あんたねぇ。それってただ声出してるだけじゃない。変身じゃなくって、完成度のチョー低いモノマネじゃない!」

「だめ?」

「ダメに決まってるでしょ!だったらあんた、たくあんに変身してみなさいよ!たくあんに!」

「うーん・・・・・・・・・。」

「ほーらほーら、やれるもんならやってみなさいよ。たくあん。」

「うーん・・・・・・・・・。」

「どうしたの魔人?簡単なんでしょ?早く変身してみせてよ。それとも、ごめんなさいって謝る?嘘をついてごめんなさ」

「ボン!」

「何で出来るのよ!」

「ボン!」

「まじんできるっていった。うそつかない。」

「牛。」

「もー。」

「馬。」

「ひひーん。」

「たくあん。」

「ボン!」

「何でたくあんだけ変身すんのよ!」

「ボン!」

「まじんそれにしかへんしんできない。」

「その事実がびっくりよ!くだらないとこで、運を使っちゃったじゃない!何なの?魔人の好物がたくあんとかなの?」

「ちがう。まじんのこうぶつにんげん。」

「えっ?」

「にんげんのおんな。」

「!?」

「あははは。じょーだんじょーだん。」

「あんたが言うと冗談にならないのよ!ぜんっぜん!笑えないわよ!」

「うけたうけた!」

「うけてないわよ!むかつくわねぇ!」

「じゃー、てれびみてもいい?」

「ダーメ!なんかやってからにしなさい。変身がダメだからー。」

「だめじゃない。まじん、へんしんできた。」

「たくあんじゃない!あんなのに変身したとこで、何の役にも立たないじゃない!そうねぇ?魔法とか出来ないの?」

「できるできる。」

「それを早く言いなさいよ。あっ、でもちょっと待ってよ。また、しょーもない魔法なんじゃないでしょうねぇ?」

「ちがうちがう。まじん、まほうは、くらすでいちばんだった。」

「クラス?何やら興味をそそられるワードが出て来たけど、まぁその話は、今度でいいわ。今は、魔法よ。一番なら、チョー得意なんじゃない!」

「まかせろ。」

「なになに?炎を出したりとか?怪我を治したりとか?あー!まさかまさか、何か召喚出来ちゃったりするわけ?」

「おんな。まじんばかにしてもらっちゃーこまる。まじん、もーっとすごいことできちゃう。」

「えっ!何よ!何が出来ちゃうのよ!お金を増やしちゃうとか?」

「あのねー。」

「なになに?」

「えいとねー。」

「もー。勿体振ってないで教えなさいよ。このっこのっ。」

「じばく!」

「へー、じばくかぁ。やるねー魔人!自爆ね。それは、ちょっとすごいかも。えっ?自爆?」

「いくよー。」

「待って魔人!」

「なにおんな?」

「その自爆って、どのぐらいの威力があるの?」

「ほしなくなる。」

「星って?この星?地球の事?」

「そう。いくよー。」

「ちょ、ちょっと待って魔人!魔法いいや。やらなくってもいいや。」

「えんりょするな。」

「遠慮じゃないわよ!だいたい、ほら、そんな事したら魔人まで消えて無くなっちゃうじゃない。」

「へーきへーき。じばくっていっても、まじんがばくはつするんじゃなくて、まじんのまわりをばくはつさせるから、あんしんあんしん。それにまじん、ばりあでたすかる。しんぱいしなくていい。」

「何よそれ!自爆じゃなくって、他爆じゃない!それに!魔人は、助かるかもしれないけど、あたしが助からないじゃない!何が安心よ!」

「だったらおんなも、ばりあのなかにいれてやる。」

「いいわよ。あたしだけ生き残ったって、楽しくないわよ。そりゃー、大地震が来てくれないかなぁとか、宇宙人が攻めて来ないかなぁとか、一回この世界がリセットされればいいのにって考えた事あるわよ。もちろんあたしは、生き残るって設定でね。でも、実際にその状況になったらすっごい困るわけよ。だから、他爆しなくっていいの。」

「わがままだなぁ。」

「わがままでいいわよ!あたしのわがままで地球が救われたなら、全人類があたしに感謝すべきよ。」

「じゃー、みていい?」

「ダメだって言ってるじゃない。」

「えー。」

「それより、聞いてなかったけどさぁ。魔人は、何でここに来たの?」

「たまたま。」

「たまたまで洗濯しようと思って開けたら中にいないでよね!びっくりするじゃない!ってか、びっくりしたわよ!何なの?あたしの洗濯機と魔人のいる世界が繋がってるわけ?」

「ボン!」

「どのタイミングでたくあんに変身してんのよ!」

「ボン!」

「何なのよ。そうだ!魔人のいた世界について話してよ。やっぱりあれ?大魔王がいたりするわけ?」

「あははは。」

「何で笑うのよ。」

「あははは。おんな、てれびのみすぎ、そんなのいないいない。」

「そうなんだぁ。ぜーったいにいると思ったんだけどなぁ。大魔王。」

「だいまじんがいる。」

「一緒じゃない!大魔王だろうが大魔神だろうが、同じじゃない!」

「ちがうちがう。だいまおうとだいまじん。まーったくちがう!」

「何が違うのよ!」

「それきいちゃう?」

「聞いちゃうわよ。」

「これ、はなすとながくなるけどいい?」

「どれくらい?」

「まるふつか。」

「やめて。」

「ざんねん。」

「そんなどーでもいい話を丸二日もされたら、たまったもんじゃないわよ。大魔王だろうが大魔神だろうが、あたしには、どっちでもいいわよ。」

「よくない!やっぱりはなす!そもそもだい」

「分かったわよ!大魔神でしょ!大魔王じゃなくって、大魔神なんでしょ!ぜんっぜん!違うわ!」

「そう。わかってもらえてうれしい。」

「はぁー、疲れた。魔人と話すと疲れるわ。あんたこっそり、あたしの生気とかを吸い取ったりしてんじゃないの?」

「ばれた?」

「何してんのよ!!」

「あははは。じょーだんじょーだん。おんな、またひっかかった。」

「腹立つー。うっすら引っ掛かってる自分にも腹立つわ。」

「あははは。」

「笑うな!まったくもう!ところで、魔人のお父さんて何やってるの?」

「まじん。」

「知ってるわよ!」

「おんな!とーちゃんのことしってるのか!」

「違う違う。そう言う意味じゃなくって、まじ」

「ピーンポーン!」

「はーい。」

「はーい。」

「あんたは、返事しなくっていいの。ちょっと待ってなさいよ。戻って来たらお父さんの話の続きするんだからそのまま座ってなさいよ。テレビ見ちゃダメだからね。」

「わかってる。」

「タッタッタッタッタッ。」

「おんないった。いまのうちにてれびみよ。」

「まじーん!!」

「みてないよー!!」

「タッタッタッタッタッ!」

「注文したわね魔人?」

「へ?」

「これよ!これ電話で注文したでしょ!」

「だんぼーる?」

「ただのダンボールじゃないわよ。聞いて驚きなさい!なんと中には!チョー便利調理器具6点セット!プラスまな板が2枚!も入ってるのよ!」

「やったー!」

「やったー!じゃない!」

「わーい!」

「わーい!じゃない!」

「ほんとにきた!」

「来るわよ!来るに決まってるでしょ!そう言うシステムなんだから!」

「うれしー!」

「嬉しくなーい!」

「はやくあけよ。」

「ふっふっふっ。」

「どうしたおんな?なんでわらう?わかった!おんなもうれしいんだ!」

「魔人もまだまだ甘いわね。そっちが勝手に通販の電話注文を使うなら、こっちにも作戦があるわ!」

「?」

「ふっふっふっ。せいぜい今の内に別れを惜しんどくといいわ。」

「おんな、ちょっとこわい。」

「いい?こんなもんは!すぐに!早急に!即時!即刻!すぐさま返品よ!!」

「ピーンポーン!」

「・・・・・・・・・。」

「・・・・・・・・・。」

「ま・じ・ん?」

「お・ん・な?」

「まさか、他にも注文しちゃってないわよね?」

「しちゃった。」

「いっぱいしちゃってないわよね?」

「いっぱいいっぱいしちゃった。」

「そう。しちゃったの。そっかぁ。しちゃったのかぁ。そうだよねぇ。しちゃうよねぇ。見てると欲しくなっちゃうもんねぇ。」

「そうそう。」

「あははは。」

「あははは。」

「バカ魔人!!」

「ばかいらない。ただのまじんでいい。」


第十四話

「女と魔人」

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