ななから

中田 浩也

プロローグ

「キャーーーーーッ」


 草木も眠る丑三つ時。闇夜を切り裂くような叫び声に俺は飛び起きた。


「な、なんだ!?」


 一体何が起きたというのだ。俺は自分が寝ていた物置のような部屋から廊下に出た。そして様子をうかがいながら真っ暗な廊下を叫び声がした方にゆっくりと歩いていく。

 あの声はたぶん玉本さんの声だ。彼女の身に何かあったのだろうか?心拍数が上がり足がガクガク震える。なかなか動かない足をやっと動かし廊下の突き当りまで来ると、右奥の部屋から少し明かりが見えた。玉本さんたちが寝ている部屋だ。緊張が走る。俺は心の準備が整わないまま玉本さんたちの部屋の前まで歩みを進め、少しだけ開いているドアをノックする。心なしか獣のようなにおいがする。


「玉本さん……。開けますよ、いいですか?」


 返事は無い。俺はドアノブに手をかけると、恐る恐るそっとドアを開けた。


「ギャーーーーーッ」


 俺は目に飛び込んできた光景に思わず叫んでしまった。


「なっ、なんじゃこりゃー!!」



 俺はこのありえない光景を生涯忘れることはないだろう。しかしこれはこれから起こる奇々怪々、摩訶不思議……な出来事の序章にすぎなかったのである。








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