クリーチャーゲート〜『異世界動物研究部』ぼっちな僕の誰も知らない放課後活動〜
七草疾風
EP.1:劇的で痛烈な非日常
01 高校デビューに失敗した挙句、変人に絡まれる
「茶髪に染めて!!ワックスで整えて!!ピアスもつけて!!今日から始まる高校デビュー!!僕は陰キャを脱却する!!」
遂に始まる新学期!僕はこの入学初日から最ッ高にクールなスタートダッシュを決め、一躍クラスで一番イケてる男になると誓った!
「ぼくっ、いや、『俺、
うーん、もっとエッジを効かせて、低い声での自己紹介がいいかなぁ?いや攻め過ぎても引かれるだけだしこんくらいが良い塩梅かな。
顔を洗って、タオルで拭いて、制汗スプレーで消臭したら身支度完了。
「よし、自己紹介イメトレ完璧。胸を張っていこう。僕なら出来るって」
小学校は友達一人もできなかった。中学校はみんなから酷い扱いをうけてきた。今度こそ、この高校でこそ、充実した学校生活をおくってみせる。僕はそう、決めたんだ。
「うおおお!!ファイトー!!」
「髪の毛染めるな、ワックスつけるな、第一ボタンあけるな、イヤーカフ付けるな、それ全部校則違反」
「……」
「高校舐めんな。今日は初日だから許すが今度から反省文」
「はいっ、すみません」
現実ってクソだよね。リアルってクソだよね。
結果から言うと僕の高校デビューはすごい勢いで失敗した。
入学式とか周りみんな意外と真面目で僕だけが浮いてた。いまこの通り指導の先生にめっちゃ説教されたし。
ていうか何この先生。赤ジャージ竹刀持ち顔ゴリラって。漫画の体育教師かな?
あぁ……こうなるってわかってたらキッチリとやってたのに。
「……ねぇみて、あの人」
「初日から怒られててやばいね」
「どこの中学の人なんだろう?」
「わかんない。みんな知らないって」
「関わり損でしょ、あーいうの」
あの、すみません。そこの女子男子の方々?そのヒソヒソ声全部聞こえてるっていうか。やばい泣きそう。
せめて笑い飛ばしてくれよ!!この惨めな姿をネタにしてくれた方がまだ良かったよ!!ナチュラルにドン引きされたら僕もう立場ないよ!!
「こんな筈じゃ……こんな筈じゃ……穴があったら入りたい……そのままどっか違う世界に行ってしまいたい」
最悪のスタートダッシュを切った。恥ずかしすぎて異世界転移でもしてどこかへ消えたい気持ちだ。
────ここは私立西鷲園高等学校。略して鷲校。ワシのマークにど真ん中に"西"と書かれた、なんというか、こう物凄くダサい校章が目印。
所謂、自称進学校。
はっきり言うと、校内が小綺麗な所ぐらいしか褒める要素ない。僕にもっと学力があればこんな滑り止め校には行ってないさ。
◆◆◆◆
僕は中学卒業と同時に引っ越してきた。だから同じ中学の同級生はこの高校にはいない。
昔の惨めな自分を知ってる人がいないなら、生まれ変わるチャンスだと思ったのに。実際は……。
「周りは元中仲間でコミュニティが出来上がってる……僕、完全に孤立してるじゃん。ぼっちじゃん」
周りから散々酷いことされた中学よりマシだが、これじゃ小学校に逆戻り。人は変わらないってこういうことを言うのかな?
萎えた。凄い萎えた。もう高校生活実質終わった。帰宅の道がこんなに長くて怠いと思ったのはいつぶりか。
「────ねぇ、そこの茶髪ボーイ」
「うぇ?なんですか?」
そんなことを考えてたら、後ろから声をかけられた。高い声、女の子の声だった。僕は今とんでもなく不機嫌だ。なんかもう全部がムカつくが、なんとか抑えつつ、後ろを振り返って声の主と対面した。
「やあ、初日早々お説教されて災難だねぇ」
そこには、安っぽい星形サングラスをした、アホ丸出しの変人不審者としか言いようがない女子生徒が立っていた。
おまわりさんコイツです。僕は咄嗟にスマホを出して1と1と0番を押そうとしたが手で遮ってこう言ってきた。
「ウェイ!ウェイ!通報しないでくれよ、ほらこの校章みて!キミと同じ学校だよ」
「ワシマークに西……確かに僕と同じだ」
自分の通う高校に、こんな変な奴がいたなんて、一緒にされたくないっていう一抹の羞恥心を感じるけどひとまず忘れよう。重要なのは如何にしてコイツとのお話を打ち切るかだ。
ほらみて、周りの目が不審そうにこちらを!
「あの僕急いでるんで、それじゃ」
「おいおい待てよボーイ。キミはこれから帰宅するだけで急ぎの用事はないだろう?」
肩に手を置かれて引き留める。畜生、今気がついたけどなんかこの女、背が高いんだが?やめてくれ!みじめになるだろ!
「なんだよ知ったような口聞きやがって。ぼっ、俺だってありますよ、家でやることが」
「例えば?」
「その……べんきょー?」
そう言ったらニマニマと笑われた。目が隠れてるので余計口元のにやけ具合が目立ってイラつく。はいはいわかりましたよ。見透かしてるんでしょ?僕が暇人ってことを。はいはい。
「わかった話だけ聞くよ。要件言ってください」
そう振ると、変人さんは笑いながらこう答えた。
「にひひっ、部活動勧誘。生物部に興味ありませんかぁ?」
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