3#僕は『これ』に恋してる。

 僕の名前は、『アンディー』。ラグロールという品種の猫さ。


 僕は訳あって、野良になった。

 ラグドールなのに、

 由緒あるブランド猫なのに、

 ブリーダー出身なのに、


 何で僕は人間に捨てられたのか?まだ解らない。


 この悔しさ、どの猫にも解るまい。


 かつて僕が飼われていた家には、既に僕とは違う別のラグドール猫が?

 しかも、僕と同じ雄猫・・・


 「アンディー!ご飯よー!!今日は特製のキャットフードよ!!」


 ガーーーーン!!


 嫉妬した。悔しかった。

 あのラグドールは僕と同じ『アンディ』の名前を貰って、本来僕が居る筈の家で悠々と暮らしている!?


 じゃあ、あの飼い主にとって僕はいったい何なんだ?!


 飼い主は僕の何処が気に食わねぇんだ?!


 僕は『野良』になった。

 飼い主に不可解のまま捨てられ、『外猫』になった。


 僕の首には首輪が無くなったし、身体にマイクロチップさえも埋め込まれていない。


 僕かもうこのまま飢えて死ぬか、猫捕りに狙われるか、何処かで車に轢かれて死ぬかしかないんだ・・・


 絶望・・・!!


 本当に絶望・・・!!


 僕はトボトボあるいた。

 危険な外に放りなげられて、恐々と怯えて歩き続けた。


 

 トボトボトボトボトボトボ・・・



 僕は何処まで歩き続けただろう。


 ふと、街の建物のショーウィンドウを見る。


 そのショーウィンドウ中で、僕を見詰めている『猫』が居た。

 

 「『アンディ』・・・『アンディ』と呼ばれた野良ちゃん・・・」


 僕はその『猫』に呼ばれた気がして振り向いた。


 その『猫』は、『猫』の形をしたマイラー風船だった。


 風船・・・


 風船・・・?!


 風船だ!!


 この店舗のショーウィンドウに、カラフルなゴム風船やいろんな形のマイラー風船がいっぱい飾られた。


 ここは、いろんな風船を売っているバルーンショップだったのだ。


 「野良ちゃん・・・私、ずっとこのショーウィンドウで貴方を待ってたわ。」


 え?僕を?!


 僕はこの『猫』の形の風船が、段々美しい雌の猫に見えてきて胸が高まった。



 ドキドキドキドキドキドキ・・・



 まさか、これって・・・



 恋?


 僕は、風船の猫に恋をしてしまった。


 それからというもの、1日に1回はこのバルーンショップのショーウィンドウに寄っては、僕の愛する風船の猫と世間話をしたり、猫の風船に周りに飾られた風船の『仲間』の紹介をしてくれたり、


 毎日があの風船の猫と出逢うのが、楽しみになった。


 ところが、


 「あれっ!?あの娘は?!」


 ある日のこと、僕の恋する風船の猫がショーウィンドウに居ない事に気付いた。


 ショーウィンドウに飾られた風船も様変わりしていた。


 「どうして?!何処に行っちゃったんだ?!僕のフィアンセ!?」


 もう僕はあの娘・・・猫の風船と付き合って、結婚して結ばれてたかった位恋におちていたのに・・・


 「おおーい!!僕のフィアンセ!!こっちだよーーー!!」


 僕は、ガリガリとバルーンショップの入り口を爪をたてて開けようも、その日はバルーンショップが閉じている日だったので開く事は無かった。


 「僕の・・・僕の・・・フィアンセ・・・」


 それからも、僕はこのバルーンショップにちょくちょく出掛けてショーウィンドウを覗いて、またあの僕のフィアンセ・・・風船の猫がまたここにやって来るのを待ち続けた。


 僕が街を歩くと、他の雌の猫が寄って来るけど僕の心から愛するのは、

 あの風船の猫しかないんだ・・・!!


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