第一話 懐かしい一時

エクレシアをお嬢様の場所に案内した後、私は紅茶を出すために厨房に来ていた。

ポットに「生活系統」の「温化魔法」温めておき、鍋でお湯を沸かします。


沸騰したらポットに茶葉を入れて、からお湯を注ぐ。ポットに蓋をして暫く蒸らしておきます。

しっかり蒸らしたら「生活系統」の「分離魔法」を使い茶葉を取り除きます。


最後に「生活系統」の「融合魔法」を使って紅茶をしっかり混ぜます。

これで完成したのでティーカップ等と共にお盆に乗せておく。

そしたら先日作っておいたクッキーをお皿に盛る。


お盆がもう空いてないのでクッキーは「生活系統」の「物体移動魔法」で浮かせながら持っていく事にする。


___________________

エレネス嬢に件の研究資料が【魔法議会】に提出できる事を話した後に、私はエレネス嬢と魔法について議論していた。


彼女が何故有名でないのかと不思議に思うほどには魔法についてしっかりと知っていて、とても有意義な時間を過ごしていた。

そこに、


「失礼します。紅茶をお持ち致しました。」


と、フレイアがそう言い執務室の扉を叩いてから、初めて私たちの話は終わった。


「どうぞ。」

「失礼します。」


エレネス嬢がフレイアの対応をしている間に私はさっき話していた事について考えていた。


エレネス嬢から聞いた話と研究資料を総括すると、魔法を使えない人間でも魔力は持っている、そういう人が魔法を使えるようになるにはどうすれば良いか、という話だった。


確かに全員魔力は少なからず持っているが、使えない人間の方が多い。そういう人の為に魔道用具という物もあるが、それを使わず、純粋に魔法を使えるようになるには、という事だね。


いやぁ、にしても面白い。私たちが魔法を使う時は無意識に魔力を形成していると彼女は言っていたが、言われて初めてその事に気付いたよ。気付いたら使えて今まで過ごしてきたからね。


と、フレイアが私にも紅茶を入れてくれたので感謝を伝える。


「ありがとうね。」

「いいえ。それでは失礼致します。」


そうしてフレイアが退出していく。

そこで私たちは紅茶を口に含む。


あぁ、懐かしいな。フレイアと一緒にいた時は、なんやかんや言いながらも紅茶をいれたり、食事を作ってくれてたな。

自分は自分で忙しいのに、しっかり私のことを気にかけてくれて…


「どうかされましたか?」


昔の事を思い出しながら空中を見つめているとエレネス嬢がそう話しかけてきた。


「いえ。なんでもありませんよ。」


私はそう返事を返しながら、また紅茶を口にふくむのだった。


___________________「なんでそうなった…」


私が部屋でそうため息をつくのには理由があった。


夕食の時間になり、お嬢様達を呼びに行くと、まだ2人での話が続いており、私が呼びかけるまでずっと話していた。


話が終わり食堂に案内していた。そして、お嬢様達が席に着き、私が料理を運んで、食事をする。それまでは良かった。


問題はお嬢様が先に食堂から出ていった後、エクレシアから突然、


「フレイア、今日寝る時は君の部屋に行くから。」


そう言われたのだ。その時はまた冗談を…と思っていたのだが、現在仕事を終えて、お風呂も済ませて部屋に戻って来てエクレシアが居た。これが、私がため息をついている理由だ。


「どうしたの?フレイア。そんなつれない顔をして。」

「いや、貴女が居るからなんですけど…」


一体何を。それ以外になにがあると思っているんだこの魔法使いは。


「いやいや。しっかりと夕食の後に伝えたじゃないか。部屋に来るってね。」

「貴女には客間が貸されているのですけれど?」


そう、問題はエクレシアにはしっかりと客間が貸されているということだ。わざわざ私の部屋に来ずとも、話をするなら呼び出せば良いのに…


お嬢様に見られたらまたこの前の疑問が深まってしまう。そう思っていると彼女はこう答えてきた。


「いやいや、久しぶりに一緒に寝ようかなと思ってね。」

「え?」


彼女のその答えに私が戸惑っていると、彼女は部屋の電気を消し、既にベッドに入っていた。


「ほらフレイア、早く寝ようじゃないか。」


既にベッドに入られては追い出すのも一苦労だな…私は諦めてベッドに入る。

すると、彼女は話しかけてくる。


「いやー。こうするのも久しぶりだね。」

「…そうですね。」


彼女の言葉に、私は適当に相槌をうつ。


「………あの日、君がいつものように出てから、予定日を過ぎても帰ってこなかった。他の騎士団員は帰ってきたのに、君だけは居なかった。」


私が眠気でウトウトとしていると、彼女は語り始めた。既に限界が来た私は、彼女の言葉を聞きながら眠りに着く。


「何かあったと思った私は探し回り、そしてボロボロで気を失って…君を見つけた。そ…は既に宰相………ていたから、

封印す……なかった…」

「………」


「君は………直前の一瞬…目を覚……。その時、伝えそびれて……また…一緒に…」

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