第九話 今度こそ昇格試験…ん?

本日も良い天気です。

それはさておき、本日も冒険者ギルドに来ている。いつもの受付嬢さんに話しかけると、


「フレニカさん、お待ちしていました。」


そう言われた。あれ?私はなにかしたのだろうか?考えてみるが何も分からないが、


「ギルド本部に申請して正式にフレニカさんのSランク昇格試験を行うことになりました。」

「昇格試験ですか!……え?Sランク?」


え?確か私は今Cランクだったような気がするのだが、それに最近は何かをした覚えがないし…


「あの…」

「明日の午後に試験を行うのでしっかりと来てくださいね。」

「あっはい。」


圧があって何か言うことが出来なかった。

とりあえず冒険者ギルドを出て屋敷へ帰る。

あれ?冒険者ギルドに来た意味って…


___________________現在は夕食の準備をしている。

最近は姉様に任せることが多かったので久しぶりに作ることにした。

ちなみに姉様は今からギルドに行っている。


何故だろう、久々に料理する気がするな…2週間位しか姉様に任せてない筈なんだけどな。とりあえず何を作ろうか。

前回のランク昇格ではお嬢様の好きなフルーツタルトを作った筈…久々にタルトを出しますか。後は先日の狼の肉を使ってハンバーグを作る。


狼の報酬の1部を狼のまま貰ったのだ。

先に少し焼いて食べたが、この狼の肉は筋が多くて臭みが強いのだ。

しっかり筋を切るように挽肉にしていく。気分的に野菜を刻んで挽肉に混ぜる。


ひき肉を手のひら大の大きさで手に取り、形を整えてからしっかりと空気を抜く。

そして「空間系統」の「固定魔法」を使い、肉汁を肉の中から出ないようにする。

よし、これで準備は出来たので焼き始める。


まずフライパンを熱して屋敷で採れたオリーブから作った自家製オイルをひく。そして十分熱された所で中火にして肉を焼き始める。片面を焼き始め、良い色になったら直ぐ裏返す。そして両面に焼き色が付いたところで「生活系統」の「物体移動魔法」を使い少し浮かす。そして「空間系統」の「固定魔法」を使いその場に固定する。


こうすることで肉に焦げ目を付けることが無くしっかりと中まで火の通った完璧なハンバーグが完成する。

…待てよ?表面だけ「時空系統」の「固定魔法」で固定してたら焼き色が焦げずに魔法1回で焼けたのでは?


………いや、「時空系統」は「空間系統」の上位で使いにくいし魔力消費が酷いから。今まで気にしてなかった?

…魔力、1%も減ってないし…


よし、私は何も気付かなかった。

そうだ、焼き上がるまでにソースを作ろう。おろした生姜にトマトソース、塩胡椒やみりん、そして刻んだ玉ねぎ等などを入れて「生活系統」の「融合魔法」を使う。

これでソースは完成した。

さてと、作ってる間に1個焼きあがったし残りも焼きますか。


___________________

「おや?今日は貴女が作ったんですか?」


夕方になりお嬢様に食事を出していると、お嬢様がハンバーグを口にした瞬間そう言葉をあげた。


「はい。本日からは食事担当が私に変わります。」

「ふふっ、そうですか。」


お嬢様が突然笑った。何か不備があったのだろうか?不安になって聞いてみる。


「何かありましたでしょうか?」

「いえ。ただ、貴女の作る食事の方が好きだな、と思いまして。」

「…ありがとうございます。」


…良かった。お嬢様は私の雇い主、機嫌を損ねて解雇でもされたら私は住む場所が無くなってしまう。

しかし私の食事の方が好き、か。

とても嬉しいことを言ってくれますね。


___________________

翌日の朝、試験まではまだ数時間あるので屋敷の掃除をする。「時空系統」の「状態保存魔法」がまだ聞いてるので綺麗な状態なのだが、やることが無いと気付けば掃除してしまう。魔物狩りとかはあまり好みでは無いですし…


そうして屋敷を回っていると気付けば昼前に。お嬢様に食事を作らねば。


___________________

昼を過ぎて試験の時間になるのでギルドまで行く。あっ、着替え忘れてメイド服のまま来ちゃった…まぁ、めんどくさいし良いか。


ギルドに着いたので入るとギルドの中にある酒場で昼前から呑んでいる人達がザワザワしだす。

…あぁ、メイド服だからか。

まぁ、関係無いですし。そのまま受付へ向かおうとすると…


「おいおい、そこのメイドさんよぉ…」


といい、顔の赤い男が絡んできた。

うわ、凄くお酒臭い。

不快な気持ちになったので無視して動くと、


「無視してんじゃねえよ!詫びに酌をしろよ!」


とか訳の分からないことを言って道をふさいできた。どうしようか迷っていると急に男が掴みかかってくる。


「さっさと来いよ!」


これは流石にまずいな…よし、怪我させないように気絶させるか。一応一言断りを入れてから…


「失礼します。」

「なっ、」


男は体を逆さにして頭を打って気絶した。

ふふふ、これは私が一般人相手に開発した技、「空間系統」の「転移魔法」によって宙に浮かんだ相手の体を「防武流」(ほうぶりゅう)という武道の技の「浮かし投げ」を使って頭だけ地面に打ち体は転がるという物だ。


さて、面倒な男も気絶させたので受付へ向かい、いつもの受付嬢さんに話しかける。


「すいません。試験を受けに来たのですが…」

「………え?もしかして貴女はフレニカさんですか?」


ん?妙だな、私の事が分からないのか?

あっそうか、メイド服着てるから分からないのか。しかもこれでさっき絡まれたんだった。


「はい。フレニカです。一応ギルド証も提示しますね。」

「…はい、確認できました。あの、メイド、なんですか?」

「メイドですね。一応、エレネス・フォン・クレヴィア様の。」


いやぁ、メイドということを言ってなかったなぁ。しっかり着替えた方が良かったか?いや、1回来たんだしこの際次からもメイド服のまま来よう。着替える手間が省けるし。


「…そうですね、とりあえず試験を受けてもらいますか…」

「分かりました。」


そうしてギルドの裏手にある訓練場に案内される。ひろいなぁ。的が沢山あるし。


「試験内容の説明ですが、今回はSランク冒険者の方2名と模擬戦をしてもらいます。」

「分かりました。」

「その後は貴女の持っている最大級の技を的に放って頂きます。手段は何でも良いです。それ次第では模擬戦の結果が悪くても合格になるので。」


「了解です。ところで、試験相手とはだれですか?」

「そうですね。1名は貴女の知ってる【豪嵐の銀猫】様です。そしてもう1人は【純蜃じゅんしんの盾】の2つ名をもつ方です。」


「じゅんしんの盾?一体どんな方なんですか?」

「詳しくは言えませんが、「水系統」と「風系統」の魔法を使うタンクの方です。」


「成程、ありがとうございます。それで、試験はいつ頃始まるのでしょうか?」

「そうですね、そろそろ彼らが来ますので、彼らが来たら始めましょうか。」


ふむ。2人と戦うのか。対策をしなきゃ行けないかな。猫の子…ソフィアは前見た様子からスピードタイプだと思うからそれに対応すれば何とかいけそうか?いや、豪嵐と言うのだから魔法も警戒しなければいけないか。


それはともかく、【純蜃の盾】のほうが問題だ。「風系統」と「水系統」を使うタンクということは、あまり硬さに特化している訳では無いのか?いや、分からないな。

風と水…2つで出来ること、そして2つ名の意味…いや、わからん。取り敢えず特攻すれば良いでしょ。


私が色々と考えていると、2つの人影が近づいてきた。それは、


「フレニカさん。先日ぶりですね。」


2人の時とは雰囲気の違うソフィアと…


「初めまして、フレニカさん。私はエルバート・ルベリアと申します。周りからは【純蜃の盾】と呼ばれています。」


もう1人のSランク冒険者、【純蜃の盾】という男だった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る