ダンジョン攻略①
では早速ダンジョン攻略……の前に地図を買いに行くことにしました。考えて見たら買わないで初見攻略!ってのもあるかなと思ったけど、女子3人から批判されましたのでね。だって地図無い方が楽しそうじゃん!
「ここ?魔法道具屋」
「そうだ。私の行きつけのな」
今いるのは町の外れのお店の前。普通の道具店でも売っているらしいけど、行きつけに行きたいというステラの希望でこちらです……慣れてる店員のとこに行きたいんだろうな……
それにしてもボロい。よく言えば味があるんだけど。店頭の看板と屋根の風見鶏はキイキイと音を立てており今にも外れそうだし、扉の緑色塗装は剥がれ始めている。
「シーニャはここ知ってた?」
「いえ、知らなかったです。もっと町の中心部にある所の方が人気なので……」
今にも潰れそうなこの店の方が良いというステラのコミュ障精神はわかるから否定はしないけど、正直大きい方を見てみたい。横のリリカを見ると少し引いている。
「じゃあ入るぞ」
ステラが先陣を切って店に入る。着いていくしかないか。
「えっ!?なんだこれ!?」
広さがおかしい。店の中に入りまず最初に思ったこと。見渡す限りの陳列棚。大型のホームセンターに入ったようだ。外から見た店の大きさと違いすぎる。
「なんなのよここ」
「凄いです!」
「言っただろうここが良いって」
得意げな顔で腰に手を当てる。まあお前が凄いんじゃないけどな。
「誰ぇ?お客さん?」
店の奥から女性が現れる。銀色のロングヘアのその女性は、いかにも魔女というとんがり帽子を被っている。身長はかなり高い。帽子も相まってだろうが、それを抜きにしても180cmはあるんじゃないだろうか。
「あれ?ステラちゃん?お久しぶりねぇ」
「お久しぶりです師匠」
「「「師匠!?」」さん!?」
ステラの師匠っていうともっとエキセントリックな奴じゃ無いのか?君は実験台にしよう!!とか言って速攻で誘拐されるイメージがあるんだけど。
おっとりしているお姉様っていう様子のこの方からはそんな様子は見られない。
「もっと人目につくようにした方が良いですよ。お客さん誰もいないじゃ無いですか」
「だってお仕事したく無いんだもの。人避けの魔法をかけているのが丁度いいのよぉ」
だからこんな凄い店なのに人がいないのか。思うんだけどさ、こういう店ってフィクションによくあるんだけど、なんで潰れないんだろう。
「あらあら、じゃああなた達がステラちゃんのパーティねぇ。それで君が……」
「あ、はい。チヒロです」
大人の女性っていうのだろうか。こんなフェロモンバリバリな人と話すのは初めてだ。目が見れない。ただちょっと下を見るとその……巨乳が……
「ふぅん、なるほどぉ。この体を使ったのね?」
屈んだお師匠さんは、ぺたぺたと俺の体を手で触る。なんかめっちゃ恥ずかしいんだけど。
「良いのね?ステラちゃん」
「はい」
良い?何がだ?
「よっこいしょ。それで、あなた達が他のパーティメンバーねぇ?」
「リリカよ」
「シーニャと申します」
「リリカちゃんとシーニャちゃんね。それにチヒロちゃん。桃美族と獣人、それにゴーレムのパーティなんて凄いわねぇ。いつもステラちゃんがお世話になってます」
俺達に、礼儀正しく頭を下げる。まともな人だ……
「私はマーガレット。しがない魔法使いよ」
「マーガレット!?【空間】のアークウィザード、マーガレット=スレッターさんですか!?」
「有名なのか?」
「有名も何も、組合の登録とかのシステム魔法を全部構築した本物の偉人よ……能力は【空間】。この店も能力で広くしていたのね。それがなんでこんな辺境の町にいるのよ……」
登録の魔法ってギルドカードとかも含めてか?おいおいおいそんな凄い人だったのかよ。店に客がいなくても成り立つのは権利による不労所得みたいなもんなのだろうか。
「そんな大したものじゃ無いわよぉ。それに、私はそれを作ったら疲れちゃってねぇ。隠居よ隠居。ステラちゃんとはたまたま知り合っただけよぉ」
優しい微笑みを浮かべながら話す。貫禄は正直無いが、その笑みを崩さない姿は一種の余裕なのだろうか。
「それはそうと、今回はどうしたのかしらぁ?」
「ハジメノ迷宮の地図を買いたくて来ました」
「あらあら、それだけなら私のところじゃなくてもいいじゃない。さてはまだ人に話しかけるのが苦手なのねぇ?」
それを言われて恥ずかしそうにしている。まあ、友達の前でお母さんに注意されているようなもんだろう。
「まあ良いわよ、今持ってくるわねぇ」
「ありがとうございます」
マーガレットさん、振り返った背中も結構セクシーな服なんだな……いや、そうじゃなくて。
***
ハジメノ迷宮の入り口に着きました。荒野の中にぽっかりと空いた、ただの洞窟にしか見えないそれの前には町の入り口にいるような番をしている人がいる。
「おう、ダンジョン攻略か?」
「あ、そうです」
「なるほどなるほど、じゃ、ギルドカードを見せてくれ」
あ、入る為にはギルドカード必要なのね。そりゃそうか。勝手に入る人出てきたらマズいもんな。
「ギルドカード見せるんで金貨30枚いただけます?」
「何言ってんだお嬢ちゃん」
「何言ってんだお前」
シーニャさん→シーニャ→お前⇦new!
「はい、金貨30枚。これで良いんでしょ」
「はい!!!!これがギルドカードです!!!!!」
「お前らちょっと待ったツッコミが追いつかねえ」
視界の端では知らない人に話しかけられずに静かにしているステラがいる。こいつら初期に比べてキャラ崩れまくって無い?まだラノベだったら10話ちょいだぞ?【転天】はそれくらいで結構話進んでたのに俺らときたら……
そんな訳でダンジョン第1階層。地図によるとここには敵がいないらしい。ま、エントランスだろう。灯りも無い、陽の光も入らないはずなのにボンヤリと明るい。洞窟内部の岩が光を放っているのだろうか。
「思ったんだけど、どうせチヒロが倒さないとレベル上がらないんだし雑魚は全員スルーしても良いんじゃないの?」
「確かにそうだ」
地図あるんだし、雑魚は放っておいても良いとは思う。
「ダメです!素材だって売れるんですよ!!チリも積もれば山となります。全部倒して進みましょう!!!」
腕をぶんぶん振ってリリカに詰め寄る。
「うーん、まあシーニャの言うことも一理ある。私達には資産が無い」
リリカが何故か死ぬほど持ってるけどな。ちなみに俺もこっち派。ダンジョンは端から端まで回って雑魚であろうが全員倒す。
「わ、わかったわよ……」
その気迫に押されてリリカが引く。なんかそれもメイドとお嬢様に見える。節約思考のメイドと金銭感覚狂ってるお嬢様。
「じゃあ近接の俺とシーニャが前、遠距離のステラとリリカが後ろを進むっていうことで良いか?」
「それで良い。あ、罠も全部チヒロ君が受け止めてくれ」
「え、罠?」
「言っただろ。罠も全部書いてあるって。君なら修復出来るし、何があっても大丈夫だ」
親指を立ててにっこりと笑う。
「また痛い目あうの俺……」
レベルの為には俺がメインで戦わないといけないし、メイン盾にもならないといけない。なんか俺前世でも今世でもめっちゃブラックな環境にいません?
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