第2章 ダンジョン行ってパワーアップだ
ダンジョンに行こうとします
「おはよう」
「おはようございます!」
シーニャ加入から少し経った今日。ある日のモーニングルーティンの一部を紹介します。
まず朝起きるとメイド服姿のシーニャがお出迎え。朝の陽ざしが差し込む中、朝食の準備をしてくれる。もう隠す必要も無いので、家の中では帽子を外しているシーニャはのびのびしている気がする。
「今ご用意いたしますね」
「いつもありがとう」
そんな様子を見ながら、ダイニングテーブルにつきのんびりと待っている。あくまでも平常心でふへへへへ。
失礼しました。雑念が出てしまいました。
「お待たせいたしました。金貨5枚になります」
冗談と共に置かれる朝食プレート。もう流すことを覚えた。弁明の為に言うと、一応食費はクエストの山分けとは別に渡すことにはしている。
……まあ正直サービス料払った方が良いと思うけど。
ファイヤサラマンダーのソーセージとブルーバードのオムレツ、ギルドの畑で採れたサラダ。今日も絶品です。
最初はなんだそのゲテモノメニューと思ったけれど、慣れたら前世と変わらない。名前が違うだけ。
「おはよう2人共」
3番目に起きてくるのは大体ステラだ。
「……どうしたのその髪の毛」
虹色に光っている髪に目が行く。
「寝癖を直す魔法道具を作ったんだが、使ったら虹色に光ってしまった。なあにすぐに戻るだろう」
どういう失敗でゲーミングヘアーになるんだよ。俺の横ではシーニャが笑っている。まあ笑うわこんなん。俺も釣られて笑みが零れる。リリカはまだ起きていないけど、大体朝はこんな感じ。
***
「今日はダンジョンに行こう」
シーニャによる優雅な朝食後、まったりしている時間。ゲーミングヘアーから戻ったステラが提案を出す。リリカはまだ眠りから覚めてはいない。
「いいですね!それ!」
キッチンで後片付けをしていたシーニャが振り返り、手を合わせる。
「ダンジョン?」
ダンジョンっていうと魔物が出てきて、宝箱が置いてあるような迷宮を思い浮かぶ。これも異世界には付き物っていう感じ。飯を食べるやつとかそんなんも出てきた。ここまでお約束な異世界なんだからあってもおかしくはないか。
「ああ、そうか。チヒロ君にはまずダンジョンの説明からか?」
「んー、まあそうだな。お願い」
異世界によってもどういうダンジョンかは違うはずだ。聞いておいて損はない。
「この世界にはぽつぽつとダンジョンというものが存在している。場所は様々で、例えば地下に潜る迷宮だ。珍しいものだと、大木の中なんていう個所もあるんだ」
シーニャが持ってきてくれたコーヒーを飲み、説明を進める。
「中には魔物が数多く生息している。レベルは場所によってまちまち。基本的には奥に進むほどレベルが上がる。何階層かごとに階層主なんていう強い魔物がいる場合もあるな。それと、宝箱が設置されている」
「でも魔物なんて倒されているだろうし、宝箱なんて中身ももう無いんじゃないのか?」
俺もコーヒーを一口飲む。異世界の不思議世界とはいえ、現実的な疑問点も生まれる。宝箱の中身が再度配置とか、そこまで都合の良い話はあるか?
「いや、しばらくすると倒された魔物も宝箱も同じ内容、個所に再度現れる」
都合の良い話だったわ。そりゃそうでした。
「それで、今回行こうとしているのはここら辺で一番近いダンジョンになるんだが、名前はハジメノ迷宮だ」
またそのまんまですねおい。
「この町の近くにある初心者向けのダンジョンとあってレベルは低い。ただ、下の階層に行くに従ってそれ相応にレベルは上がっていく」
「一番下はどれ程深いんだ?」
「わからない。今まで最下層まで行った冒険者はいないんだ」
「それって下の方はめちゃくちゃレベルが高いって事か?」
「いや、旨みが無いんだ」
旨みが?
疑問符が浮かべた俺に、椅子に座ったシーニャが身を乗り出して真剣な表情で答える。
「ステラが言った通り、初心者向けのダンジョンなのでどこにでもいるような魔物が多いんです。だから素材も珍しいものは無いし、下層に行けるレベルの方達は別のダンジョンに行った方が良いですよ。高く売れる物も少ないし、お金は大事ですからね!」
さすがお金の話は詳しい、というか元受付嬢。目がGマークになっていますよ。GOLDのG。
それにしても……なるほどな。確かに理にかなっている。レベルの高いスライムを倒してもロクな素材が手に入らないなら旨みは少ない。上位素材が無い世界観ならそれもそうだ。
コホッと咳払いをした姿を見て、シーニャはすみません……と大人しく椅子に座りなおす。説明の主導権を返してもらったステラは、コーヒーをまた飲み説明を続ける。
「それに、下の方に行くと食料や時間もかかる。それにこの迷宮には10階層毎に階層主が存在している。それと戦って魔力が尽きることもあり得る。そんなリスクを冒してまで行く理由も無い」
「でもそれって俺達も同じじゃないか?慣れていないのに行って迷ったりしたら……」
「安心してくれ。上層部分は地図が販売されている」
……は?地図?
「宝箱も補充されている、魔物もまた湧く。そりゃあ地図も作られるだろ?」
「いやまあそうなんだけど!ドキドキしないじゃん!」
「うっ……」
確かに、入るごとにマップが変わるって種類のダンジョンでも無いなら地図くらい売られるのが通りか。
「それに確か鉄も手に入るぞ」
「なんだって!?」
強化イベント来た!体の素材を鉄に出来るチャンス!
「行きます行きます!行かせてください!」
思った通りという顔に全力で行きたい気持ちを表明する。その様子を見て、ステラは笑いながらコーヒーを飲む。
「よし、ならばダンジョンへ行くぞ。まずは地図を買うところからだ」
「まあそれもそうなんだけど、まずリリカを起こすところからだろ」
立ち上がろうとしたステラを制す。忘れられてただろこの流れ。結構大きな声で話してる気がするけど一向に起きてこない。寝つき良すぎだろ。
私起こしてきます!とシーニャが部屋に向かう。
「ちなみに地図はいくらなんだ?」
「銀貨1枚だ」
約1000円かー……旅行のガイドブックくらいじゃん。るるぶとか。浅草とかにでも行こうとするくらいじゃん。
「今のところ発売されているのは70階までだ。推奨は60だったような」
「じゃあ俺らじゃ厳しそうだな。大体30階までなら行けるか」
加入したてでシーニャはレベルがまだ低い。レベリングギリギリのところまでが限界だろう。
「連れてきましたー」
シーニャに手を繋がれ、目を擦りながらリリカがてくてくとやってくる。
そういやパジャマでいつものブローチを付けているな。余程お気に入りなのか?
「あんた達早起きね……あたしまだ眠いわよ……」
大きなあくびをしながらトスっと椅子に座る。顔は付き添われて洗ってきたようだけど、髪が少し跳ねている。その様子を見たシーニャは、何も言われずとも髪をとかしている。その姿はまるでメイドとお嬢様。
「出来ましたよリリカ」
「ありがとうシーニャ。朝食もよろしくね」
わかりました!とキッチンへ向かう。
「仲間を使いすぎじゃない?」
「良いじゃないやってくれているんだし。チヒロ達だってやってもらっているでしょ?あたしもう前の生活には戻れないわ」
ため息交じりにそう言われるとぐうの音も出ない。うん、確かにシーニャいない時は食事なんてみずぼらしかったです。助かっています。
「私は別に好きでやっているから全然構いませんよ」
朝食を持ってきて、みんなに微笑みかける。
マジで天使じゃねえか……?日差しの差し込んでいる感じといい、ほんとに天使に見えるぜ……
あんたのその顔の方が失礼に見えるわよ……と小声で呟かれる。
「はい、リリカ。金貨30枚になります」
そんな俺をスルーしてシーニャからいつもの。八百屋のおっさんの100万円ねーと変わらねえじゃねえか。
それを聞いたリリカは、ポケットをがさごそと探る。
「また言われると思って用意しておいたわ。はい、金貨30枚」
……マジかよこいつ。ほんとに30枚渡しやがった。どこに持ってたんだ。
「ふおぉぉぉぉぉぉ!!??」
掌の金色に光る大量の硬貨を見て聞いたことのないリアクションをする。
「じゃっ、じゃあこれはありがたく……」
「仲間からぼったくるなって」
そのままポケットに入れようとするシーニャ。猫耳を避け、出力最低で軽く叩く。
「だっ!酷いじゃないですかチヒロさん!本当に貰うわけないですよ!」
「いーや、リアクション的にあのまま本気で受け取ると見た」
うー、と頭を擦りながらリリカに金貨を返す。何か最初からイメージ崩れまくりなんですけど。なんか扱い方が分かってきたな……
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