第6話「裏切り」
Side 輝木 ミライ
一瞬ワケが分からなかった。
何者かの攻撃で地面に倒れ伏すミライ。
現れたのは黒いパワードスーツ軍団だった。
『やはりこうなったか・・・・・・熊谷、君は優しすぎる』
『アンタは――アンタは何をしたのか分かっているのか!?』
目の前で離していたパワードスーツの人物――熊谷さんは怒気を含んだ大声を挙げる。
『我々の目的はリベリアス帝国の殲滅でも、この正体不明の存在をサポートする事でもない。捕獲し、そしてリベリアス帝国と平和的に解決することだ』
と、まるで事務的に黒いパワードスーツの人物が言う。
正直言いたいことは沢山あるのだが――
『ふざけるな!?』
と、熊谷さんが言った。
『俺は正直言って馬鹿だから、オタクらが何を考えているか分かりはしねえ!! 世界の恩人相手を後ろから撃つような真似なんてどうかしてるよ!?』
『それを考えるのは君の仕事ではない。上の方々に任せればいい』
『上の方々に任せた結果がこれか!?』
『キサマこそ、自衛隊で何を学んだ?』
『うるせえ!! 少なくとも自衛隊では国の恩人を後ろから撃ってもよいとは学ばなかったわ!!』
『もういい、そいつもやれ』
そして熊谷さんに攻撃を開始しようとした。
慌てて間に入って庇い、銃弾の雨を全身で受け止める。
『だ、大丈夫ですか?』
一旦攻撃が途切れたところで呼びかけるが熊谷さんは動揺しているのか『お、お前――』と尋ね返すので精一杯の様子だった。
『このぐらいならなんとか――』
『こんな事になってすまん・・・・・・』
『いえ・・・・・・それよりもあいつらが・・・・・・』
『ああ。捕獲しようとしているしている連中だ――あの様子だと戦闘中、ずっとタイミングを見計らっていたんだろう・・・・・・市民を助けもせず、ただお前だけを捕らえるためだけに』
『そんな・・・・・・』
リベリアス帝国も悪だがこいつらも十分悪だ。
純粋に許せないと思うよりも(どうしてこんな事に?)と言う動揺の気持ちが強かった。
『今だ!! 捕らえろ!!』
『!!』
自分達の真上に何かが射出される。
嫌な予感がした。
『ネット!?』
『まずい!?』
ネットが広がると同時に熊谷さんに突き飛ばされる。
そしてネットに熊谷さんが捕らわれた。
『俺の事はいい!! とにかく逃げろ!!』
『此方の言う事を聞け。でないとこの男を殺すぞ』
『テメェらどんだけ性根が腐ってやがるんだ!?』
ネットに捕らわれた熊谷さんを見て――自分を手に入れるためだけに殺そうとしているのを見て、何かがキレた。
『うわあああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!』
キングブラスターを出力を抑えて放つ。
『キサマ!? だが好都合だ!! こいつらを捕らえろ!!』
次々と黒いパワードスーツが襲ってくるが今のミライは止められない。
リベリアス帝国との戦闘中とはまるで別人のような強さで次々と撃ち倒し、接近戦に持ち込んで斬り倒していく。
『つ、つえぇ・・・・・・』
熊谷がそう呟くのも無理もない程の強さだった。
瞬間移動を繰り返し、離れた敵はキングブラスターで撃ち倒し、近くのは敵は次々と斬り捨てていく。
生体反応はあるから殺してはいないのだろうがそれでも今のキングスセイバーは鬼気迫るものがあった。
『ひぃ!?』
『た、助けてくれ!? お、俺達は――』
『ダメだ!? この人数相手でも勝てない!!』
『殺される!! 逃げろ!!』
やがて黒いパワードスーツ部隊は逃げ出していく。
そしてキングスセイバーは一体の黒いパワードスーツに馬乗りになって――止まっていた。
ヘルメットが破損していた。
中にいたのは大人だ。
まるで子供のように泣いている。
それを見てキングスセイバーはまるで正気に戻ったかのように
『うわああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!?』
と、叫び声を挙げて空間に穴を空けて逃げるように去って行った。
☆
Side 熊谷 トシゾウ
熊谷 トシゾウ達は――暗澹たる気持ちになる。
世界を救った救世主に対してなにもできなかった。
だがそれよりもショックだったのは声からしてまだ子供だ。
どうして子供がキングスセイバーなのか分からない。
だが馬鹿な大人達のせいで世界を救ったヒーローを傷つけてしまった。
目の前にいて何も出来なかった。
その事が何よりも辛かった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます