第3話「ヒーローの姿」
Side 輝木 ミライ
ミライは昨日の戦いの中でアイドルを救っていたらしい。
あまりテレビを見ないのでどんなに凄いアイドルかは知らないが。
それに学校での苦労人染みた生活は変わらない。
「おい、ミライ。ちょっと面貸せや」
と、朝からさっそく学校の校門前でミライは剛田に絡まれた。
キングスセイバーに変身できるようになったせいか、身体能力でねじ伏せれるようになったが本当は目立ちたくないしあまり傷つけたくない。
心の中のヒーロー達が訴えかけてくるのだ。
なんでもかんでも暴力に訴えるような真似はしない方がいいと。
「用があるならここで言ってよ」
「――ミライの癖に生意気だぞ」
「今度は何て言うの? 腰抜け? 腑抜け? 剛田君の言う男らしさってなんなの? 言っちゃ悪いけど一生そんな風に生きていけると本気で思ってるの?」
「偉そうに説教垂れるんじゃねえ!!」
カッとなって殴りかかってくるがそれを受け止める。
相手は痛そうに拳を抑えて跪く。
ミライの強化された体を殴るというのは鉄を殴るのと一緒だ。
この程度で済んで剛田は運が良かった。
「これで気が済んだ? もう高校生なんだよ? あっと言う間に社会人なんだよ? そんな風に生きてたら取り返しのつかないことに――」
「う、うるせえ、最近いつも説教ばかりしやがって!!」
(なんで言葉が通じないんだ・・・・・・)
その事がとても悲しかった。
結局教師が駆けつけて来て剛田は舌打ちし、「覚えてろよ」と捨て台詞を吐いた。
☆
「テメェ俺の反省文書かずに帰っただろ?」
「一言も書くとは言ってないよ」
クラスの教室では今度は上原 アユムと取り巻き達だ。
近くには昨日嘘告白してきた朝比奈 リサまでいた。
何故かスマホを向けている。
一体何を撮影するつもりなのだろうか。
「恥掻かせやがって。どう責任取るんだ?」
「なんで君の責任取らなきゃいけないの? 自分の責任は自分でとらなきゃ」
そう取り巻き達に言われて笑われる。
「おい、アユム。ミライに言われてるぞ」
「ミライに馬鹿にされて黙ってるのか?」
と言う感じだ。
上原も上原だが取り巻き達の性格も中々に問題だ。
上原は怒気を含みながら「うるせえ!!」と叫ぶ。
「いいか、この教室では俺がルールだ? あんまり調子に乗るな?」
「そんなルール知らないよ。 調子に乗ってると言われてもどうしてそんな事しなきゃいけないの?」
「ッ!!」
またしてもぶん殴られた。
今日で二回目だ。
怯まずにミライは言い返す。
「殴って満足した?」
何度も語るがキングスセイバーに変身できるようになったせいでミライは体を強化されている。
それは頑丈さの部分にも及んでいる。
力任せに何度も殴ったせいで上原の拳は辺に曲がっていた。
どう見ても病院送りのレベルだ。
☆
軽く事情を説明した。
担任の先生に何故か自分が上原を挑発して悪いみたいな感じになっているのは何故だろうかと思った。
担任の先生は正直評価は今一。
教師と言うよりうだつの上がらないサラリーマンと言った様子だ。
教師には向いてないと言われている。
(改めて考えると本当に酷い学校だねここ・・・・・・)
などとミライは思った。
近いうちにイジメか何かで死人が出そうだ。
本来なら自分がそうだったかもしれない。
なんとも酷い話だと思った。
そんな時だった。
(この邪悪な気配――リベリアス帝国!? まさかこの近くに直接!?)
などと思っていたその時だった。
空中にワープゲートが開き、円盤から敵が現れる。
そして学校目掛けて直進し、次々と学校の運動場に兵士を降下させていく。
人目を忍んでミライはキングスセイバーに変身し、運動場へと駆け出す。
☆
『ギィ!?』
『ギィー!!』
次々と降下してくる敵戦闘員、リベルトルパーをキングブレードで斬り飛ばし、キングブラスターで敵を撃つ。
どうしてここにリベリアス帝国が現れたかは分からないが、こいつらを放置するワケにはいかない。
空中の円盤は後回しだ。
ヘタに破壊すると学校に避難した生徒に被害が出る。
「やはり雑魚では相手にはならんか」
『お前は!?』
現れたのは敵の指揮官だろう。
言うなれば今週の怪人のポジション。
カニを二足歩行にした不気味な怪人だった。
胴体の一つ目が異形さを際立たせている。
「俺はリベルクラブ!! お前を殺すのはキサマだ!!」
そう言って襲い掛かってくる。
攻撃を加えるがダメージが通ってる気配はなく、体当たりで吹き飛ばされる。
続いて目が怪しく発光し――
『うわあああああ!?』
光弾が発射。
そのまま爆風で吹き飛ばされた。
吹き飛ばされた先には驚いたようにスマホで撮影していた生徒達がいた。
『何をやってるんだ君達は!?』
思わず怒気を含んで叫んだ。
これはテレビの撮影なんかではない。
命懸けの殺し合いなのだ。
それを呑気にスマホで撮影してましたなんてたまったもんじゃない。
「スマホ撮影とやらか。地球人の思考はよく分からんな――」
などと怪人に冷静に突っ込まれて――何故だか説教されてる気分になったが続けざまに目から光弾を連射。
避けるわけにも行かず、スマホ撮影していた生徒達を庇うようにしてミライはその場に踏みとどまる。
(今だ!)
煙で見えなくなった。
その隙に白い馬を模した専用バイク、キングライダーを呼び出す。
傍からゲートが開き、そこからキングライダーが疾走。
リベルクラブに体当たりをかます。
『ぐわ!?』
「続いて!!」
戦いに決着をつけるためにバックルベルトにカードを装填。
『ティラノパワー!!』
今回はティラノパワー。
胴体に赤いティラノサウルスの頭部、大きな三本爪の手甲、厳ついブーツ、尻尾。
相手の光弾を三本の爪で弾きながら体当たりをぶちかまして今度はリベルクラブを吹き飛ばす。
『どりゃあああああ!!』
続け様に次々とリベルクラブに三本爪による攻撃。
尻尾による打撃。
最後にティラノサウルスの頭部の胴体が相手に頭突きする。
『バニシングクロ―!!』
そしてトドメに三本爪の手甲を真っ赤に燃やし、相手を切り裂いた。
続いて円盤内部に飛び込む。
幾多のリベルトルパーやコマンダーを撃破し、運動場に不時着。
無力化に成功させた。
難しい事はキングスセイバーの力でどうにかなった。
(それにしても・・・・・・)
どうしてこの町に奴達は現れたのだろうか?
疑問に思うミライであった。
☆
当然学校は休校になった。
警察やら自衛隊やらが学校に入り込む。
怪我人はいるが死傷者はゼロ。
状況を考えれば奇跡すぎる数字だ。
だがそれよりも――
「馬鹿野郎!! なに考えてんだお前ら!? 危うく死ぬところだったんだぞ!?」
「あの、その辺で・・・・・・」
「やかましい!! 教師や親もどう言う教育してるんだ!? たく、SNSだか何だか知らんがこれじゃ命幾つあってもたりないぜ」
教師の制止を突き飛ばして見慣れぬ制服を着たオジさんが、ミライが庇ったスマホ撮影していた生徒相手に怒鳴り散らしていた。
まるで借りて来た猫のように黙っていて、泣き出す奴もいる始末だ。
それだけに留まらず親にも厳重に注意するつもりだそうだ。
あの生徒達は当分スマホ禁止になるんだろうなミライは苦笑した。
こればっかりはどうにも出来ない。
ヒーローだって全能ではない。
それよりも自衛隊か何かのおじさん? がヒーローらしく見えた。
ある意味自分よりもヒーローなのかもしれない。
ちょっと憧れのような感情を抱いた。
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