第二話

 二人で洞窟内の探索を開始。

 洞窟内にある全ての部屋を回り、邪視の盗賊団の全滅を確認した。


「いや〜。八雲さんのお陰で、クエストを終わらす事が出来ました!有難うです!」

 クエストとは、邪視の盗賊団の討伐の事であり、盗賊団の全滅を確認した今、達成感と怪我も無く終わった事で、八雲にお礼を言った。


「しかしな、クエストのお誘いは嬉しいが、盗賊団の討伐を持ってきた時にはビックリしたぞ。まあ何にせよ、怪我もなく討伐できて良かったけどな。」

 八雲の言葉にミコも頷くと「私達って、さっすがよね〜。」って、洞窟内を、ぶらぶらと歩き始めた。


 む・・・。

 クエストを達成出来たからって、気持ちがふわふわしてきたな。

 ミコの緊張感が、目に見えて薄れてきたのが分かるし、少し釘を刺しておくか・・・。


「ミコ・・・。クエスト終了時が、一番ミスしやすいからな、周囲の警戒を怠るなよ。」


 ミコは、食糧庫と書かれた扉の前で振り返ると、にこやかに答えた。

「全滅を確認したし、もう大丈夫でしょ。誰にも狙われないって。」と、無警戒に扉を開けると、そのまま食糧庫に入ってしまった。


 なっ!無防備にも程があるだろう。

 余りにも、無警戒に行動するミコを危ないと感じ、直ぐに追いかけ注意した。

「全滅を確認したからって、ここはまだ敵地だぞ!」

 食糧庫の入り口から部屋の中へ叫ぶが、ミコからの返答は「何かあっても、僕と八雲なら大丈夫だって!」と、謎の自信を残して部屋の奥へと向かった。


 八雲は、呆れたように肩をすくめると、ミコの後を追いかけた。しかし、食糧庫に入るとすぐに、異変を感じ足を止めた。

「むっ!?何だこの匂いは・・・。」

 果実の熟成された甘い香りと、アルコールの強烈な匂いが鼻につき、思わず顔をしかめた。


「しかし、これは強烈だな・・・。」

 八雲は、口元を覆い食糧庫の奥へと視線を送ると、部屋の半分を酒樽が占めているのに気が付いた。


 酒樽は、全て4斗樽(72リットル)サイズで、それが部屋のあちこちに、無造作に置かれている。


 八雲は、部屋の中を見渡し、部屋の中央に立つミコを見つけ近付くと、呆れたように呟く声が聞こえてきた。

「食糧庫じゃなくて、お酒の貯蔵庫でしょ・・・これ。」


 八雲も顔をしかめながら「まったくその通りだな。」と、同意すると更に口を開いた。

「それにしても、匂いだけで酔いそうだが、ミコは大丈夫か?」


 ミコを気遣いながら顔を見ると、特に変わった様子もないミコの姿がそこにあった。

「僕は、これくらいじゃ酔わないから大丈夫だよ。」

 平然と酒樽の方を見ながら答える。


「酒樽が縦になって置いてあるのは、まだ中身が入ってるみたいだけど、横になって転がってる樽は、全部蓋が開いて中身も空っぽみたいだね。しかも、床がビショビショに濡れてる所もあるから、ついさっきまで酒盛りでもやってたんじゃないかな?」


「成程なぁ・・・。」

 八雲は、ミコの話を聞きながら、奥の方まで目を凝らして見ると、突然、部屋の奥から酒樽が飛んできた。


「あぶなっ!!」

 突然の事態に、焦りながら二人同時に叫ぶと、酒樽は後方の壁にぶち当たり壊れた。しかも、酒樽の中身がかなり入っており、そこら中に強烈なアルコールの匂いを振りまいた。


 それにしても、この酒は強烈だな。

 ミコは大丈夫みたいだが、こっちは気を抜くと酔いが回りそうだし、早々に決着をつけないとヤバイかもな・・・。


 八雲は、壊れた酒樽を見ると、ミコに話しかけた。

「ミコ、大丈夫か?」

「僕は大丈夫だけど、それにしても舐められたものだね。」

 二人は、瞬時に戦闘態勢に入り、酒樽が飛んできた方向へと注視する。

「ミコ・・・相手が何者か分かるか?」

 ミコは、首を横に振ると小さく呟く。


「気配は魔獣・・・奥に2つ・・・3つ居るね。僕の能力じゃ、悔しいけど3体の魔獣としか分からないや。」

 悔しそうに唇を噛むと、他にも何か感じ取れないか、全集中で前方を見る。

「さすが武道家だな。そこまで分かれば及第点だ。」

 八雲がミコの頭に手を置くと、ぽんぽんと優しく叩くと、ミコの顔が赤く染まった。

「む〜〜〜。八雲さんは、分かったんですか?」

 頭を、ぽんぽんされた気恥ずかしさから、ぶっきら棒に聞き返した。


「魔獣の正体は、猩猩しょうじょうだ、猿の様な体躯をし、朱紅色の長毛におおわれた魔獣で、人の顔をした猿だ!注意点は、共通語を理解する知能と・・・む!来るぞ!!」

 八雲が、話の途中でいち早く危険を察知するとミコに叫んだ。すると、酒樽が3つ飛んできて、床や壁に叩きつけられた。

「4斗樽って、空でも結構な重さがあるんだけどな。」

 ミコが、壊れた酒樽を見ながら言うと、八雲が話の続きをした。

「最後に、一番厄介な習性がある!酒豪で酔えば酔うほど酒乱になり、凶暴で好戦的になる厄介な魔獣だ!」


「酔うと強くなるの?」

「そうだな、酔うと俊敏さと腕力が強力になり手強くなる!」

 八雲がそう言うと、狙いすましたかの様に、猩猩しょうじょうが襲いかかってきた。





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