納得
壁にかけられたカレンダーを見る。
12月24日。
誠君からの連絡はなかった。
_____どうして?何があったの?
誰に確かめればいいかもわからなかった。
描きかけのイラストも、少しも進まない。
どうにもできないもどかしさに、ベッドに潜り込んで目を閉じる。
誠君のことを知りたい、何があったか確認したい…。
_____どうすればわかる?誰に聞けばいい?
「あ、そうだ!」
卒業の時に書いてもらったサイン帳に、連絡先が書いてあったはず。
誠君の家は、高校からはだいぶ遠いと聞いていた。
お母さんが再婚したから、お父さんの連れ子の妹がいると言ってた気がする。
でも、あまりいい家庭環境じゃないと聞いていた。
だから誠君は、家に私を呼んでくれたことはなかったけど。
_____でも、もしかしたら何か知ってるかも?家族なら何か…
「あった!」
電話をかけたけど、繋がらなかった。
今は使われていない番号…。
嫌な予感がする。
コンコンコン!
「浩美、晩ご飯できたよ、ケーキはブッシュドノエルよ。降りてらっしゃい」
「あ、うん、いまいく」
クリスマスが近づいても、誠君のことを話さない私に、お父さんもお母さんも何も言わない。
それが、本当はとてもツライ。
けれど、私も誠君も大人なんだから、私たちが決めたことを見守ってくれてるんだと思う。
スリッパを履いて、下へ降りた。
「遅いよ、姉ちゃん、シャンパン開けるよ」
成人したばかりの弟が、冷えたシャンパンを開けた。
コプコプコプといい音がして、シャンパンが注がれていく。
「さぁ、いつもは特に信じてもいないが、今日はキリスト教のお祝いだ。メリークリスマス!」
「「メリークリスマス!」」
カツン!とグラスを傾けて、コクリと飲む。
部屋の隅に飾られた天井まで届きそうなツリーは、お母さんが綺麗に飾り付けていた。
その根本には、少し早いクリスマスプレゼントが置いてある。
今年は私も3人に買って置いておいた。
本当ならば、あと一つ、ここにあるはずだったのに。
ツリーに光る電飾を見ていたら、涙が流れていた。
横に座ったお父さんが、私の背中をトントンと優しく叩く。
「浩美…これからどうする?」
「あ…ん、」
「いや、今すぐ答えなくてもいいから、ね」
「……」
「浩美の人生はこれから長いよ。まだまだ寄り道したって大丈夫。ゆっくりでいいから、自分の思う通りに生きなさい。お父さんもお母さんも、浩美が納得がいくまで見届けるから」
「…うん」
私が納得いくまで…。
できることをやってみることに決めた。
誠君のことを、探してみる。
日本で見つからなかったら、ブラジルに行く!
そう決めた。
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