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side.Akihito




「は、ぁ…保ッ…保…!」


「ァッ…あンッ……いッ、ああ…!!」


切なげに喘ぐ保には、奇跡的にも苦痛の色は無く。

むしろ快感なのか…その声音は女のソレのように、


甘く淫らで悩ましい。



それを裏付けるかのように。

保は俺の挿入に合わせ、無意識に腰を揺らし始めていた。







「上…あっ、あきひ…とくっ…」


「はッ…!!マジかよ────…」



コイツ解ってやってんのか?

こんな時に反則だろ、ソレ…






「あきひっ、とクンっ…ね…?あきッ…」


止められそうにないピストンに鳴きながら、

今まで口にしてこなかった、俺の下の名を呼び続ける保。






「なんッ…だよ……」


息も絶え絶え、

腰を打ちつけながら唸るように返事をすると───…







「あの、ねっ…す、きだよッ…すき、だいすきっ…!」


「………!!」



これでもかってくらいに昂る自身の熱を、

保の中に繋ぎ留める。


モヤモヤとする、言葉では言い表せられないこの想いが、そのまま流れ込めばいいのにと…



一心不乱に猛るソレを、中へと突き立てた。








「ひ、あァッ…も、ダ…メッ……」


「保ッ…保ッ…たも、つ……!!」


「あ、きひとクンっ…あき…と、あきひと…!!」



今、俺が組み敷く者の名を

今、保を抱いている者の名を



お互いへと知らしめる。



それはまるで縋り付くように。

何度も何度も、声に紡いで吐き出せば。






「あきひとくっ…だいすき…ッ…ああァ…───!!」


「はッ……保…!!」



ギリギリまで溜め込んだ雄を、

最後に思い切り奥深くに突き刺して。



合わせて中が一層引き締まり、揺さぶられた保の性器からビュルリと精液がほとばしった後すぐ…



限界を超えた俺の猛りも役目を終え。



弾けた瞬間、ありったけの欲望を、

であるハズの保の体内へと…解き放った。







「あ、き……」


絶頂を来し、薄れゆく意識を振り絞って、



保が口にした言葉。







「ありがと…もう、充分、だから…」



その言葉が、

更に罪を重ねてしまった俺の胸に、



容赦なく、突き刺さった。

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